再びこの国へ2
平凡がシラヌイと共に外へ出かけた後、俺はボロボロの身体を引きずりながら先程の部屋とは別のところに入り、インを連れてきた。
「どうしたの?全員優秀な子たちだけど」
「・・・・・・いい加減インの真似は辞めたらどうだ?」
「ん?ボクはインだけど?」
「平凡なら分からないのも無理はないが、俺が自分のことを理解出来ないとでも思ったか?」
「・・・・・・SP解除。そんな平凡君側に着く君のことを俺は理解出来ないけどね」
首元を押すとインの姿から身長が伸びて、身体に傷のないキュウと同じ姿を現した。
「しっかしー憤怒がそこまでやられる相手なんているんだね。戦闘力は俺たちの中でも高い部類なんだし」
「不意打ちだったのと、ヒナを人質に取られたら動ける訳がない」
「ヒナを押さえられるなんてどんな勢力なんだろ?特に見た目は平凡君と同じ君がいるからヒナも手は抜かないだろうし」
憤怒は思い出したくないのか、痛みを訴えて答えを回避する。
「けどさ。わざわざ全員で来たって事は何か理由があったんでしょ?」
「平凡はスリーナインと言っていたな。温和はこれがどう言う兵器か分かるか?」
温和の名の通り柔らかい表情をしていた彼の顔から余裕が無くなったのか厳しい表情へと変わる。
「インの真似をする為に多少勉強したんだけど、その兵器を他国で戦争状態でもない国に使用したの・・・・・・?」
「そんなにやばい兵器なのか?」
「核兵器が世界から非難されるなら、環境問題になんら影響がなくて使用及び管理が容易いな兵器というのが目的だからね。確かにそれを使用していたならあの国では住めない」
腕を組みながら窓へと近づき外を見ていると、腕に力が入っていく。
「その兵器は確かに巨大人工浮島のだけど、インは少なくとも使ってないよ。なぜなら彼らも日本に行ってたから」
「なら・・・・・・」
「もしかしたら巻き込まれたって可能性も無きにしもあらずってやつだね」
振り返り言葉を続ける。
「最悪巨大人工浮島内の戦力バランスが崩れる・・・・・・。君たちがJPPとあの人が匿ってた少女を渡していたらこんな事にはならなかったかもね」
その言葉に我慢出来なかった憤怒は痛みを堪えながら立ち上がり空いた左手で温和の胸ぐらを掴む。
「それとヒナが誘拐されたのは関係ないだろ!」
「じゃあ全部君が責任でいいのかい?化け物たちである俺たちは人間に劣る劣等種族だって言われても」
「なら俺がヒナを助けにいく。それでいいだろ」
「まずは身体を休める事だけどね。今の君じゃあの猫みたいな子にだって負けるよ」
掴んだ腕を軽々と払うと服を治して再び外に視線を向ける。
「インとの連絡を待ってその上でもう一度考えよう。もう1週間は休んだほうがいい」
温和は首元のボタンを押しインの姿に戻るとその部屋を後にした。