VSキュウ
JPPとマリーは脱出用の車を盾に隠れていた。運転手は頭部を撃ち抜かれており即死だと思われる。
そこから少し離れたトンネル出入り口前で弓田屋は足止めを受けていた。
「巨大人工浮島か・・・?襲撃者と同じ顔に見えるやつにここまでやられるとは・・・」
少しでも時間を稼いでくれた白銀の為にもマリーたちを助けなければならない。
弓田屋の頭の中を走馬灯が流れる。そこに何かあったのか思わず笑みがこぼれる。
「ここまで殺戮を施してきた俺が誰かを守るために戦ってるなんてな。それのせいか。こうなったのはさ」
右足が身体から離れる。出血は続き止まる気配はない。だがそうだとしてもこの程度の傷は今まで何度も受けている。のりを塗った物をくっつけるかのように、離れた部分同士を繋ぐ。
「よし大丈夫だな・・・」
ぐるりと足を回すと襲撃者へと銃弾をばら撒きながら近づいていく。わざとJPPとは合流せずに敵を抑えることで逃亡を図りやすくするのが目的だ。
それを行動で判断したJPPはパンクしたタイヤのままの車にもう一度乗り込みマリーもその中へと押し込む。
「怖いよぉ!」
「だから逃げるんでス。タイヤが良くないですかラあまり喋らないで下さいネ。舌を噛みますヨ」
「う、うん・・・」
悲鳴のような音を立てながら車を走らせて街道へと進んでいくが、襲撃者は弓田屋を放置してそれを追う。
「行かせるか!」
足へ弾丸を撃ち込むが紙一重でそれを避けて弓田屋との距離を離す。
「邪魔・・・」
癇癪玉を弓田屋の目の前に落とすように投げると更に移動速度を上げる。
癇癪玉の爆発がチリチリと千切れた足へと当たり痛みが襲う。
「っ!」
痛み止めを打ち込み感覚を鈍くする事でそれに対応して後を追う。
イタチごっこのような追いかけを続けているところで所属不明の車が停車していた。
脱出しているのはJPPたちのみだと考えられるため十中八九敵だろう。
「マリーサン!近くの席でシートベルトを締めて下さイ!」
JPPはその車と距離を取るように追い抜こうとした時、車に衝撃が走り横向きに倒れ込んだ。
「ヤ、やはリ敵でしたネ・・・」
車から煙を上げているところからJPPが身体を乗り出すと、所属不明の車から出てきたと考えられる少女———シラヌイが頭側面に銃口を当てる。
「・・・・・・」
血が流れる頭から冷や汗がダラダラと流れる。動けばもう2度と動くことが出来なくなるような状況になってしまった。
「シラヌイ。ナイスだね」
「これでキュウを助けてくれるんだな?」
「ああ!」
車を追ってきた襲撃者が現れる。
「じゃあヒナを誘拐した君には死んでもらうよ。巨大人工浮島からも頼まれてるからね」
「温和。殺すなと言われてるだろ」
襲撃者のうちの1人———温和は背後に振り向くと、血を垂らす弓田屋を引きづりながら別の襲撃者———憤怒が現れた。
「どうせ殺されるんだ。首のひとつあればいいでしょ」
「中世じゃないんだからそんな訳ないだろ。後BOWの小娘もいるか?そっちも重要だしな」
倒れた車の横に弓田屋を投げる。虫の息で側から見ると息をしているように見えない。
「君もやり過ぎ。ま、それには何も言われてないしね」
人に対してそれというもの扱いに違和感を感じた憤怒だったが無視する。
「じゃあ巨大人工浮島に連絡するよ。目標を回収したってね」