その兵器の名は
『・・・・・・んなっと』
車に乗って敵の攻撃が落ち着いた事で安心してしまったらしくいつのまにか眠りについていた。
「良いいびきだったぞ、キュウ」
『ここは・・・・・・街か?』
「ああ、だがこの時間にしては人が少なすぎる。それに事故を起こしている車も散在している」
時計を見ると針が11時を指していたが、その割にはシラヌイの言う通り人が少なすぎる。いつもなら買い物の帰りの人間が多く歩いていてもおかしくない。
『地震でもあってみんな逃げたとかか?』
「これは・・・・・・まさか?戦争でもないのに使用したの?」
『研究所で言ってたやつがここに撃ち込まれたのか?』
「そうとしか思えない。君の家に行ってたら確実に分かるからそこで判断するよ」
その言葉を最後に情報を整理する為に機能を低稼働状態へ移行する。
当然だがイアが動かしていた為右目もいちど機能を停止した。
「しかし、その義手の人工知能はすごいな。個人でそこまでのものを作れるんだからな」
『ほんとほんと。シラヌイも作ってみるか?』
「設計図があっても10年以上かかりそうだな、それは」
冗談を交えつつ家に到着すると、リビングのソファーにアオイとリオンを寝かせる。
『よしっと。シラヌイ、イアと一緒に待っておいてくれ』
「それは良いんだが、もう少し休んでからの方がいいんじゃないか?」
『この状況だ。ヒナは家にいないだろうが、あいつがいるかどうかは確認しないと』
「あいつの警護は別のお前が守ってるだろ」
『確認したら休むから・・・・・・』
「しょうがないな」
シラヌイは呆れながらため息をつくと行ってこいと合図を送る。
それを見た俺はすぐにヒナの家に入ろうとすると、出入り口の扉に違和感を感じた。
『これって鍵が閉められていたのに無理やり開けたか?』
鍵を挿し込むと変な歪みもあり動かすことは出来なかった。
嫌な予感がする。僅かに開いた隙間に金属パイプを差し込み無理やり開けると、家の中は荒らされた形跡が見られた。
血痕も残っており少なくとも何かあったということは確実だ。
心拍数が増えていく。ヒナは無事なんだろうか?家付近がああだと血の気が引いてしまう。元から血が抜けているのも含めたとしてもだ。
2階へと上がりヒナを探すがいない。3階の自室もだ。
血眼になって探していると下の方からガタガタと音が微かに聞こえた。もしかしたらヒナかもしれない。
その音の方向に走って行くと、先程は見つからなかった下への道を見つけた。
扉を開けて中へと進んでいくと俺が初めて拷問を受けた時に一緒に回収した少女と大きな怪我を負った別人格の俺がいた。
『どの俺かわからないけど、何があった?』
「キュ、キュウ?ふたに?」
みんなに俺がふたり以上いると思われるのはまずい。適当な言い訳で誤魔化すか。
『俺はキュウじゃない。こいつの知り合いだ。顔はただ似ているだけさ』
「うぷっ・・・・・・へ平凡か・・・・・・?」
『何があった?ヒナはどうした?』
「守る相手に逆に守られるなんてな・・・・・・」
『じゃあここにヒナがいないのは・・・・・・』
「俺たちを守るために自らその身体を晒して連れて行かれた」
『俺より強いお前が負けるなんてどんな相手だったんだ?』
「・・・・・・・・・・・・」
返事がない。先程の言葉が限界を迎えたようで意識が途切れる。
「にゃにゃにゃーー!キュウ!」
『大丈夫だ。呼吸はしてるからちゃんとした処置をすれば問題ないはずだ。それにここは襲撃受けた後だ。また攻撃を受けるかもしれないし、付いてきてもらえるかい?』
猫のように鳴く少女と別人格の俺を連れて自宅へと向かいリビングに集める。
「ヒナはやはりいないか・・・・・・」
『ああ、連れて行かれたらしい。その上で兵器によるヒナを知る人間の排除って感じか』
ん?待てよ。ヒナを知ってる人物ってことは・・・・・・。
視界が歪む。シラヌイの表情からして意識があるのがおかしい程俺の顔は青ざめているんだろう。
休みたい身体に鞭を打ち、シラヌイにここを任せるように言い聞かせからガレージにあるバイクに跨る。
『この曜日時間ならあいつらは学校にいる。無事だといいんだが・・・・・・』
俺は歪む視界の中憎しみの多いあの学校へとバイクを走らせた。