娯楽が少ない
寝ていると近くの部屋から泣き声が聞こえた。声のトーンからしてマリーだろう。
「もうあきたあ!」
ヴェルバーと顔を合わせると、どうしよう?とこちらに助けてと視線を飛ばす。
どうしろと視線を向けられても俺には何も・・・。ちょっとJPPに相談してみるか。飽きがこないように色々なものを買いに行きたいと言ってみるか。
だが外へ出させてもらえるだろうか。施設が施設だし。
「シラギンちゃんなんか対策もーついた?」
『そうですね・・・正直どうすればいいのか思い浮かびはするんですが・・・」
俺が濁す事を、言いたいことを弓田屋さんは汲み取ったのかそれとも元からそう思っていたのか、口を開く。
「場所が場所だからな。入るのは簡単でも出るのは難しいだろうな」
「んにゃぴ。まあジャップに聞いてみよや。あん人ならその辺ウチら一兵卒よりは詳しいはずや」
『それもそうですね。聞きに行ってきます。その間マリーのこと頼みます』
「外に出て行くならともかく、JPPの所だろ?頼むって距離ではないとこちらは考える」
「シラギンちゃん、緊張すると語彙力なくなるし、ウチも同行するで」
『ぐっ・・・事実をぶつけられるのは痛いです』
お腹がチクチクする。ストレスかな?
「それがヴェルバーに言われる理由なんじゃないか?」
『追い打ちしないで下さい、弓田屋さん』
キリキリと痛むお腹を抑えつつ俺とヴェルバーはJPPにかくかくしかじかと内容を話すと、ふむふむと頷き、提案が提示された。
「食糧補給用の車がありまス。それに紛れるというかそれ共に行動をすれば可能だと思いますヨ」
『食糧補給は基地内でやっていなかったんですね』
はははとばつの悪そうな顔で頭を掻きながら笑う。
「試してはいるのですガ、なかなカ・・・という形でしテ、量が足りないんですねこれガ」
メニューを減らして全てを携帯食のようにすればいけるのだろう。しかしここの料理はあまり言いたくはないが、値段妥当な味ではなく、値段以上の味なのだ。つまりは美味しいと思ってしまう。それ故にこんな閉鎖空間で且つ娯楽もない場所で士気が下がらないわけだ。それはすごいと思う。
「ここは娯楽が著しく少なイ。普通なら暴動が起きてもおかしくないと考えていまス。だかラその少ない娯楽である食事には何倍も気を使っているつもりでス」
『そんな大事な行動時に同行してもよろしいのでしょうか?』
「他に車を出すわけにもいきませン。多くのものを最低限の労力でやらないト。マリーメイアさんが全てですからネ」
俺の時のように道具にしないのであればいいか。
「もう一度言いまス。ヴェルバーベルベッド、および白銀タケル。両名は補給班と共に娯楽品を買ってくるこト。娯楽品の指定はしませン。あなた方の好きなものを今回は買ってきてくださイ」
「『了解』」
部屋を出ようとすると、JPPにちょっと待ってくださイと止められる。何だろうか?棚からなにかのカードを取るとそれをヴェルバーに投げつける。それを華麗に取ったヴェルバーは尋ねる。
「資金もなしに買い物は出来ませン。上限なしに好きに使ってくださイ」
そういやそうだった。食糧班のやつを使ってやると思ってたから、考えていなかった。
『ありがとうございますJPP』
「くれぐれもお気をつけテ」
失礼しますとJPPの部屋を後にした俺とヴェルバーは裏口の食糧班の車にいつ出発かも分からないので少し走る程度に向かった。