市内へ向かって
バスに乗って市内に向かうと多くの人が歩いていた。
「学生も思ったより多いなぁ。理由分かる?」
「ガキが聞くわきゃないっしょ。オレもガキだけどさ、その被害に遭わないと人っていうのは信じないもんなんだよ」
「現にわいも従ってないから何も言えないか」
市内中心部に到着すると芹に連絡をかけるが、繋がらない。
「うーむ駄目ですな。芹が行きそうな店を手当たり次第に探すしかないなぁ」
「デパート内だけで数十店舗もあるし、厳しいぜぇ?俺は6時になったら帰るが」
「はくじょうものー」
後悔しないように1つ1つ丁寧に見回っていく。しかしどの店を探しても芹の姿は見つからない。
何故か動悸が激しくなっていく。ゲームセンター帰りの日のように化け物に襲われたんじゃないかと思ってしまう。
「頼むよ芹・・・おいらが悪かったから電話に出てくれよ・・・・・・」
SNSでの連絡も行うが、そちらにも反応がない。
流石にユウスケもこれだけ電話に出ないことに違和感を感じて、修也に声をかける。
「帰るのやめるわ。探すの手伝う」
「ゴメンよ面倒に巻き込んで」
「他人の家の電気代食ったんだ。気にすんな」
1つの建物内を探す場合は2手に分かれて足を動かす。
太陽は沈み、球の切れた街灯が点々と並ぶような裏路地以外の店は1通り回ったが見つからない。
不安と走り回ったことにより汗が額を流れ落ちる。
「馴染みの店の人に聞いても今日は来てないって言ってたし、考えられるのは・・・・・・」
修也たちの視線は裏路地に向けられる。ユウスケはその行動を起こさせる前に、修也の前に立つ。
「この時間から裏路地は危険だって・・・・・・どんな人がいるかもわからないんだ。入れ違いなだけかもしれないだろ?」
携帯を覗きそれをすぐにユウスケへと見せる。
「入れ違いでかつバス内で居眠りをして帰ったとしても、夕食時間に帰ってこないおいらに対しての連絡がないのと、相変わらず既読が付いてないこと。どう考えてもおかしい」
「いやまあ分かるけどさあ」
元々説得するつもりもないようで、修也はそのまま裏路地へと足を進めていく。止めようと肩を掴み無理やり振り向かせると、その目をくり抜くように見つめる。
「自分のわがままを通すのが何故いけないんだよ!三行以内で答えてみ?」
「三行の基準は分かんないが———」
ガサガサと裏路地の方から音が聞こえる。2人は思わずそちらに目を向けると、一瞬だが少女が目に入った。
「芹かもしれない!いくぜユウスケ!」
「しゃあねえ今のが誰か分かんない以上行くしかねえよな!」
2人は先ほどまで争っていたことを棚に上げて、裏路地の奥へと走っていった。