再びこの国へ
到着した俺たちは待ち兼ねたぞと言わんばかりにインたちと鉢合わせをした。
「やあキュウ。久しぶりだね」
『イン・・・・・・いきなりで悪いんだが、俺たち家を失ったんだ。これだけの人数が別々で暮らせる個室付きの家ってあるか?』
「本当にいきなりだね。これだけの人数をとなると選べる家は限られるなぁ」
インは端末を片手にポチポチと触れていくといい感じのものを見つけたのかこちらにその端末を見せる。
「大陸にある洋館をベースに作成したものらしいんだけど、思ったより人気がなくてね。買い手を探してるらしいんだ。これでもいいならすぐに手配できるよ」
しかし登録等があるのにそんな一瞬で準備が出来るとなると、俺が来るのを予測していたのでは?と疑ってしまう。
「ほらついてきて。十二分に満足出来るものだと思うよ」
インについて行きその洋館に辿り着くと、インに言われるがまま内部に足を踏み込む。
作りは二階に上がる階段がふたつありその間に大きな扉がある。
「まるでそういう系のホテルみたいだな」
「ホテルってこういうものなのか?キュウ。家で読んだものにはそういうのはなかったが」
「ホテルって言ったっていろんなニーズに合わせてって感じで作成されてたりするんだよ」
「んじゃまずは個室を見ていこっか」
二階に上がると道は左右に続き、結構な広さなのが理解出来た。提供とはいえ買うとなったらレッドフィールドから提示された資金が結構持っていかれそうだ。
右側の最も近い扉を開けると太陽の光が差し込む非常に良い部屋だった。この先も同じようになっているなら、今の人数なら日を浴びれる部屋は問題なく入れそうだ。
「個室自体も中々に広いんだな」
「不安なことがあってひとりじゃ眠れない夜も安心だね。キュウ」
インに茶化されたがそれをスルーして洋館内部を全て確認し終える。
「それでどうかな?もちろんもっと一般的な家もあるけど、即座に提供出来るのはここだけ」
俺は取り敢えずコハルを一刻も早く休ませたいのもあり簡単に了承する。
そこにシラヌイはこの建物の事ではなく周りの状況の確認を行う。スーパーは近いのかとか公共交通機関は近いかとか。
「んじゃなきゃ人は呼べないよ。契約書にサインする前に行ってみる?」
「そういう事だからキュウは休んでいろ。確認に行ってくる」
うーむ。あまりひとりで行かせたくはないんだが、怪我の大きい俺を置いていくわけにはいかない。となるとシラヌイはひとりになってしまうよなぁどうするべきか。
「怪我はしているとはいえお前よりは動ける。お前がしたいようにしろ」
『だからって言ってもなぁ』
俺が不安がっている間にインは連絡を入れていたようで窓から人が見えた。
ガチャリと扉が開く音が遠くから聞こえてくると、インはテケテケと走って部屋を出て行き、入り口の方の手を振る。
「増援呼んどいたからキュウはどの選択肢も取れるよー」
結構な人数だ。10人くらいか。ひとりひとりに配置しても問題ないのは安心だ。
これからの生活で俺は色々面倒を見なくちゃいけない。まずはこの付近を知るためにもシラヌイと一緒に町へと出かけることにした。