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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第三部『ジェノサイド・リアリティーⅡ リロード・オブ・ジ・エクスプローラー』

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205/223

205.地下十七階層

「ここは面倒だからしまっちゃおうか」


 和葉がそう言うと、通路を壁の罠で封鎖してしまった。

 十七階層の邪魔な足止めが続いているのだが、敵は完全に通路を塞げないというルールに縛られているっぽいのに、和葉は平然と通路を潰す。


 この違いは大きく、俺達は宇宙忍者が潜む通路をスイスイと渡っていく。


「和葉のスキルは、もしかすると一番のチートかもしれんな」


 料理人スキルを極めると、最強になるとか笑えてくる。

 ダンジョンそのものを料理するってことなのか。


「戦闘力はそこまで高くないけどね」


 そこまでというほどには、戦闘力も低くないのが恐ろしいわけだが。

 まあ、スキルは使いようということなのだろう。


 ジェノサイド・リアリティーは様々な遊びの部分がありつつも、結局のところ古いゲームなので、殴り合いの戦闘に終始していた。

 しかし、本来のゲームデザインとしては、こういうように色んなベクトルで各種の職業を活躍させたかったのかもしれない。


「……ゲームデザインか。この世界をデザインしたロードナイトが、本当にこの災厄を起こしたラスボスなのか?」


 何度考えても、この災厄の黒幕が天才ゲームデザイナーであり、人族の祭祀王でもあったロードナイトの人物像とかぶらない。

 祭祀王は預言者であり、狂騒神(ロアリング・カオス)創聖破綻ジェノサイド・リアリティーを引き起こす事も知っていた。


 このような形でゲームが現実化するとゲームマスターがあらかじめわかっていたなら、もっと自分の都合がいいデザインにもできたはずだ。

 たとえば、通路をバグで完全に塞いでクリア不可能にする。


 迷宮の深度を千階にしてクリアを阻止するなど、素人の俺でもすぐ考えつく。

 これは、本人にとっても不慮の事態だったのか?


 しかし、ジェノサイド・リアリティーは、Ⅱで次元転移装置「ゾロアリング」という無茶苦茶な設定が加わって、想定外の強大なモンスターが続々と出現して。

 それでもなお、このダンジョンはクリア可能な公平さをもっている。


 俺のつぶやきに、隣を歩いていたロードナイトの娘であるリリィナは、「父の考えは、わからないわ……」と答えただけだ。

 俺だって、自分の親父の考えがわかるかといえば、わかったもんじゃないけどさ。


 地球の大国アメリカから派遣されたリリィナ達からすれば、次元転移装置の奪取には、国家の威信と凄まじい利権がかかっている。

 実はリリィナ達とロードナイトがグルであるというシナリオまで俺は疑ってるのだが、泣きそうな顔をしているリリィナの落胆に、嘘はないような気がした。


 用心深い俺は、たとえ相手が女だからって無条件に信じたりはしない。

 俺が信じるのは、俺の判断だけだ。


「まあ、いい。ロードナイト本人を、とっ捕まえて聞けばいいだけだろ」


 ジェノサイド・リアリティーのルールは簡単。

 誰よりも強くなることだ。


 すべての敵を倒した先に、答えはある。

 強い敵との戦いにこそ喜びを感じる俺にとって、敵が強大であればあるほど好都合というものだ。


 唸り声を上げて迫りくる奇っ怪な宇宙忍者達を、俺は反射的に斬り捨てて進む。

 しばらく行くとようやく種切れなのか、敵の数が少なくなってきた。


 もうそろそろ、本来のボスの部屋だと思ったら、突然ボスの部屋の扉が開いた。


「なんだ?」


 そう思う間もなく、地下十七階層のボスであるライオン頭の奇獣の王が飛び出てきた。

 何も考えずに反射的に、袈裟斬りに切り捨てる。


 なんだ、殺せてしまったのか。

 元々の敵が強いので、通常のボスがかなり弱く感じる。


「ガッ……」


 そんな呻き声をあげて、階層ボスはあっけなく死んだ。

 階層ボスが死ぬと、その場には宝箱が出現する。


 金貨やアイテムと一緒に、下の階層に続く扉のカギが入っている。


「奇獣の鍵が出たわ」


 すぐさま久美子が確認して言う。

 つまり、ボスは本当に死んだってことだ。


「ボスに、宇宙生物どものボスが寄生してるんじゃなかったのか?」


 これまでのパターンからみて、ボスが素体として強化されるなり、中から化物が飛び出してくるなりすると思ったのだが。

 そう思った瞬間、奇怪な声が響いた。


(我はマザーオーティラス。全てのオーティラスの母なり)


「こいつ……」


 これは、声ではない……直接、俺たちの頭の中に呼びかけてくる。

 テレパシーってやつか。


(お前が、真城ワタルか)


「そうだ。この中か」


 空いている扉からボスの部屋の中に入った途端に、俺に向かってまばゆい光線が飛んできた。

 からくも、かわす。


(迷宮の洞主と、我らは契約した。お前を倒せば、この世はオーティラスのものとなる!)


 マザー・オーティラスと名乗るボスは、昆虫じみたところはあるがその姿は人型だった。

 最終形態ってやつか。


 左手には電子銃のようなものを付けて、右手には剣のようなものを付けている。

 さっきの光線は、そこから出したのか。


「おもしれえ、やってみろよ!」


(我らこそが、より強き種であることを見せてやろう)


 よく見れば、連中は一匹ではなかった。

 ボスの部屋にの壁からびっしりと張り付いていた、幼虫や成虫のオーティラスがうじゃうじゃ包囲してくる。


「他のは私達がやるから、ワタルは本体を!」


 ありがたい申し出だ。


「雑魚は任せるぞ!」


 一番強そうな敵とやれる。

 しかも、相手は剣を持つ手練だ。


 俺は、喜びに打ち震えながら打ち掛かっていく。


(あたらん)


「ほぉ!」


 俺は思わず感心した。

 どういう仕掛けか、敵は俺の刀を弾くと敵はふわりと空中に飛び上がったからだ。


 さすがは、宇宙忍者ってところだな。

 空が飛べるのであれば、その戦闘も多彩になる。


 俺達は幾度も剣を打ち据え合い、鍔迫り合いを続けた。

 テレパシーの効果なのか。


 戦っている最中、オーティラスという生物のこれまでの記憶が俺の中に流れ込んでくる。


 星辰の彼方より来た彼らは、惑星を転々として喰いつぶして勢力を拡大していったが、強すぎ貪欲すぎる彼らは、ついに喰うものを失って衰退したらしい。

 次元転移装置「ゾロアリング」で呼び出されたのは、彼らにとっても渡りに船だったようだ。


 新たに喰らうものがたくさんある惑星にたどり着けたのだから。

 また、この暗く湿った迷宮は彼らが元から住処としていた環境にも似ているらしく、いい場所が見つかったと喜んでいるようだ。


「だが、喜ぶのは早いな!」


 ここに、お前らよりももっと強き者がいるってことを教えてやる。


(真城ワタル。お前を殺せば、我らの繁栄は約束される!)


 キューンと音を立てて、マザーオーティラスの右手に光が集まりだした。

 熱光線がくると思い、俺は電撃の魔法を詠唱し、敵と同じように左手にマナを集める。


最終アーク 放散フー 電光ディン 飛翔フォイ


 マザーオーティラスが放ったのと、俺の魔法が発動したのは同時。

 ゼロ距離でぶつかり合う電撃!


 目をつぶってすらその強すぎる輝きを止めることができず、視界が真っ白に染まった。


(ウワアアア)


 電撃同士がぶつかり合う爆発力、ここで負けてなるものかと俺は強引に押し出した。

 視界は真っ白に染まっている。


 だが、俺は感覚で敵を吹き飛ばせたと感じた。

 そのまま、両方の手で孤絶ソリチュードを握りしめると、敵に向かって振り下ろした。


「どうだ!」


 ズバッと、敵の身体が斬り裂ける手応えがあった。

 ヘルスポーションを飲み干して、失明の状態異常を回復させる。


 マザーオーティラスは、俺の手によって斬り裂かれていた。

 俺の孤絶ソリチュードとて、二万年も宇宙を飛び続けてきた星辰の刀なのだ。


 宇宙最強生物だかなんだかしらないが、こんな昆虫に負けるはずがなかった。


「ぐっ……」


 そう勝ち誇った時、後ろでくぐもった悲鳴が上がったので、俺は驚く。

 その叫びは、他の弱い人間ならともかく、竜人のヴイーヴルだったからだ。


「なんだと!」


 ヴイーヴルをやすやすと斬り伏せて飛び出してきたのは、さっき俺が殺したはずのマザーオーティラスだった。


(オーティラスは一つにあらず、我は我らなり)


 マザーオーティラスを殺しても、違う個体がまた最終形態になるのかよ。

 これは一筋縄ではいかない敵のようだ。

次回2/11(日)、更新予定です。

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