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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
巨大人工浮島《ギガフロート》編
161/202

最悪な再会

 赤いランプが点灯した廊下を走りながら扉を開けていくと、誰かが銃を構えていた。


 自然と俺は引き金を引いてしまい、その後吐きそうになるほどの後悔に包まれた。


『・・・・・・やっちまった』


 俺が子供を誤発砲してしまい扉に寄りかかっているところに、ウェイバーは肩を叩く。


「どうした?・・・・・・ああ、気にすんなって。向こうだって構えてたんだ。救助は自分の命最優先。隊長に教わっただろ?」


 それはそうだが、やはりムカムカした感覚は拭えない。


 それを我慢しながら進み最後の扉を開けると、なんと非常に懐かしい人間が子供たちの壁になるように立っていた。


『・・・・・・?JPP・・・・・・ですか?』


「その呼び方はまさカ、キュウさんではないですカ?」


『ここに来ていたのか。ここではないと思ってたんですけど』


「シラギン。この人は?」


『ああ、昔の知り合いで名前が長いからJPPって呼んでる』


「後ろの子の訛りからして巨大人工浮島(ギガフロート)の側に付いたんですネ?」


『間違いじゃないな。けど俺は頭の先から爪先まで全てヒナのために使うつもりだ。インやカイナガのためにこの手を振るうつもりはない』


 詳しくいえばあのふたりに忠誠心を持っているわけではないし、イアを使うつもりもない。弓田屋さんから託されたものも。


 今の回答で方針が変わっていないことを確認出来たのか、そうですカ。と呟くと子供たちに危険がないことを伝えているのか子供たちの表情から恐怖心が薄れていく。


 だが亡くなっているわけではないので、この子らをJPPに任せてウェイバーを先頭にして俺は最後列で保護するように移動を開始した。


『(聞こえますカキュウさン)』


 思考内通信か・・・・・・わざわざこれを使うってことはウェイバーには聞かれたくないか、それとも他の人間にか。


 聞こえてますよ。先に質問をさせて貰いますけど、どうして巨大人工浮島(ギガフロート)に見つかるような場所にいるんです?


『(マリーメイアを守る為でス。私が別行動を取れば向こうは自然と彼女を確保する為に私の方へと向かウ。短くても彼女に普通の時間を与えられるのではあれバ、あれだけの事をしてきた償いになると思うのでス)』


 エゴですけど、俺もあんたに彼女を任せた身だ。文句を言う権利はないし資格もない。後マリーのことは相変わらず聞くつもりはないですよ。インや窓原に覗かれるリスクが怖い。


『(あの時に決めた通りですネ。困ったことが有れば連絡すル。それが決めた事ですシ)』


 とはいえ本隊を抑えている上にいた兵器はいったい何なんです?結構な機動力でしたけど。


『(巨大人工浮島(ギガフロート)で開発中のものを小型化して簡易化させたものでス。直撃でなければ問題なく稼働するものですネ)』


 巨大人工浮島(ギガフロート)があんなものを?いや正しくはあれを大きくしたものなんだけど、海国で人型兵器とはまあ何考えてんだか。


『(宇宙での作業が目的ですから自然と大きくなりますヨ。機動性を持ったパワードスーツとして地上で配置する場合いらないものを抜けますシあれだけの小型化が出来たわけでス)』


 よく分からないが凄いと言っときますね。


 口を動かさない会話をしているとリズム良く振動が背後から襲ってくる。それに合わせて天井が崩れていく。それはまるで映画で冒険家が廃墟から逃げる時の様だ。


 走る速度を上げたもののそれに意味はなく、子どもたちの上の天井が崩れ落ちてきた。


『まずいっ!!!!!』


 リミッターを外し滑り込む様に瓦礫を支える。


「うあぁぁ・・・・・・」


『早く!そう長くは持たない!!!!!』


 瓦礫だけならキツい程度で済んだだろうが、延焼しているのか瓦礫は熱を持ち服がチリチリと燃える音が鳴り始めていた。


「キュウさン、すみません!」


 子どもたちを押すように瓦礫の先へと進ませると、ウェイバーが俺をそちら側に行かせる為に瓦礫に手をかける。


『ウェイバー!熱いから触るのはやめろ!お前は脱出しろって!』


「仲間を見捨てたら俺のメンタルはボロボロになっちゃうだろがい!」


 ウェイバーの指から少しずつ赤くなっていくのが見えた。このままでは2人とも助からない。


 俺は右足でウェイバーを蹴り飛ばしたが、それのせいで右足側に瓦礫が移動した事で元いた方向に押し出されるように投げ出された。


「シラギン!馬鹿っ!なんて事するんだよ!」


『地下に基地を作ったって事はダクトとかもある筈だ。それを使えば脱出出来る筈だと信じる!』


「あんな人が入れるダクトなんてあるわけないだろ!いい加減にしろ!」


『いいから行けって!』


 瓦礫の向こう側で揉めるような声が数秒続いたのちに、ばちばちという火の音と俺の息遣いだけが、地下に残った。

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