修也の周りは化け物で危険ばかりだ3
右肩に穴が空いたような感覚と肺の中に違和感が襲う。
「運動不足で呼吸がキツイ・・・足が遅いとはいえ逃げることしか出来ないとなると自然と無駄なスタミナ消費が・・・」
公園内の建物に入り息を整えようと顔を上にあげて天井を見上げながら近くの空気を取り込んでいく。
「はぁはぁはぁはぁ・・・」
窓やドアからガリガリと削るような音が胸を裂いていく。恐怖で体が震えて座る場所がゆっくりと動くレベルだ。
学校が早く帰れと言ったのはそういうことだったのだろう。
しかしそれ以上何かがこちらに近づくことはなく只々音が鳴るだけだった。恐怖は続いたが心のどこかにこれ以上は問題ないと感じてしまい、身体が重くなり眠気が来る。
「だ、だめだ・・・音楽でも聴いて堪えないと・・・」
電源は生きているようなので、コンセントに充電器を差し込んで携帯と繋げてから音楽を流して睡魔と戦いながら周りを警戒する。
まとめた曲が一周するが相変わらずガリガリと扉が鳴っておりその音さえも何故か音楽に追加されるような感じがしてしまう。
曲が一周半したところで状況は変化した。外の音が少なくなってきたのである。
どうなっているのかの確認の為、壁を背に窓を覗くと1人の少女が赤い何かの首元に刃物を突き入れていた。
当然抵抗する為にその何かは窓やドアから離れていく。
「な、なんだ・・・・・・?」
困惑を隠せない。恐怖よりも何が起きてるのか知りたくなり、危険だとわかりながら窓からそれを覗いてしまう。
「この子たちがこんなに1つの場所に集中しているなんて・・・」
少女は建物の方に視線を向けてこちらを覗く。
「これを操る奴がいる・・・?」
「や、やべ・・・」
背後に下がるが足を踏み外し倒れてしまう。これが逆に外の少女に気づかれてしまった。
窓に鍵が掛かっているのを確認した少女は別の入り口から入り込もうとする。
それが来る前に外に出なければ殺される。そう判断し少女が離れた所で窓の鍵を開けて外へと逃げた。
汚く地面に落ちるとその少女に意識を向けずに公園を出て行こうとする。
・・・・・・が、思ったよりも動きが遅かったようで腕を掴まれる。
「ひっ・・・!」
悲鳴をあげるが掴まれた腕を離す為に空いた左手でその手を剥がす。
しかし少女の力は強く剥がすことに失敗し逆にもう一方の腕も押さえられてしまった。
「あれを集めて何をしようとしたのかしら?」
「あれ?あの赤い何かの事か?」
「あんなにあれが1つの場所に集まるなんてことないはずだもの」
まるであれらを見てきたかのような口ぶりだ。いや実際に何度か見てきたのかもしれない。
「いつも通り帰宅してたらいたんだよ!知らない!」
もう一度少女から引き離そうとするが、更に強い力で動きを封じていく。
「だからそれにしては多いの。その理由を説明するまでは帰すわけにはいかないわ」
少女に動きを封じられている中、背後から静かに呼吸を殺しながら生き残りが近づいてきていた。こちらの動きを止めるのが精一杯でそちらに意識が向いていないようだった。
暴力は振りたくないが、あんな怖いものに攻撃される方がよっぽどまずい。左足で少女の右足を蹴り飛ばしてバランスを崩すと、背負ったバックを身体の前に持ってきてその化け物へとタックルを決めてダウンを取った。
「う—あ———」
呻きを上げながら暴れ始めるがそれほどの力は持っていないのか身体を持ち上げることはなかった。
「こんっの!」
力を精一杯に入れて化け物の動きを抑えていると、そこでやっと始めて少女が化け物の頭部を踏み潰して動きを止めた。