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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
修也の周りは危険ばかりだ
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独白4ー2

 もしかしたら交番に行くのを予測しているかもしれない。私は芹ちゃんに電話をかけてみる。


「せ、芹ちゃん・・・!」


『どうしたのその息切れの仕方。まさか彼氏でも・・・?』


「そういうのじゃないけど、なんか変な人に追われてるの!」


『警察に行きなよ!えっ?そっちにも同じような人がいたの?』


 予測なだけで行ってはいない。けどなんでか信用できないので行ったことにしておく。


「走って追っかけて来てるわけじゃないから入れてよ!」


『うーん・・・・・・それはいいんだけど、今私家にいないもん』


 うわーついてない・・・・・・他の知り合いは時間的に厳しいのとそんなに仲のいい関係じゃないし。


 チラリと後ろを振り返ると人の姿はない。少し緊張が緩み止まりはしないものの、歩くペースを抑えて移動する。


『マコトちゃんが良いなら修也に連絡しておくけど』


「芹ちゃんの幼馴染の子だよね?良いの?私が行って?」


『ケータイにはダイレクトメールがあるし、その上こんな時間にわざわざ電話するんだもん。そんなこと気にしてる場合じゃないよ。それに修也とはそういう関係じゃないし』


 今は藁にもすがる状態だし問題ないなら頼みたいもの。私は芹ちゃんにそう伝えると、快く受けてくれた。


『場所はうちの隣の家だからねー』


 本当に助かった。私は感謝の言葉を告げると電話を閉じてもう一度走り出す。


 時折信号に引っかかるので、そのタイミングで息を整えながら周りの警戒を行う。


 それを続けていると私が向かう先がどこか理解したのか、気配が強くなっていく。


「しっつこい!ストーカーとかやめてくれない!?」


 段々心への負担が大きくなっていく。もうもたないということでとうとう信号無視をしてでも修也君の家へと向かっていく。


「はぁはぁ・・・・・・」


 肩の感覚が抜けていく。膜には覆われているけどその中身は元々ない。そんな感じで。


「はぁはぁ・・・・・・あっ!?」


 足を搦めてしまい身体が地面に近づいていく。顔を叩きつける所で肌の露出していない部分を下に受け身をとる。


 すぐに起き上がると周りを警戒する。いつの間にか赤鬼たちが後ろからまるでミュージカル映画のように段々と数を増やしていく。


「ま、まずい・・・・・・」


 即座に立ち上がると速度が出ないまま走っていく。けれども赤鬼たちの方が移動は早く、足を掴まってしまう。


「ひゃっ!」


 それに合わせて更に赤鬼が私の腕を身体を乗りかかるように拘束していく。


「いやっ!」


 身体の自由を少しでも手に入れようとするものの、赤鬼の力が強いせいで全く動けない。


 完全に動きを封じられた所で家に入り込んだフードが見下ろすように覗き込む。


「同志よ。あまり手荒いことはしたくない我らと共に道を進もうじゃないか」


 あくまでも私をあちらに組み込みたいようで、拘束だけで収まっている。


「胸を圧迫され続けると、呼吸もまともに出来ずに窒息するぞ。息がある間にそう言うんだ」


 フードの言う通り少しずつ呼吸が苦しくなっていく。タイムリミットは近い。


 けれどそれだけの理由で白旗を上げることは出来ないし、上げるならもう最初からしてる。


 私は呼吸がまともに出来ない状態のまま口を開かずに耐え続ける。


・・・・・・・・・・・・。


 何分・・・・・・いや、何秒経ったのかな?視界が自然と上に向いていく。いい加減まずくなってきたみたい。


「少し弱める——————」


 フードの言葉が途中で終わる。それと同時に私の胸に乗り掛かっていた赤鬼が急に消えて、肺に空気がなだれ込んでいく。


「集団リンチは同人誌だけにしてもらいましょうかね。リアルでは見たくない」


 聞いたことのある声だった。呼吸を整えながら周りを見渡すと、修也君が金属のパイプを片手に赤鬼たちへと敵意を向けていた。


「あ、あああ」


「そのままで。いいですね?マコトさ———名前で呼ぶ中でもないのに呼ぶのはいけないよな。えっと・・・・・・どっちのほうがいいですが?苗字の方は」


 危険なことが目の前にあるのに異常なほど気にせずに私に視線を向けている。


 その動きに苛立ちを覚えたのか、フードは近くの赤鬼たちを修也君に向かわせる。


「人との会話中に邪魔しちゃいけないって習わなかったんかいな」


 左手に握られた金属製のパイプを振り回し、赤鬼たちの命を尽く奪っていく。


 血に塗れた金属製のパイプをフードに向けたときには先ほどまでの赤鬼たちの九割は床に息を止めて倒れ込んでいた。


「まだ勧誘するならおいらがあんたの首へし折るよ」


「くっ・・・・・・同志よまた会おう!」


 フードはまるで漫画の忍者のようにその場離れると、そこに残ったのは命令がなくなって慌てふためいている赤鬼数体と、死体のみとなった。


「ふう・・・・・・立てるようになりましたか?苗木さん」


 修也君は腕を伸ばすと、私もそれに甘えて手を出して立ち上がった。

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