あの化け物の正体は———
化け物を踏み潰した少女はこちらの腕を掴むと無理やり立ち上がらせる。
「まだいるわね・・・・・・行くわよ」
「行くって何処へ?」
少女は腕を掴むと代表選手になりそうな程の速度で走り出して公園の外に出た。
「ちょ待っ!速い!」
「さっきのはあれだけじゃないわ。殺されたいなら放してあげるけど」
走るせいで視界が歪みながら背後視線を移すと、至る所から這い出るようにこちらの後を追ってきていた。
彼女の走りがなければ確実に追い付かれてどうなっていたか分からない。
「このままで」
「素直でよろしい」
更に速度を上げていく。歩幅も合わないせいで飛び跳ねるような移動になったがそれのおかげでなんとか移動を続けることが出来ていた。
走り続けていると、どこかの一軒家に滑り込むように鍵を開けてその中へと入った。
「かはっ・・・・・・はぁはぁ」
貧血になった時の感覚に近いものに襲われ玄関に膝と手のひらを付ける。
「ここなら安心よ。多少引っ掻き音は聞こえはするかもしれないけれど」
「くっはっ・・・・・・あんた・・・・・・一体何なんだよほんと」
向ける必要性はなかったが状況が状況だ。自然と敵意が向いてしまう。
彼女はその敵意を当然のように受け取ると、肩も胸もピクリとも動かさずに口を開く。
「教える必要はないわ。だって貴方と同じ学校だもの。自分で言うのはおかしいと思うけれど、あの学校の中では有名な方だと思ったのだけれど」
そこで誰かが部屋の中から出てくるのに合わせて灯がともる。それによって見えた少女の顔は非常に硬い顔つきではあったものの、それでも分かるほどに美しいものだった。
「お。お前さんが男連れ込むなんて時間が進むのって早えなぁ」
「ただ例のに襲われていたから助けただけよ。そういうのではないわ決して」
「早口になってるせいで信頼性ないわー」
同じ容姿をした少年は茶化しながら近づくと少女の肩を叩く。
「刹那のせいでこんなことになってしまって悪いな少年」
「逆に助けられた身です。謝られても困ります」
少年の腕を叩くと靴を脱ぎ家の奥へと進んでいく。
「先ほどの化け物がいなくなるまでここにいなさい。少なくとも先ほどの場所よりは安全なはずよ」
建物内である事は変わらないはずだが何か違いがあるのだろうか?
「ほらほらほら。少年も中に入りな。奴らに目を付けられた以上対策とかも知っておきたいだろ?」
「セイエイ、もうあかりは充分でしょう?君も早く」
少女と少年に誘われるように家の奥へと足を進めた。