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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第三部『ジェノサイド・リアリティーⅡ リロード・オブ・ジ・エクスプローラー』

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208/223

208.操りし者

 俺は即座に腕を掴んでひね上げる。

 一回転してジャッパンと、湯船に叩きつけられた、京華の手にはナイフが握られていた。


「きゃぁぁぁあ!」


 女子たちの悲鳴が上がる。


「真城くん、タオルタオル!」


 襲撃に対処したせいで、俺の腰に巻いたタオルが落ちたらしい。

 慌てて、和葉が隠してくれる。


「今さら俺がこんなもので殺られるわけもないが、お前らの反応も、のんきすぎるだろ!」

「この裏切りバカ女が、また裏切っただけデスよね」


 俺に叩き伏せられた京華は、気絶している。

 ナイフは、手に持っていたタオルに隠してあったのだろう。


 道理で、肌を隠せないはずだ。

 まあ、それはともかく。


「いや、裏切りとは違う。こいつは、まったく信用できない女だが、そこまでアホではない」


 ここで俺を裏切って、仮に刺し殺せたとして、この環境で生きて出られるわけもない。

 京華は自分の安全だけは最優先の女で、その点に関しては信じられる。


 白目を剥いている京華をとりあえずふんじばっておいて考える。

 京華の意思ではないとすると、これは何かに操られたのか?


 そういえば、さっきから妙な気配があった。

 あの時に精神操作系の攻撃があったのか。


 周りの他の女どもは平気なので、ランクが低いやつしかかからないのかもしれない。

 京華は、基本戦闘しないからな。


「ふむ……」


 今から考えると、さっきからおかしなことはあった。

 単独行動の猫科動物であるサーベルタイガーが、集団でニャルを追っていた。


 敵意むき出しのマンモスの動きもおかしかったが、操られていたと考えれば腑に落ちる。

 やれやれ、まだ休ませてくれんか。


 予想通り、外から叫び声が聞こえてきた。


「ちょっと、行ってくる」

「待って、真城くん。服、服!」


 ああ、そりゃそうだな。

 服はいるけども。


 そんな話ばっかりしているお前らは、ほんとにのんきすぎだろ。

 すっかり非常事態が日常になってしまったせいか。


「やっぱり精神操作系か」


 外に出ると、兵士達がお互いに相争っていた。

 ただ操られると知能が低下し動きが緩慢になるらしく、殺さない程度に気絶して進むのに全く問題はなかった。


 精神操作系は厄介と思ったが、人を傀儡にしてもそう上手く事が運ばないようだった。

 状況から判断するに、この数を全部コントロールできなくて、おそらく簡単な命令しかきかせられないのだろう。


「おい、リリィナ。お前もかよ」


 リリィナは、ぼんやりとした顔で突っ立ってる。

 瞳が色を失って、まるでガラス玉のようだ。


「……」

「おい、なんとか言えよ。操られてるのか、操られてないのかどっちだ?」


「お風呂入らなきゃ……」


 リリィナは、いきなりその場で、ゴソゴソと服を脱ぎ始めた。

 なにがお風呂だよ。


 ポイポイ服を脱ぎ散らかすと、ブラジャーをストンと落としてトロンとした瞳で俺を見つめる。


「何のつもりだ」


 セクシーなヒモパンいっちょになった挙句、タオルの中に自分の接近専用の武器の超振動チェーンを挟み込んで、ギュイーンと起動させてズタズタにした。


「意外に派手な下着だなとか言ってる場合じゃねえか、何がしたいのか知らんがやっぱり操られてるなコイツ」


 ちょっと手荒い手段だが、仕方がない。

 俺はリリィナの武器を奪い取ると、彼女の頬を軽く叩いて見る。


「えっ、あ……」


 リリィナのぼんやりとした瞳に、理性の光が戻る。


「なんだ、軽い衝撃で戻るのか」


 こんなにすぐ催眠術が解けるなら、京香をふんじばる必要はなかったか。

 まあ、京香のことなんざどうでもいいが。


「なんで私脱いでるのぉ! きゃぁぁぁあ!」

「知らねえよ」


 あらわになった胸元を、脱いだ服で押さえて、真っ赤になるリリィナ。


「ワタル、私に何したのぉぉ!」

「俺が何かしたわけじゃねえよ。敵の精神操作系の攻撃だ、お前は誰かに操られてたんだよ」


「そうなの!? ちょっと服を着るから、向こう向いてて」

「嫌だ」


「はぁ?」

「まだお前が操られてる可能性もある。目を離して、襲われても困る」


「いや、私は正気よ……」

「ふん、信用ならないな。操られてるランクの低いやつが悪いから……って、冗談だ睨むな」


 さっさと後ろを向く。

 気配で襲ってきたらわかるから、着替えを凝視する必要はない。


 しかし、ふざけてる場合でもないか。

 この女どもの一連の行動は、何なのだ。


 色仕掛けをしつつ、俺を倒せと命じられているのだろうか。

 そんなことを考えていると、今度はニャルがぼんやりした顔で、忍刀を振りかぶってやってきたのがみえた。


「つか、お前もかよ……」

「真城、コロス!」


 なんかこいつは普段とあんまりかわらない、操られても間抜けだ。

 いい加減面倒になってきた俺は、さっさと終わらせようと忍刀を叩き落として、ニャルの首根っこを捕まえた。


 すると、ニュルッと服からニャルの中身が出てきた。


「なっ!」


 これには、俺もちょっと驚く。

 いったい何の忍法だよ?


 あ、そうか。

 しまった、こいつが忍者なのをすっかり忘れてた。


 しかし、まあ。

 服抜けの術で逃げようとしても、相手がニャルなので俺は即座に制圧できた。


「いい加減正気に戻りやがれ!」


 俺はパチンと、ニャルの頬を叩く。


「な、なんでぶつにゃー!」

「正気に戻してやったんだぞ」


「ぎゃー、なんで裸なのにゃー! こここ、このケダモノ! ニャルになにした!」

「うるせえよ! もうそのパターンは聞き飽きた」


 ニャルの裸なんか、あんまり見たくもねえよ。

 まったくやれやれだ。


 なにせ数が数なので、操られたやつらを正気に戻すのに、だいぶ苦労した。

 俺の精神を疲れさせる攻撃としては、上出来といったところだろう。


「ワタルくんどうするの?」


 一通り騒ぎを鎮めた後、久美子が俺に聞いてくる。


「こうなったら、元凶を叩くしかないだろ。いつまでも、こんなくだらんコメディーに付き合ってられん。敵の気配は近くに感じる……久美子もわかるか?」

「私も少し感じる」


 俺達は、長いダンジョンぐらしで殺気のようなものが感じられるようになっていた。

 この階層のメインストリートである、熱帯雨林のジャングルのどこかに、敵は潜んでいる。


「こんな状況ではおちおち寝てもいられないから、敵を叩きに行くぞ!」


 こうして俺達は、睡眠も取れず、疲弊した体力・精神力をろくに回復もできないまま、ジャングルの戦いへと引きずり込まれることとなったのだった。

次回3/4(日)、更新予定です。

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