憤怒
完全に回復しきれていなかった俺は、リミッターを回復を8割、肉体の方へ2割程度で憤怒との戦闘を行っていた。
2割で勝てるわけもなく防戦一方な状況だった。だが取り敢えずでは防戦一方に出来た以上、今までよりは強くなってるのは事実だと思う。
舐めている可能性はあるが、こちらとしては非常に嬉しいものだ。
「耐えることだけは1人前だな」
『お前に褒めてもらえるぐらい俺も優秀ってことだな・・・』
右ストレートはなんとか抑えたがそこからすかさず左膝で右腰を潰される。
その痛みと衝撃で身体が揺れたところで左膝を戻しつつみぞおちに左ストレートを入れ込む。
思考は追いつくが身体間に合わない。だが不意打ちではないので多少は和らいだものになる。
そこにヴェルバーの修復を使ってなんとか耐える。
空いた右手でボディブローを決めるが効き目が薄い。防御姿勢を取っていない俺でさえダメが減るのだから、完全認識出来てる憤怒は余裕だろう。
『ぐっ・・・・・・』
———シラギンちゃん?まだ行けはりますか———
『無論・・・!』
左足で憤怒を蹴り払い、一度距離を取ってナイフも右手に逆手で構えると、一気に距離を詰める。
勝つ必要はない。動く力を奪えば良いのだから、足にナイフを刺し込んでしまえばいい。
しかし憤怒は心底呆れたのか俺のナイフを止めるとため息を吐きぼやく。
「ヒナを見捨ててまでお前は他の女の方が大事なんだな」
その言葉にカチンときて少し強めに叫ぶ。
『お前が・・・お前らがそれを言うのか!JPPに誘拐された後———』
「結果どうなった。今俺たちはヒナが狙われないようにするために殲滅をせざるを得ない状況になった」
小指と薬指で俺のナイフを打ち上げる。
「それにあんな場所でJPPと会う必要もなかった。これだけの施設があるんだ。その内のどれかを選べば右目や身体全身の傷を受けることもなかった」
空いた右手で打ち上がったナイフを取ると、俺を蹴り飛ばしトンネルの壁に身体を埋め込ませる。
『がっ!』
「誰か知らんが小娘やこの施設、そして拷問をしたガキ共も死ぬことはなかった。お前がやった事が全てこの状況を生み出したんだ。つまりどういう意味かわかるか?」
全部俺が引き起こした・・・と言いたいようだ。
「そしてお前はヒナ以外を最優先事項に入れた。もうお前は必要ない。後は日南休としてではなくただのガキとして1人悲しく生きるんだな」
奪われたナイフが左胸を貫く。血の気が引いていく。修復する場所が多すぎて間に合わない。ヴェルバー・・・・・・ごめん。
「最後の最後までヒナを最優先に入れなかったな。またやり直しだな」
胸がカエルの解剖実習のように開かれると、内臓がドロドロと流れ落ちて、俺はうつ伏せに倒れ込んだ。