ベビーシッター
『ベ、ベビーシッターですか?』
「えエ。我々には子供のお世話は難しク、困っているんでス。出来ますカ?」
『プロではないのでどこまで出来るか分かりませんがやってみます』
「お願いしますネ。白銀サン」
というわけで俺の仕事はとある少女のお世話係になった。
「シラギンちゃーん」
ヴェルバーもこの係になったようだ。最初に顔合わせが出来ていた上話のしやすい彼女と一緒になれたのは大きい。
『ヴェルバー。こういうのは得意なんですか?』
「初めてや。そゆことで2人で力を合わせよーやー」
『そうですね。それでその子供のことですが、どういう子なんですか?』
「ウチもついさっき係になったばかりぃ、見たことあるのは1度2度ちゅぅレベルやけどそれでもええなら」
『お願いします』
「ひと言でいうなら少女や。しかしただの少女をこんな所に押し込めておくのはぁ、変やろ」
『たしかに・・・』
「まあ見てみんとその辺は分からんなぁ」
俺とヴェルバーは目的の部屋に着くと数人の男が子供を追いかけていた。
男たちは全員が厳つい体型をしていたので、犯罪臭が酷かった。
「何しちょん?ホル」
「ん?ヴェルに・・・・・・新人君か?」
『白銀タケルって言います』
「シラギン、あの厳ついのがホル———」
「名前ぐらい自分で名乗らせろ。ん、こほん」
「さっさと言いや。打ち切るで」
「タイミングってのがあるんだよ。弓田屋儀式だよろしく頼む」
弓田屋と名乗る男が手を差し出す。敵に、敵の手下にそんなことをしていいのか?いや、疑われないようにするためだ。しっかりと挨拶はしておこう。ヴェルバーにいい顔をしてこの人にしないのは変だ。
『よろしくお願いします。弓田屋さん』
「ねえねえ、このひとだあれ?」
子供が弓田屋の後ろに張り付きながらこちらを見ていた。これが目的の子供だろう。
『白銀タケルって言います。君のお名前は?』
「まりー!」
子供は発表するように右手を上げて自分の名を名乗った。
「偉いぞちゃんと挨拶も出来たし言葉も返せてる。ご褒美だ」
「あめー!あめー!」
飴を取ろうと手を伸ばしたところで弓田屋は腕を上げてマリーと飴の距離を離す。
「あめっ!あめっ!んー!」
「ほら頑張れあと少しだ。
しかしマリーが届きそうな所でまた腕を上げるので取ることが出来ず、少し可哀想になってきた。
「もうええやろ?ホル。意地悪はようへんで」
「反応が面白いんだから———がっ!」
正攻法では取れないと判断したのか、マリーは弓田屋の上げていない左手に噛み付いた。
「うーう!」
「そのうーって言うのはやめろ!飴あげるから今度は嘘ではない!」
「う?」
「本当のホント。嘘もつくし逃げも隠れもするが、大事な時はつかないのが自分だからな」
彼らの仲の良いところを見ていると、俺が必要なのかと思ってしまう。
「シラギンちゃん。こんな場所だけどこれから一緒に頑張りましょうや」
自然と口が緩む。久し振りに他人の優しい世界を見た気がする。
だがそうだとしても目的はあくまでJPPをどうにかすることだ。この子のことなんてここの人達のことなんて関係ない。
それでも今はこの状況を楽しもう。きっとそっちの方がシラヌイたちも・・・・・・な。