故郷は・・・・・・
『ただいま・・・・・・』
あれから何も変わっていない自宅内に入る。人がいなくなれば一瞬で荒廃が進むというのは本当のようで、至る所に傷みが見られた。
俺はため息を吐き、まずは掃除に取り掛かる。衣服などの軽いものしか纏めることが出来なかった分そういう道具はそのまま放置されていた。
夜逃げに近いものだったため水道やガスは止められていたため、近くの公園から水を拝借して行なった。
『毎日やるからそこまでキツくはないだけで、時間が経ってからの掃除ってこんなにキツイものだったんだな・・・・・・』
その上俺ひとりでは行わず、シラヌイやイサリビたちもいたのだから余計か。
到着したのは早朝頃だった筈だが、最低限暮らせる部分の掃除だけで太陽は沈みかけていた。
一度休憩と環境状況の把握を兼ねて地区外に買い物に行くか。
同じように放置されていたバイクに跨り街をひとり走り出す。
地区内を走るがやはり時間が止まったかのように人はいない———筈だった。
『んなっ!?』
あり得なかった。セイエイでさえ消えるのに普通の人が楽しく話しながら歩いていたのだ。
そうであって欲しいという希望が見せたのだろうか?にしては実体があり過ぎる。
妄想が極端に強くなればそう見えてしまうというのは聞いたことがある。だとするなら何故今までその妄想が機能しなかった?都合がいいで判断がつかない。
「キュウじゃんどしたの?」
『イ、インなのか・・・・・・?』
巨大人工浮島にいるのは未だに温和なのか?何のために?理解出来ない・・・・・・。
「どしたの?最近見てなかったけど、誰ともあってなかったせいで喋れなくなった?」
『ど、どうしてまだここにいるんだよ?いる理由が・・・・・・』
「それは学校がここにあるんだから、ここに行くのは当たり前でしょ?」
学校が機能している・・・・・・?そんなバカな。
『そ、そうか・・・・・・すまない。俺は学校辞めてるから忘れてたよ。最近いなかった理由は泊まり込みのバイトが忙しくてな』
「なるほどね。それじゃあボクは修也くんたちとの勉強会があるから」
『じゃあな』
俺はインと話を終えるとすぐにバイクを走らせる。修也という少年もいたにはいたが、地区外だったから生きている事には違和感はない。なら、インも運良くこの地区から離れていたのか?だとするなら何故今の状況に違和感を感じない。
・・・・・・とりあえず頭を休めよう。細かいことは晩飯を食べてからだ。
————————————————————————————
————————————————————————————
再び家に帰るとガスなどは使えないので家の庭にある荷物置き場にあるガスボンベを使って料理を温めて今日初めての食事を摂る。
夜に掃除はしたくないので今日はイン以外の人間がいるかの調査を行う。
バイクを走らせて学校に向かうと、あの日からなにも変わらず学校は存在していた。
『インだけいるのにな・・・・・・』
校舎内に入り全ての教室を覗いていくが当然誰もいない。
場所によっては無事だったように地下の方に行けば人が意外にいたりするかもしれない。まあそれは人かどうか怪しいが。
地下への階段を蹴り開けてずんずんと進むが、人はおろかBOWでさえ見当たらない。もう完全に放棄されてしまったんだろうか?
灯りを付けることが出来ればもう少し探索も行いやすくなるとは思うが、機能していた場合のリスクは拭えないし、それ以前にどこで付けるかも分からない。
一定の距離を進んだところで隙間から灯りの漏れている部屋を見つけた。放棄はされたが今の今まで電気を付けっ放しだったのか、それとも・・・・・・。
拳銃を片手に扉に近づいていき聞き耳を立てられる距離まで近づくと、扉に耳を当てて中を確認する。
・・・・・・目立った機械音声はない。どちらかと言うと液体音が主のようだ。
ゆっくりと扉を開けると、中にあったのは液体に満ちていたカプセル容器だった。