独白4
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない」
リビングのテレビからそんな声が聞こえる。両親は今日は帰ってこないと連絡があり、その連絡以降はリビングに立ち寄ってすらいないのにも関わらず付いてるなんておかしい。
私は枕で耳を塞ぐけれどその音は次第に大きくなっていき、気づけば耳元で音が出ているではないかと思ってしまうほどになっていった。
「録画するときに勝手につく仕様だったかなぁ?うちのテレビ。聞いたことないんだけど」
イライラを隠せず舌打ちをしながらリビングに向かうと、ホラー映画の1シーンのようなものが映し出されていた。
当然そんなものに興味はないし、見るなら怖さが減少する昼に見る。私は夜になんて見ない。
テレビのリモコンで電源ボタンを押すも画面が変わらない。電池が切れているのかもしれないが、入れ替えるのは今じゃなくてもいいかなと思い、テレビ本体のボタンで電源を落とす。今度はちゃんと消えたのを確認した。
「最近のテレビじゃなくてよかったわ。液晶タイプってリモコンじゃないと電源入り切り出来ないんだもん」
迷惑なテレビの音も消えたことで、やっと部屋でゆったり出来る。
しかし何故許さないという言葉が隙間なく続く映画なんて撮ってたんだろうか?ただの聞き間違いか何かかな?
検索にかけてみてもそんなセリフのある映画は見当たらなかった。もしかしてマイナーだったりするのかな?
がちゃり扉の開く音が聞こえた。静かな部屋でそんなことが有れば当然驚いて猫のように飛び跳ねてしまう。
だけど、その反応は今考えればいい判断だったのかもしれない。
それは身体を引きずっていた。下半身は暗い部屋なので認識出来ないのか見当たらず、ずるずると非常に不愉快な音が部屋中を駆け巡る。
当然家族でそんなことする人なんていないはずだから、完全に他人だろうか?
もし猫のように飛び跳ねていなかったら、身体が固まってしまいその恐怖で叫ぶ事さえ出来なかった。
私はその不審者から逃げるために部屋の窓を開けてベランダへ出る。
しかしどうやってあれから逃げればいいんだろうか?こうやって外に出てしまったけれど、室内に戻る為には自室に向かわないといけない。
「私がバカで窓の鍵を閉めてないことを願うけど・・・・・・」
リビングや両親の寝室の窓を触るけど過去の自分は馬鹿ではなく、鍵は閉まっていた。
一応リビングから市内へ逃げる為に下へ降りる非常梯子を使えば出る事は出来るけど・・・・・・。
背に腹は変えられない。非常梯子に行くための扉を開こうとすると、リビングの窓が開き背後から掴まられる。
「いやっ・・・・・・」
「君は我らの同志だ。君は憎しみを感じないのかね?」
私を背後から動きを奪う人間はフードで顔を隠しておりなんとか見える範囲は顎の一部分だった。
「ああ、すまない。同志として話すなら顔を見せるのは当然だったな。それに動きを封じるのも」
私を解放すると距離を取る私を見ながらフードを外す。
現れた顔は少女にも少年にも見える顔たちだったが、赤鬼のように常に怒りにまみれ血が顔の表面を高速で動いているのではと思ってしまう程だった。
「顔が赤いことに驚いているのかね?日焼けが原因なのだがそう言っても聞いては貰えないだろう」
赤鬼はやれやれとしながらも私へ近づいてくる。
「そんな格好で外は恥ずかしいだろう?中で話そうじゃないか」
「いやっ!近づかないでっ!」
私は赤鬼の手を弾くと突き飛ばして開けたリビングへの窓を通って玄関から外へと逃げ出した。
確かにこれは寝巻きだ。だが元々は外出時に使っていたもののお古を転用しただけなので問題は小さい。
追いかけてきてはいるものの急いでいる様子はなく、簡単に靴を履いて外へと逃げることが出来た。まずは交番だ。即座に行けて且つ安全な場所の筈なのだから。