追走
「あああ・・・・・・」
ユウスケは化け物に襲われながらも、自身への攻撃よりも腕を不自然に曲げられている修也への攻撃を見て、声にならない音が口から漏れていた。
「やめてくれよ。そういうことさあ・・・・・・」
ユウスケ本人も化け物に手足を掴まれると持ち上げて左右に引っ張りだす。
「———!!!!!!!!!!!!!!!?????」
身体測定で行う前屈で限界まで伸ばした時の様な痛みが、ユウスケの身体を突き抜けていく。
糸が千切れるような感覚が手足を襲うと、不自然な方向に曲がった。
内出血が手足の至る所で現れる。痛みというより痒みが手足に走るが、ユウスケはそれをどうにも出来ないまま化け物にするがままにされていく。
「(誰か・・・・・・誰でもいいから助けてくれ)」
抵抗がないと判断したのかユウスケも修也も地面に落とされると、肉を剥ぎ取るように2人の肌を剥いでいく。
修也は意識が抜けている為まだ良かっただろう。ユウスケにはそれがない。べりべりと気の幹を剥ぐような音と感触がゆっくりと登ってくる。
腕の痛みなんて気にしていられない。修也の方向に手を伸ばして助けを乞う。当然助けなど来るはずもなく赤い筋肉質が視界に入ってしまった。
心が壊れていく。化け物は更に数を増やしそれに合わせて剥ぐペースも速まっていく。
動けなくなってどれだけ時間がたったのだろうか。もう諦めて食べられていると幾分が減っていた。食べる所がなくなっていたのだろうか?
うつ伏せのままで視線を上に向けると、化け物たちはユウスケに視線を向けてはおらず、どこか別の場所を向けている。
その別の場所にいたのは化け物と違い、一般的な肌の色をしていた。もしかしたらそれも化け物かもしれないが、もうそれに頼るしかなかった。
「助けて・・・・・・」
力を振り絞り声を上げてその人型に伝える。
すると聞こえてきたのは銃声だった。化け物たちはその銃声の度に身体を崩していく。
危険を感じたのか残った化け物たちも修也とユウスケから離れていき、どこかへ去っていった。
「済まなかったな。追われている時は中々救助には入れなかった。まだ意識はあるんだろ?」
フードを外すとそれはセイエイだった。
「目的は君たちも見たかもしれないものなんだよな。あれを見つけるのに協力してくれたのに見捨てる訳にはいかないだろ?」
「し、修也は・・・・・・」
「大丈夫だ。君よりもマシだっていうことは保証する」
どこからかサイレン音が近づいてくる。
「あとは任せろ。休んでろいいな」
白衣を着た人々はユウスケを担いで行くと去って行ってしまった。当然だが修也は残されており、セイエイはそれを見下ろすように待っていると、意識を取り戻した。
「・・・・・・」
「友達はあんなに食われてんのにお前さんは全然だな」
「・・・・・・?ユウスケが、食われた?」
「安心しろって。知り合いの人でかつ信頼出来る奴だからさ。本題に行くが、足の方は動かせそうか?無理なら担いで行くが」
修也はその場で四肢を動かすと、痛みで顔の表情が歪む。だが気にするほどでもないようで、首を縦に振る。
修也はセイエイの伸ばした手を支えに立ち上がると、セイエイの後を追い目的の場所へと向かった。
「刹那と途中までは共に行動していてな。あいつに追うのは任せてこっちに来たんだ」
「前に洞窟みたいな所で管理されてたのとは違うんですか?タイプは同じみたいですが」
「手に入れたデータを元にいろんな場所で使ってるのかもしれないな」
「じゃあ前に見たデータ信用ならないんじゃないっすかね?」
「けど大きくは変わってないなら、俺たちが個人で手に入れたデータも役に立つ。違うか?」
修也の休憩を挟みながらの移動な為時間は掛かったが、なんとか刹那の元に到着した。