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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第三部『ジェノサイド・リアリティーⅡ リロード・オブ・ジ・エクスプローラー』

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207/223

207.過去の階層

 宇宙生物との戦いに疲れ、休憩を求めて地下十八階層に降りてきた俺達を出迎えたのはジャングルだった。

 ダンジョンの中なのに日差しが強く、うだるような暑さだ。


 まるで南国のジャングルように、熱帯雨林が生い茂っている。

 外と違うところは、強い日差しが太陽ではなく壁から降り注いでいることか。


 メキメキィィと音を立てて木が倒れたと思ったら、なんか巨大な象が出てきた。

 のんびり日光浴と洒落込むわけにもいかなそうだな。


「しかし、でかい象だな。こういうデカブツを倒すのは面倒なんだが」


 リリィナが驚いた声を出した。


「これって、マンモスでしょう?」


 そうだろうな。

 地下十八階層の敵に、マンモスがいた。


「正確には、インペリアルマンモスだったか。お前もゲームの時の知識あるだろ、なんで驚いてるんだよ」


 ちなみに単純な攻撃しかしてこない。

 この階層は、雑魚しかいないから下りてきたってこともある。


「本当に、こんな貴重な生物がいるなんて信じられない」


 リリィナは、すでに地球では絶滅してしまった古代の生物を見て、目を輝かせている。


「まさか、捕獲しようっていうんじゃないだろうな」

「出来ればしたいぐらいね。考古学的にも、生物学的にも貴重な財産だわ」


 ふーん。

 さっきまで打ちのめされていたのに、急に元気になりやがって。


 こういう古い生き物が好きとは知らなかった。


「だが、今は敵だ。とりあえず入口付近のを倒さないことには、休むこともできんぞ」


 ただの象なら可愛いものだが、モンスターとして配置されているせいなのか、こちらに敵意むき出しで威嚇してくる。


「しょうがないわね。みんなお願い」


 リリィナは配下の兵士達に攻撃命令を出す。

 だが、銃撃や爆弾を食らわせただけで、現代の象よりも遥かに大きな生物が倒せるわけもなかった。


「まったく、楽させてはくれんな」


 俺はこっちに向かって突進してくるマンモスの頭を叩き潰す。

 ドウッと地響きを立てて、巨体が崩れ落ちる。


 ドラゴンを倒すことを思えば、この程度の敵はなんてことはない。


「ニャー!」


 ニャルが叫びながら、こっちに逃げてきた。

 何かと思えば、ニャルを後ろから追っかけてるのは、サーベルタイガーの群れだった。


「ハハハ、同じ猫科動物に追いかけられてんの」

「笑ってる場合かニャー!」


 ニャルはニャルなりに、活躍しようとして前に出たようだが、敵の数が多すぎたようだ。

 まあこいつが、敵を集めてくれたおかげで狩りやすい。


 いちいち、しらみつぶしにするのも面倒だったところだからな。

 スタミナはポーションで回復できるにしても、やはり精神的な疲労までは癒せない。


「さっさと終わりにする」


 突進してくるサーベルタイガー達を、俺はなで斬りにしていった。

 本当に大した敵ではない。


 同じ異種生物といっても、キマイラにも劣る。

 だが、今はそれがありがたい。


 かつての地球にいた絶滅動物が、この階層の敵だ。

 ウッサーじゃないが、もしかしたらこいつらの肉は美味いかもしれんな。


 白亜紀のジャングルのようなダンジョンに出没する、過去の巨大生物達を一掃すると、俺達はようやく休憩できる場所を確保できた。

 地下水が溢れ出しているのか、フロアに水が溜まって池になっている場所がいくつもある。


 和葉が調べて、「水も綺麗だし、温めればお風呂ができそうよ」と教えてくれた。


「風呂か、それは助かる。じゃあ、ようやくここいらで休憩だ」


 俺ですら、もうキツいのだ。

 リリィナ達などは、もうフラフラに床に座り込んでいる。


 次元転移装置の「ゾロアリング」を起動を阻止しなければならないと、焦る気持ちはあるが、この戦いももう大詰めだ。

 食える時に食い、休める時に休んでおかないと、張りつめた緊張の糸が切れてしまう。


 焚き火でサーベルタイガーの肉が焼けるのを見ながら、俺はゆっくりと呼吸を整えた。

 少し緩めるが、まだ警戒の糸は解かない。


「真城くん、焼けたわよ」

「ああ、悪いな」


 和葉が焼いてくれた、焼肉を食べる。

 ホッと寝込む時、飯を食らう時、俺が襲撃するならばこういう瞬間を狙う。


 食いながらも警戒は怠らないことだ。

 近くのモンスターは全部倒したはずなのに、ジャングルの向こうから、睨めつけるような気配を感じる。


「やれやれ、休ませてくれんか」


 おそらく気のせいではない。

 警戒しながら飯を食い、休むしかなさそうだ。


 俺が飯を食っている隣には、マンモスの骨が積み上がっている。


「ハグハグモグモグ」


 食事をしてるとは思えないような音を立てて、ウッサーとヴイーヴルがマンモスの肉を喰らっている。

 食ってるというより吸ってる感じに近い。


「これ美味いデス!」

「ふむ、いける」


 どんだけ食うんだよ。

 まったく、あいつらを見てると気が抜けてしまう。


 ただ二人も、頂点を極めた武闘家だ。

 こうやって飯を喰らっても、その背中に隙はない。


 まあ、確かに美味いな。

 モンスターの肉なんかよりサーベルタイガーはよっぽど美味い。


「ちょっと大味だが、ちゃんと肉の味だ。いけるもんだな」

「たくさん食べてね」


 和葉の調理が上手いだけかもしれないけどな。

 俺達は、たらふく食べて体力と気力を回復させた。


「さて、食事の後は風呂か」


 用意してもらった風呂に、俺は大人しく入る。

 そもそも、疲れているのは肉体よりも精神なのだ。


 温かい風呂に入るというのは、贅沢であるだけでなく精神の疲労にものすごく効果がある。

 わりと、馬鹿にならないのだ。


「今は少しでも、回復しとかなきゃならないからな」


 俺はダンジョンの環境だとむしろ落ち着ける身体になっていた。

 狭めの壁に囲まれて、ゆっくり風呂に入れるとか最高の環境だった。


 少し瞑想しようなんて思って、目をつぶってリラックスしすぎて、うつらうつらしそうになったとき。


「だから、なんでだよ……」


 女湯は、ちゃんと用意してあっただろ。


「寝てなかったんですか」


 和葉がそう言う。


「気配ですぐにわかる」

「旦那様を不意打ちするのはむりデスねー」


 和葉やウッサーだけではなく。

 久美子に、ヴイーヴルに、アリアドネに……。


 佐敷絵菜さしきえな真藤愛彩まとうあや立花澪たちばなみおの三人と。

 木崎晶きざきあきらまでか。


 みんなタオルを巻いているからいいようなものの。

 ……というか、ここまできてなんで瀬木がいないのかが気になる。


 まあ、今は疲れるわけにはいかないので、瀬木はいないほうがいいんだろうが。


「たく」


 俺が悪態ついていると、久美子が笑う。


「ふふ、ここのお風呂広いんだから別にいいでしょ」


 最初から、このつもりだったのか。

 俺専用の風呂を作ったと言われたときから、注意すべきだったか。


「まあいい。疲れてるんだから、アホなことはするなよ」

「私達も、それはさすがにね」


 和葉がそういって苦笑する。

 まあ和葉は、ずっと立ち働いてくれていたから疲れてるだろう。


 戦闘も結構こなしてたし、後方支援担当も楽ではない。

 和葉だけだったら別に許すつもりだったんだが、みんな来すぎだろ。


 あれ、黛京華まゆずみきょうかまでいる。

 なんでお前までいるんだよ。


 てか、なんで京華は素っ裸で仁王立ちになってんだ?

 手にタオルを持ってるのに、隠そうともしない。


「おい、お前何のつもりだ! せめて前を隠せよ」

「ふふん、真城くん……」


 仁村流砂にむらりゅうさを便利につなぎとめておくために、俺に近づきすぎたらまずいんじゃないのか。

 そう思ったのもつかの間、京華は妖艶な笑みを浮かべると、俺に覆いかぶさってきたのだった。

次回2/25(日)、更新予定です。

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