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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
日南休直史の周りは絶望ばかりだ
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日南休直史の周りは問題ばかりだ

 率直に言わせてもらう。俺、日南休ひなやすみ直史なおふみの周りは問題ばかりである。


 何でこういうことを言うのかというと、俺はある精神病を患っている。それはちょっとしたことで動けなくなるもので、例えば長距離走などで本気で走ると、息が上がりもう駄目だおしまいだと心は思うが、まだ走ることが出来る。しかし、俺の場合ある一線を越えると、心はまだ走ることが出来きても、体が勝手に止まる。

 そんな身体を俺は絶望病と読んでいる。厨二っぽいがそう呼ばないと人に説明しづらいからな。あと稀な精神病のため、名前がないという状況が俺が名前を付ける理由にもなっている。

 こんな病を患って10年。今ではどれくらいで動けなくなるか大体察しが付くようになった。

「キュウちゃん、誰に話してるの?まさか、幽霊かな?」

「いいや。誰とも話してないけど、そんな顔してたか?」

「してたわけじゃないけど……まっ、いいや。朝ご飯出来たから早くね」


 少女の言葉に俺はおうと頷き、窓から出て行く。おい窓かよ。この家には扉ないのかよと思われただろうが、勿論ある。なかったら家としての機能を果たしていない。

 彼女の名前は日南林ひなやすみ……何だったっけ?いつもヒナとしか呼んでないし。まあ、気にしない。彼女に聞けば分かることだしな。相手頼りかよ、最低だな俺。

 ヒナと俺は物心つく前からの知り合い、つまりは幼なじみというやつだが、俺の両親は仕事で忙しく殆ど家にいない。そのため、基本寝るのは自分の家だが、生活圏はヒナの家である。だから、幼なじみというより姉弟のような関係だ。へ?兄妹じゃあなくてか?そんなの勿論、判断力、精神力、応用力、容姿、全てを揃えているからだ。ほら、漫画であるじゃん。兄貴に勝てる弟なんかいないってやつ。まさにそれ。俺は全てにおいて、ヒナに勝てない。

 

 ここまでで気づいた人もいる……というか誰でも分かると思うが、名字が俺とヒナは同じである。それはただの偶然である。ただの偶然である。大事なことなので2回言いました……まあこれのおかげで、違和感なく育って来られた訳だ。小さいうちから名前が違う人と暮らしてたら、自分が何者か分からなくなることがあるかもしれないな。

 さてといい加減ヒナのところに行かないと。あいつ、キレたら首がへし折れるだけじゃなく、内臓が飛び出るおまけ付きの力だし。ああ、恐い恐い。最近のアニメだったら規制で俺の顔が黒くなる。人間やめれば助かるかな?

 俺もヒナと同じように、窓からヒナの家に入る。一番最初というか、窓から入ろうと思ったら、ヒナの部屋を通らないと普通に降りていった方が速い。

 ヒナの部屋はっと……話している余裕なんて無かった。急いで降りないと本当に規制レベルの物が出てしまう。説明は今度にして、今は2階の共有スペースに降りよう。つまり俺の部屋は3階と言うことだ。危なっかしいな。落ちたら人生ログアウトになっちまう。

 タッタッタと階段を降り、奥と手前の2つの内の後者の部屋が共有スペースで、奥は……何かがあるが分からん。まあ、今は関係ないな。

 共有スペースの扉を開けた瞬間、ヒナが作ったのであろう料理の匂いが漂ってくる。うーむ、匂いだけで分かるぞ……これは、トーストとスクランブルエッグ、ウインナーという日本人が思う洋食三点セットだ。びゃあああ!美味そうだ。この予想は合っているのだろうか?楽しみ楽しみ。

 テーブル見た瞬間、そこにあったのは……予想通りだああ!うむっこれはこれは、トーストからはバターを塗りつけた後に出る光沢が出ている。

「キュウちゃん遅い!もう秋なんだから、せっかくの朝食が冷めちゃうでしょうが」

 横からくるヒナの腕が俺の首に巻きつき締め付ける。痛い痛い!タップタップサランラップ!ガチで首が折れるから!だが、それらを伝える手段がない。いやあ、首締められたら息できないし。だから、なんとかしようとヒナの腕をペチペチとたたく。頼む気づいてくれえ!

「ヒ、ヒナ外して……クフッ」

「キュウちゃん!?どどどどどどうしよう力尽きちゃったよ……放せば大丈夫かな?」

薄れ行く意識の中、ヒナが手を放してくれた。身体全体に、大量の空気が入って行く気がする。スーハースーハー……、動けなくなると思ったぜ。首を絞めて気絶させるなんてどこぞのおじちゃんかよ。

「いくらなんでも朝からはないなヒナ」

「あっ、意識戻ったんだ。よかった~白目向いてたから救急車呼ぶとこだったよ」

「お前が言うなし。誰のせいでなってたと思う?ヒナ。今倒れたら面倒いだろ」

 キュウちゃんが悪いんだあと、子供のように喚くヒナ。ああ、うっせえうっせえ。俺も子供のように手を耳に当て聞こえないようにすると、それが気にくわなかったのか、押し倒してきた。逆だったら、通報されても文句は言えない。理不尽だ。そういや、押し倒されたのに何処も痛くないな。どっかで聞いた話によれば、人は包丁などの刃物で刺されても刺された所を見ないと痛みを感じないらしい。もちろん、衝撃は受けるらしいが。

「ああ、ごめんごめん。ヒナさんや、学校遅れるのはまずいだろ。俺も朝飯にしたいし、早うどけ」

「キュウちゃんがすぐにごめんなさいすれば、こんな事せず無駄な時間使わなかったんだよ。分かってる?」

「分かってる分かってるって」

「キュウちゃんの分かってるは信用できないよ」

「信用されていないのか……まあいいや、飯にしようぜヒナ」

 うん、と笑顔で言う姿はさすが、ヒナさんや。判断力、精神力、応用力、容姿。全てを揃えているだけのことはある。

 その後、俺とヒナはスパパパと朝食を食べ、出掛ける準備をする。俺はヒナの家に前もって置いているので、ヒナの準備中に皿を洗い、片付ける。

 ヒナはすぐ近くで着替えているのか、服の擦れる音が聞こえる。何でだろうな。皿を洗う時って結構な音で回りの音聞こえないのになぁ。ゼロ距離で着替えてないことを望む。リア充扱いされて、クレイモアでUWAAなことになるかも。せめて、足首を挫く程度にして欲しい。

 ヨシ、皿洗いは終わった。後はヒナの準備が終わるだけだが、どうだろうか。まだ着替えてなくて、ヒナには首を絞められ、第三者にはラッキースケベとか言われるのはいやだなぁ。あっちから話し掛けてもらうそれまで待つ。これより安心安全な方法はないだろう。

「キュウちゃん~終わったよ~」

「そうか。じゃあどっちが今日先に出るか決めようぜ?」

 絶望病である俺は、学校では一番有名なヒナと外で共に行動すると、それを妬む奴らにしばかれる可能性があり、それで発病するのはヒナに迷惑がかかる。俺自身の安全の為、ヒナのストレスを貯めない為、外では基本一緒に行動しない。それが今俺が出来る最大の手段である。他にも手段はあるけどな。

 じゃんぽんけん!……負けました。今日も俺が後に出るのか。それにしても俺じゃんけん弱いな。じゃんけん勝ったら先に行く作戦は二年前から始めたんだが、勝った回数二十位しかねえぞ。

「戸締まりはちゃんとしてね、キュウちゃん」

「へいへい、了解ですぜヒナさんや。怪我すんなよ」

「それを言ったら、キュウちゃんの方が怪我に気を付けなきゃね。キュウちゃん病気療養中なんだから」

 ヒナの忠告は大体当たるから、守らないと。大怪我で入院する羽目になる。ほんとは入院していた方が安全なんだろうけどさ、まず金ないし。

 ヒナが出かけてから数分経ったし、俺も出るか。遠くにはヒナがいるだろうが、ストーカーっていう距離でもないから問題ないだろ。

 俺はヒナの家の戸締まりを確認した後、俺の家も確認し、退屈な学校に向かう。ああ、面倒いなあ。




 


 


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