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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
日南休直史の周りは絶望ばかりだ
14/202

友人を助けに

「なんてこったい・・・・・・まじかよ。刹那・・・・・・」

 俺はインの家をでた後すぐに荷物の中にあった手紙を読んでいた。最初は読めるかどうかの確認として開いたのだが、内容が内容だったので、インに連絡を取り駆けつけて貰った。

「少なくとも、悪戯レベルではないね。字圧から考えてだけど」

「この座標ってすぐ行けるものなのか?」

 うーんと首を傾けるインであったがすぐに答えを述べた。

「もうすぐギガフロート内の座標変更が始まるからね。変わる前にここに行くには、バイクが必要不可欠だね」

「じゃあ、どうすればいい?無視するってのはしたくねえ」

「大丈夫。今窓原に用意させてるから。キュウは多少の運転は出来る?」

「百キロとか出さないなら、何とか行ける。けど、免許が無いから無理じゃね?」

「そこは自動操縦で何とかすればいい。とにかく今は刹那さんを助けることを優先しよう。一人で数十人を相手にするなんて、戦隊ヒーローしか無理だよ」

 だが、その理論だと俺達が行ったところで変わらないんじゃないか。俺の悪い癖だ。いつもデメリットのほうしか考えない。たとえメリットが大きくてもだ。つまりは批判厨ってこった。

「いつその数十人を倒すと言ったかな?僕らがするのは刹那さんを助けることだ。武器なしで撃退しようとしたら、バイクで引くしかないよ。そんなに血が見たいのかい?」

「そういう訳じゃねえが・・・・・・って何時になったら窓原は来るんだよ。時間は一刻を争うのによお」

 俺が憤慨するとインは俺の性格の酷さに呆れたのか、溜め息を大きくついた。

「一人で二台持ってくるのって結構大変なんだよ。それに、基本は一台しか使わないから、もう一台に燃料入れてる最中かな。おっ、来た来た」

「このやろーぶっ殺されてえのか!いきなり呼んでおいて、何だよその文句はよお」

 そうだった。こいつ心の声が読めるんだった。あの距離でも聞こえるのか、気を付けないとやべえな。

 窓原は自分のを含めた三台のバイクをトラックで持って来たようだ。運転手に何か話した後、バイクを下ろしていく。

「ほら、行くんでしょ?窓原は肉壁ね」

「ぎゃあす!それはないぜ?イン。いくら俺が硬くても、肉壁は嫌だ」

「文句言うんじゃねえ、おっさん!さっさと行くぞ!」

「まだ、二十歳だ!」

「俺より上なんだから、おっさんだろ!」

「喧嘩するのは後でいくらでもさせてあげるから行くよ。キュウが喧嘩していたら元も子もないでしょうが」

 インを先頭に二番が俺。そしてしんがりが、窓原のおっさんだ。座標登録とスリップストリーム、そしてバイクのサポートシステムのおかげで、一切バイクの経験がない俺でも普通に飛ばせている。勿論ヘルメットは着用してる。してなかったら怖くてこんなに飛ばせない。

 右へ左へと、方向転換しながら確実に青信号を渡っていく。ここまで一切赤信号に引っかかっていない。赤の他人から見たら、今の俺は暴走族か何かに見えるのだろうか・・・・・・?マフラーからの音が中々でかい。遅くはないので、迷惑行為そのものにはなってないとは思うが。

 座標登録されたところは小道で、一方通行の程度の広さしかない。それを減速もせず逆に加速して進入していく。

 そして、少し大きな所にでると、数十人といったところか。その集団目掛けてインは突っ込んでいった。俺はバイクのサポートシステム通りに誰もいない方向に進んで止まり、窓原のおっさんはインと同じく、避けた残りの連中に突っ込む。死んだらどうすんだ。

 何人かは実際に引かれたようで、ギャーギャー叫んでいた。それに対しインと窓原は普通に無力化していく。何が起きたのか把握し切れていない彼らに向けて声を掛ける。

「この近くに少女がいたはずだけど、どこにいるか知らない?」

「教えるわけないだろっう!?」

「言わなきゃ殺るよ?こんな時間に集団でいるんだ、殺ったって世界には何の影響もないからね」

 さらっと怖いこと言うなイン。窓原はどこからともなく小銃取り出してるし。何これ?と言いそうになった。

「ちょ、待てよ。銃で脅すなんて──」

 最後まで言わなかった・・・・・・否、言わせなかった。サプレッサー──サイレンサーでも良いか──内蔵型小銃で集団の足元に発砲した。

「あんたらに質問する権利はない。それに質問したのは僕らが先だ。勝手にするな。したいのなら、僕を今ここで潰してみろ」

 ちょ、何言ってくれちゃってんの~?俺、死にたくないんだけどてか、さっきと言ってること違うくね?

『数十人の相手は出来ないと言っただけで、十数人なら出来る。それがインだ』

 窓原が説明してくれたが、かなりやばいことだって事しか分かんない。

「そこのビルの中だよ・・・・・・教えたんだから見逃して──」

 シュパパパパと静かに音を小銃が立てて集団の一人を床に這いつくばらせた。容赦ないな。

「見逃すわけがないだろう?あなた方が真実を述べたか否か、一緒に来て貰います。嘘をつけばどうなるかなんて聞かなくても分かりますよね?」

 怖い怖い。俺があちら側だったら失禁不可避なぐらいだ。だが、インは実際はとても優しい。今が怖いのは状況上仕方のない事だし、その前に昨日今日会ったばかりの人間のためにここまでしてくれる人なんて、俺は生まれてこのかた見たことがねえ。俺は同じ事が出来るとは思えない。

 いつの間にか話が進みビル内に入ると、インが一番前で俺と窓原が一番後ろ。その間に集団が入る形になっている。インには敵わないと見たのか、一切抵抗する気配がない。俺は、窓原にあることを尋ねた。それは何で彼は昨日今日会ったばかりの俺のためにしてくれるかを。

『あいつの心は俺でも読めん。だが、あいつは殆ど人間から嫌悪されてきたようでな。あれだけ強ければ誰だって恐怖する。あいつとまともに話せているのは、俺とお前のバイト先にいる人だけなんだぜ?仕事してるとき見なかったか?他の奴らの対応をさ』

 あんたがマスターやリーリャさんと何か話してたから、一人で仕事してたから見れる分けねえだろ。

『そうだったな。すっかり忘れてた』

 ・・・・・・どうせ俺はあんたらから見ればモブですよ。前が歩くのをやめたということは、刹那がいる階に着いたのだろうか。人数が多いから最前列にいるインさえ見えない。それにしても、外から見たビルの大きさからすれば、階段はもうちょっと大きい気がしたが思ったより小さいな。

 微かにがちゃりという鍵を開ける音がすると、また前が動き出してそのまま部屋に入る。するとそこには・・・・・・。

「刹那!すまない遅れた。何もされてないよな?」

 こくりと頷く。よかった。衣服の乱れもないし、固定されているのは足と手首だけみたいだ。

「刹那何であの手紙見たが何で一人でやろうと思ったんだよ?セイエイやコハル、それに俺だっているじゃねえか」

 足と手首の紐を外しながら聞く。刹那は一瞬俯いたが小さな声で俺に教えてくれた。

「そこにいる奴らは、私達がよく知ってる子が雇ったチンピラ。手紙も送ったけど、内容は改ざんされたようね」

「改ざんって何だよ。お前が襲われてるのは事実だろうに」

「だって、私はそういうことは書いていないもの。私が書いたのは、コハルやセイエイ皆でギガフロートに遊びに行かないかって事よ。試しに聞くけど、誰から貰った?」

「セイエイからだが、それが何か?」

「・・・・・・やっぱりね。あなたと私では記憶に違いがあるようだわ」

 あっ、忘れてた。俺が貰った時と今は俺に対する対応が違うんだったな。ん?何かがおかしい。学校で暴力を振ってきたセイエイやコハルとここの俺が仲がよかったとは思えない。ヒナぐらいしか話せる奴もいなかっただろうし。

「刹那それはどういう事────」

 俺は刹那に尋ねる前にバンッッッ!!!という音に巻き込まれ、一瞬ではあるが、何も聞こえ見えなくなった。


 意識が飛んだわけじゃない。害獣を追い払う用の爆薬がホームセンター等には売っているのだが、それを目の前で爆発させたような感覚に近い。

 何かに触れている感触はあるものの、真っ白な視界では何も見えない。位置から考えて、刹那の肩とかだろうか。

「・・・・・・・・・・・・いい加減離れてくれないかしら?酷く不愉快なのだけれど」

「うわぁ・・・・・・キュウ最低だね」

 耳の方が先に機能再開したので、刹那とインの声が耳に入ってきた。触れられるのがそんなに不愉快なのか?俺自身も触れられるのが苦手な所はあるにはあるが、そんな触れることが最低扱いされるなんて・・・・・・あっ。

「言う事は?」

「刹那様、申し訳ございませんでした」

 何故皆が呆れてたのかは、俺が刹那の胸を触っていたからだ。ラノベの主人公じゃねえんだ。胸に触ったら好感度が上がるわけがない。

「後で説教は受けるから、今に状況説明頼めるか?」

「僕と窓原、刹那さんは大丈夫。キュウは・・・・・・普通に話せるから問題ないね」

「ああ、特に大きな怪我は無い。それでさっきの奴等は?」

 首を横に振るイン。耳障りと視界が真っ白になるそして、微妙なホコリ。俺は後ろを振り返るとそこには、十数人が綺麗にいなくなる事が出来るほどの穴が空いていた。考えられるとしたら下に落ちたか、それかバラバラに吹っ飛んだか。後者はあり得ないだろうから、・・・・・・って誰か掴んでるじゃねえか!全員視界が開いたのはついさっきって事なのか?

 俺は、急いでその手の所に向かい確認する。よし、大丈夫そうだ。俺より子供じゃねえか。インといいリーリャさんといい皆若いなおい。

「おい!引っ張り上げるぞ。もう片方の腕伸ばせ」

 子供はその状況維持で限界なのか、手を俺が掴めるとこまで上げれない。しょうがないか・・・・・・

「肩抜けるかもしれないが我慢しろよ。ふぉいこらせっと!」

 思った以上に軽かったので、子供を引きずり上げるつもりが普通に抱き抱えてしまった。この子どんだけ軽いんだ・・・・・・?

「他人に抱えられるのって恥ずかしいと思わないのかしらね?あなたは」

「勢い強く引っ張ったらこうなっただけだ。俺はロリコンじゃない」

「誰もそこまで言ってないんだけどなあ。キュウは変態でロリコンなんだ・・・・・・刹那さん、キュウはいつもこんな感じなのかい?」

「いえ、けれど時々変態になるという事は多々あったわ」

「あれはネタとしてで、俺は自分からは基本してないだろ。勝手な事言うなよ」

 反論しながら子供を降ろす。子供の頭は真っ白になっていたようで、ペタンと床に脚をつけて座った。

「んで、反論はもう受け付けないが、ここから出ようぜ。こんだけ大きな穴が空いたんだ、警察とか救急が来たら真っ先に疑われるだろ?」

 分かってるとばかりに、インは窓原に跳び降りさせる。直下で降りないで階段側に向けて跳んだだけなので、実質は二階分しか降りてない。けど、よくまあ跳べるなあ。そうしたら、この階まで上がってきて手を伸ばした。優先順位は刹那だ。ここに来た目的である、刹那を後にしていたら意味がない。

「走ってくればこれ位余裕だろう。さっさと来い」

「いくらなんでも窓原でさえ跳べなかった所を走ればいけると思うのはどうかと思うぞ」

「んじゃあ、お前は一人で降りるか?」

「あの走るのに物凄く邪魔なのだけれど。踏み台になってくれるのであれば、それはそれで良いのよ?」

「そうしたら、パッ──!?」

 インの顔の横に鉄パイプが刺さる。ひゃあ恐え・・・・・・。いくらインが悪いとはいえ、真面目にこれはびびった。座っている子供もビクビク震えている。

「・・・・・・何か聞こえたのだけれど、もう一度言って貰えるかしら?」

「イエ、ナンニモアリマセン・・・・・・」

「ざまあねえな、イン」

「はあ?ざけんなよ窓原。お前給料カットな」

「それ、理不尽って言わねえ!?」

 二人が喧嘩しているせいでこのままではらちがあかない。俺が先に降りてそこで回収することにした。

「受け止めなさい。しっかりと」

「でえ丈夫だ。インみたいな事は考えてねっ───」

 降りてきた刹那の脚が俺の顔に直撃した。一番降りやすい体勢とはいえ、少しぐらい回収する人のことを考えてほしいもんだ。

「もう一人いるでしょう、早く回収しないと。怖くて脚が震えているわ。あの子」

「へいへい、蹴ったのはどこの誰ですかねえ。いいぞ、ちゃんと受けとめるから、安心しろ」

 子供は刹那とは違い、自分が怖くても相手が回収しやすい降り方をしてくれたので、本当に受け止めやすかった。

「僕も受け止めてくれよ~」

「お前はそれぐらい跳べるだろ!」

「あら、分かってたんだ。バイクの運転問題なかったはずだけどなあ」

「自動小銃を持ってるのを見たら、誰でも分かるわそんなもん」

 まるで階段の五段目からから飛び降りたかのように、膝を曲げずに着地したインを見て子供は恐怖で、柱を盾に隠れてしまった。確かに自動小銃ぶっ放す人なんて怖いのは当たり前だよな。優しい奴だって分かってしまえばそうは思わないが。

 パトカーと救急のサイレンが近づいてくる。まずいなさっさとここから出ないと。

「バイクで逃げようにもヘルメット予備は一つしかねえぞ?どうする?イン」

「二人乗りして注意受けるわけにもいかないし・・・・・・ここで別れよう。刹那さんは少なくとも狙われてたことは確かだから、僕と窓原と刹那さんで僕の家に帰ろう。君達は、バイクで別方向に出てそのまま船に乗って。キュウの元の目的は家に帰ることでしょ?」

 それはそうだがと返事を返す前にさっさと行けと促され、俺は子供を連れてイン達とは別方向へ逃げた。一応座標登録もした上で。

「そういや、お前の名前聞いてなかったな。何日かの付き合いではあるけど、話すときに一々坊主と呼ぶのも面倒だ。俺は日南休 直史。休みって付くからキュウとも呼ばれてる。お前は?」

「・・・・・・シラヌイ・・・・・・」

 シラヌイか・・・・・・なんか厨二っぽいなあ。まあいいか。俺の愛称であるキュウだって充分厨二だし。

 シラヌイを連れて俺は日本行きの船に向かった。

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