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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
修也の周りは危険ばかりだ
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全部が終わって

「息を止めてから結構時間がかかってたから、記憶の消失があるかもしれない。こうなってしまって申し訳ない」


「修也に致命傷を作った上助けてもらったのにもんくなんていえるわけがない。ありがとうございました」


 芹は頭を下げて修也のいる病院に入っていく。


 セイエイは芹が中まで行くのを確認した後、帰路につく。


「俺は何時も俺が傷つかないで、皆が傷ついてばかりだ」


「だからこそ努力を続けられるのではなくて?」


「そんな理由で努力続ける俺は本当最低だなって思う」


 2人が病院が離れていくのとは逆に雨が降っている訳でもないにも関わらず、雨具着て病院に入る少女が入っていった。


「あの子は・・・・・・」


 2人はその少女が誰が感じ取ったものの、殺意と悪意が一切ないこともあり、特に行動を起こすこともなく、去っていった。


 芹が病室に戻り、修也のベッドの側に座る。


「修也、どれぐらいの大きさのリンゴなら食べれそう?」


「芹の胸———」


「セクハラ死すべし。冗談が言えるくらいなら問題ないよね。ウサギさんの形にしとくよ」


 芹はナイフを片手にリンゴを剥いていく。切れない部分は口に含んで喉へと飲み込む。


「はいリンゴ」


「ありがとう」


 目を覚ましてからというもの、修也は昔ほど話すことがなくなっていた。


「友達だと・・・・・・思ってたんだけどな」


「修也はいつもそう。勝手にそう思い込むところ、本当昔から変わらないよね」


 贇がそういう人間だとは知らなかった。勿論これは学校に化け物の作る製造施設があったから、というのが最も理由だろうが、それでも友人ならば襲う必要なんてない。


「ちょっと人間不信になりそう。てかなってる」


 ウサギの形をしたリンゴをガシガシと齧ると頭に疑問符を浮かべる。


「味がしない・・・・・・」


「あ、あんまり甘くないやつだったね。他のなら大丈夫かな?」


 首を横に振ると、芹はしょんぼりな表情を浮かべる。これはしまったと思った修也は芹に外の空気が吸いたいと頼むと、車椅子に移動して病院の中庭に移動する。


「さっきリンゴ食べて喉渇いたでしょ?お茶買ってくるね」


「ありがとう」


 芹は離れていくと、修也は立ち上がると車椅子の横に取り付けてあった松葉杖を掴むと、てくてくと中庭を回る。


「わざわざ来てくれてありがとな」


 修也は振り返ることもなく背後の人間に声を掛ける。


「・・・・・・もう動いて大丈夫なの?」


「ダメに決まってるだろ。けど君が来たのなら無理してでも会いに行かないとな」


「ごめんなさい。いつも君は私を助けてくれるのに」


「助けてって・・・・・・今回はおいらが助けられた側でしょうが」


「君が守ってくれたからこそ行動を起こせたんだもん」


 痛みがあるのか雨具越しに右腕を触ろうとするものの、修也と同じように腕が喪失しているようだった。


「・・・・・・これからどうするつもりなんだ?」


「流石にあんなことに関わっちゃったからね・・・・・・この街にはいられない。それにもういつまで保つかわからない身体だしね」


「君が死んだらおいら達はどうなるのかねえ」


「その時はちゃんと戻ってくるよ。折角生き返ったんだけどね」


 もう芹も帰ってくる時間だろう。少女は修也の横を抜けると、そのポケットに何かを入れる。


「ん?これは・・・・・・」


「私が使ってたうちの1つのアクセサリー。もし私が君の前に戻ってこれなかったら、それで」


「飛び降り自殺とかよりはマシだしそんときゃ使うよ」


 修也は振り返り車椅子のある場所に戻る。少女は1度空を見上げ眩しいなと自分の現状を憂いつつ病院を後にした。


「修也ー」


 芹が戻ってくる前に車椅子に座り芹を待っていたのだが、彼女は大きく息を荒げていた。


「何があったのさ」


「ほら、化け物がいっぱい出てくる事件あったでしょ?学校以外にも沢山いたみたいで被害者も大勢出てる」


「それと芹が息が上がってる関係は?」


「それでね飲み物ほぼ全て売り切れだったの」


「ああなるほど」


 修也はそれを受け取ると、一気に喉へと流し込む。当然これも味がしない。


「(これから大変だなこりゃ)」


 修也は1人笑う。いきなり笑い出した修也にはてなを浮かべながら、2人は病室へと戻った。

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