最後の施設へ4
身体が・・・・・・特に右半身が軽い。噛みつかれたことで出血してその分だけ軽くなったからだろうか?
いや逆に考えれば左半身が重くなりすぎていると言うのが正しいのだろうか?
『が・・・・・・』
左まぶたが上がらない。右まぶたは開いているものの、機能を為していない。損傷による機能停止が考えられる。
転がるように床に寝転ぶと耳を床につけて周りの足音を確認する。
『走ってる音はないか・・・・・・メルトはこの近くにはいない感じか?』
右足の感覚が少しずつ戻ってきた。重くなっている左半身をリミッターを外すことで何とか立ち上がる。
リミッターを外したことで左まぶたを何とか開くことが出来た。
『メルトに人を襲わせるわけには・・・・・・』
壁に寄りかかりながら元来た道を歩いていると壁越しに違和感のある音が鳴り響いていた。
『この辺りはアオイたちのいたあたりか・・・・・・無事なら良いが、メルトみたいに1人が変化している可能性もあるか』
声帯機を外してナイフに変形させながら扉を開く。
「・・・・・・白銀さん?」
扉の先にいたのはアオイと血にまみれうつ伏せに倒れるリオン、そして奥で倒れるひとつの死体があった。
ナイフを声帯機へと戻して口を開く。
『アオイ大丈夫か?』
実験内のひとりなのは分かるのだが、顔が損失し判断が出来なかった。
「私、私は・・・・・・し、してない。殺してない!」
『そんなこと気にしてないから。まずはここを出ようぜ。出口を見つけたからそこに行って誰かに助けを呼ぼう』
アオイは違う違うと同じ言葉を壊れた機械のように同じ言葉を呟き手で顔を隠しながらへなへなと膝をつける。
変にストレスを与えてBOW化されても困る。メルトの時のように・・・・・・。
状況整理をする為に腰を下ろしていると、こちらの視線が向いていないことが理解出来たのか、顔を隠すのを辞め俺を恐る恐る覗き見ると、悲鳴を上げながら後ろに下がり死体に足を引っ掛ける。
「う、ううううううう腕がががが・・・・・・」
俺の右半身に指を刺すと縮こまりながら震え始めた。
軽かった理由これか・・・・・・。
俺はどれほど腕が失ったか確認する為に右腕のある筈の部分へ左腕を伸ばす。
手首より先はない。肘もない。ここまでくると少し怖いな。
二の腕もない腕の付け根もない・・・・・・へっ?付け根がない?
再び触るがない。心拍数が上がっていく。身体が熱くなる。思考が崩れて考えることが出来なくなっていく。
まずいと思った俺は悲鳴を上げるようにアオイに声をかける。
『こんなよく分からない場所から出よう・・・・・・アオイ』
「ででで・・・・・・」
『俺たちのテントぐらいの距離から歩いてきたんだ。ちょっと頭痛いけど大丈夫だから行こうぜ?こんな辛気臭い場所にいたらネガティブな気分になる』
立ち上がって彼女に手を伸ばして彼女を立ち上がらせる。
『ほら、大丈夫だろ?』
「・・・・・・・・・・・・待って。リオンも」
倒れ方と呼吸が見られないから息をしてないと思ったが、生きていたようだ。
「わ、私は普通に動けるから、リオンを運んで。片手じゃキツいと思うけど」
『了解だ。無事でよかったよ』
リオンを担ぐとこの施設内に入るときに通った場所へと歩いていると、途中で液状化した金属製の壁が空き巣に入る際に窓ガラスに円状の穴を開けるときに使う器具で開けたかのような穴が作り上げられていた。
「外にも繋がってる・・・・・・こっちから行こう!」
アオイは先を確認しないまま穴を抜けていった。音も他にはないし問題ないと判断した俺もその後に続いた。