最後の施設へ5
アオイが鳥に食べられようとする虫のように外へと走っていくと異常な数の車に違和感を覚えたのか、こちらに戻ってきた。
「私たちを連れ戻しに来たんだっ!怖い」
アオイは俺を盾にする様に隠れると前に行ってと押していく。
それならまずは隔壁閉鎖を行う筈だ。いくら穴を誰かが空けたとはいえ、通常の通路に防護壁が展開されていないのは不自然だ。
交差する場所に移動するたびに顔だけを突き出して確認しながらシラヌイの場所に向かう。
あそこから救助しても資金を貰わなくては腕を失った意味がない。
至る所に歪むようなへこみがあり、一般的な方法で出来るものではない。
『隠し通路に行けば警備の薄い状態で脱出出来ると思う。その為にもまずは解除スイッチのある場所を見つける!』
大体の位置は覚えている。その記憶を頼りに移動していると、銃弾が飛び交うのが遠くに見えた。
『いちど部屋に入って静かになるのを待とう・・・・・・。襲われたら終わりだ』
「う、うん・・・・・・」
アオイの返事を聞きすぐ側の扉の奥へ吸い込まれるように入っていくと、そこはモニターが多く存在し隙間なく確認出来そうなレッドフィールドのいた部屋だった。
『シラヌイ・・・・・・レッドフィールドはいるか!?』
「キ、キュウか・・・・・・」
『シラヌイ!!!!!無事だったか・・・・・・!』
目立った外傷は無いものの、破片による切り傷が頬にいくつか存在し血が流れていた。
「お前と仲良くしてたやつ・・・・・・」
『詳しい話は後でまとめて聞く。まずは脱出を優先しよう。レッドフィールドは?』
見渡しても赤い髪を持つ人間は見当たらない。まさかシラヌイを置いて逃げたのか?
「う、ああ・・・・・・」
その奥には瓦礫に埋もれるレッドフィールドが呻き声を上げていた。
『レッドフィールド・・・・・・待ってろ今———』
俺は瓦礫に手を付けると何とか持ち上げるようとするものの、やはり片手ではびくともしない。
リミッターを外すか・・・・・・だが、今の身体の行えばどうなるか・・・・・・。
「無視して・・・・・・」
『レッドフィールド!何を言ってるんだよ。お前』
「私は・・・・・・ここの人間だけど、きみたちはここの実験体だと思われてる。だから」
『そうかもしれんが、助けに来るまで瓦礫に埋もれてたらそれこそ危険だろうが!』
「キュウ・・・・・・連れて撤退しよう」
シラヌイは俺の肩に触れると移動を促す。
『依頼者を見捨てるわけには・・・・・・』
「いいから!」
シラヌイの強い言葉に震えてしまう。罪悪感に包まれた俺は瓦礫から手を離すと、テーブルの上のカードを手に取って廊下へと向かう。
「待って・・・・・・」
『なんだ。やっぱり助けては無しだぞ』
レッドフィールドは反対側の壁に指を指すと、タンスから液体のようにドロドロとした物が流れ出る。
「それは私が仕事の合間に作成してた身体を持ったAI、それがイアなの」
『・・・・・・名前適当すぎない?』
「他の人に調査書が見られたときに言い訳を言えるからだよ。パソコン内で買ってるやつだよってね」
液体はレッドフィールドの元に近づくと、瓦礫を軽々と持ち上げて彼女を自由にする。
「あの人をお願い・・・・・・」
そう呟くと俺の右腕があった場所に飛び掛かり、右腕に変形した。
「まだまだ成長段階だから育ててあげて」
感覚通りに右腕が動く。その後右目の機能も向上しよく見える。
「レッドフィールドの指示に従って手を貸させてもらうよーキュウ」
『会話も出来るのか・・・・・・すごいシステムだ。よろしく頼むな、イア」
「あちきに任せて」
身体の不自由が減ったおかげで行動が取りやすい。
俺は軽傷を負っているシラヌイにリオンを任せて俺は近くに落ちていた突撃銃を拾い上げて外へと出て行った。