再びこの国へ3
食品を持てるだけ持って帰宅すると、いい時間だったこともあり、シラヌイと共に夕食の準備に取り掛かった。
「鍋物ならそれほど難しくないからな。キュウはみんなに声をかけるついでに休んでこい」
『お前だって疲れてるのにすまないな』
「昨日今日腕を失ったばかりでずっと動き続けてるんだ。それもちゃんとした処置をしないままな。私もどうにかはしたいが知識も技術もない」
『心配してくれるだけでいいさ。こんな生活になってから面倒見続けてくれてありがとな』
さっさと休めと言わんばかりに手で払うので、言われた通り上に上がって適当な部屋に入るとベッドに倒れ込み、途端に意識を失う。
———ダメだ。何寝ているんだ。今頃ヒナはどうなっていると———
ガバッと身体を起こして立ち上がる。ああそうだ。ここに来たのはそれが目的だ。家に住むことなんて二の次。
身体が自然と動く。休むと言ったので階段は降りて行けない。窓から行くか。
窓から飛び降りて外に出る。向かう場所は何処だろうか?
「どこ行ってるの?休まないと」
腕のイアから忠告が来る。そんなことはどうでもいい。助ければいくらでも休めるんだから。
行動を阻害するために右腕と右目の感覚を停止させられたが、もともと右目はかなり前から使えないので無問題。それに右腕が使えなくなっても階段から落ちそうになった時ぐらいしか使わない。
ヒナがいそうな場所へ足を進めていると。宇宙へと向かうエレベーターのある場所に辿り着いた。
『上にいるのか・・・・・・ヒナ』
「どうやって認識してるの・・・・・・?」
声からしてイアは完全に引いていたが、元からなので気にすることもなく駅構内を歩いていく。
切符を購入しエレベーターに乗り込むと、すぐに宇宙へと上がった。
『こっちか・・・・・・』
ヒナの気配が流れる方向へ進んでいくと、途中の側道で腕を掴まれて奥へと引き込まれる。
「自分が狙われてることが分からないのか?」
引き込んだ人間は俺に注意をする。しかし狙われてるなら何故ここまで入れた?ガバガバ警備にも程がある。
「今すぐ帰るんだ。ここにいるってことは分かったんなら、この場所に発言出来る程の力を手に入れろ。そうすればきっと彼女を助けることに」
『なんで知ってる。俺が少女目当てだと』
「ここでお前を止めてんだからあんたのこと知ってるのは当たり前だろうが!」
壁に突き飛ばされると、接触が甘かったのか右腕の義手が宙を舞う。
『いっ。イア!』
「やばばば」
「おおうすまねえ。いいな?定期連絡はするからちゃんとした方法で会長グループの元へ来るんだぞ?いいな!」
人間は俺が頷いたのを確認すると、イアを拾い俺の肩に取り付ける。
側道から外に出ると駅構内へと押し飛ばされる。
「いいな!?」
途中で止まることが出来ないまま流れるようにエレベーターまで戻るとそのまま下に降りていった。
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「ふぅ・・・・・・」
「会長自ら行動なさる必要はなかったではありませんか」
大きく息を吐く人間を囲うようにスーツ姿の男たちが周りから現れる。
「俺が原因だからな。それにいちどどういう人間か見てみたかった。もしあいつが巨大人工浮島に協力するようなら、それなりにしてやってくれ」
「はっ!」
スーツの男たちはその場を散るように去っていった。
会長はレーンに取り付けてある持ち手を掴みながら自身の会社へと戻っていった。