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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第三部『ジェノサイド・リアリティーⅡ リロード・オブ・ジ・エクスプローラー』

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203/223

203.異界の化物

 地下十七階に踏み込む。

 入り口は特におかしなところはない、普通の石壁のダンジョンだ。


「おかしくないわけがないんだがな」


 俺がそうつぶやくと、リリィナが答えた。


「ここは、キマイラ達の階層だったわね」

「そうだな」


 ギリシャ神話に出てくる合成生物だ。

 ジェノサイド・リアリティーでは奇獣という。


 ライオンの頭と山羊の胴体、蛇の尻尾をもつ奇獣、キマイラがウヨウヨしていて、階層のボスは、それらキマイラたちの主。

 奇獣の王。


 頭がライオンだから、ゲームではライオンマスクと言われてたか。

 そんなことを考えていると、この階層のモンスターであるキマイラが奥から姿を現した。


「お、普通のモンスターだなァ。俺に殺らせろォ!」


 止める間もなく、仁村流砂にむらりゅうさが聖銀のエストックを構えて飛び出していく。

 相変わらず迂闊な動きだが、まあ良いか。


「もらったァ!」


 積極的にランクを上げたい気持ちはわかる。

 そうでないと、ここから先はついていけないからな。


 迫りくるキマイラの絶叫が聞こえた。

 奥からさらにもう一匹でてきたが、ライオン頭の化物を二体。


 仁村は、危なげなくエストックで突き刺して殺す。

 何かあったら後ろからサポートしてやろうかと思ったが、やるじゃねえかと口を開こうとしたその時だった。


「なん、ぐうッ!」


 倒れ伏したキマイラの死体がパッカリと割れて、中から得体の知れないネチョネチョした化物が姿を笑わした。

 合成生物キマイラも不気味ではあったが、その百倍は気持ち悪い。


「なんだこいつは?」


 仁村は緑色の粘液を吹きかけられて倒れ込む。

 強烈な毒か、硫酸でもあるようで、仁村は悶え苦しんている。


 慌ててサポートに回った俺にも、襲い掛かってくる。

 緑色の粘液に塗れた爬虫類と昆虫を掛け合わさせたような奇怪な化物。


 もはやこれ、地球上の生物じゃねえな。

 奇妙な叫び声を上げて、襲いかかるそれを、俺は一刀の元にたたっ斬った。


「キャシャー!」


 身体を真っ二つにしてやっても、まだピチャピチャと動き回っている。

 凄まじい生命力。


 もう宇宙の化物っぽいそれを倒すには徹底的に潰すしかない。


「ハァ……ようやく死んだか。なんだこりゃ、仁村は大丈夫か」

「毒消しポーションで回復したわ」


 黛京華まゆずみきょうかが、仁村の治療をしてやっていた。

 なんだかんだで、仁村にも優しくしてやってるようだ。


「まあ、それはいいが」


 この気持ち悪い生物は一体何なんだ。

 一番近いのは、映画や漫画とかに出てくる異星人って感じだな。


「……そいつは忍者ニャ」

「は?」


 いきなり何を言い出した猫忍者。

 俺がしれっとした顔で見ていると、潰した異星人の死体を指差して話しだした。


「さっきの攻撃は毒霧、これがクナイ! これが忍刀の部分ニャ! 動きを見てたら忍者には忍者がわかるニャ」


 異星人の身体の部位を指差して言い始める。

 ニャルは、ついに恐怖でおかしくなったのかと思っていると、久美子が申しそえた。


「この子の言ってることは本当よ。私も、こいつらの動きは忍者っぽいと思った」

「ふうん。まあ、この世界にもこいつみたいに忍者がいたんだから、他の異世界にもいてもおかしくないな」


 それが爬虫類だか、昆虫だかもわからん異形な生物でもそうだ。

 言われてみれば、さっきのキマイラの死体から飛び出した登場は、変わり身の術っぽかった感じもする。


 キマイラの肉体に寄生して変わり身の術とか、気色悪いにもほどがあるが。


「なんでニャルが言ってることを聞かずに、そいつが言ったら聞くニャ」

「お前の言うことは、基本信用できないからな」


 なんかさっきから味方面してるが、ヴイーヴルが連れてきたから仕方なく置いてやってるだけで、お前を味方と思ったことは一度もないぞ。


「今は、他ならぬ世界ムンドゥスの未来がかかってるニャ。今回ばかりは、ニャルだって協力するニャよ。そっちの死体も調べてみるニャ」


 ニャルは率先して、もう一匹のキマイラの死体も調べだした。


「そっちは入ってなかったみたいだけどな」

「ふん。存在をひた隠しにするから忍者ニャ。死んだ振りは基本ニャぞ。私の言ってることは、常に正しいニャよ。ギャア!」


 確かにニャルが正しかった。

 ニャルにバレたことを悟った奇怪な異星人は、キマイラの死体から飛び出し、ニャルにのしかかっていく。


 推測は正しかったんだが、ニャルには倒す力はないのな。

 しかし、こうしてみると、どこか機械じみた動きをする生物だ。


「ほぉ、こいつはどうやら、他の生物に寄生しようとするらしい」

「あんぎゃー! 何を見てるニャ、速く助けろニャァ!」


 なんかネチョネチョの喉の奥から、もう一つの口とかでてきていてちょっと面白い。

 ニャルにディープキスしようとしている。


「ふうん、こうやって他の生物の体内に入るのか」

「ぎゃぁ、助けて、助けてニャー!」

 

 どう他の生物に寄生するのか観察したかった気もするが、遊んでる場合でもない。

 異星人の口に刃を叩き込んで、ブチュッと潰してやる。


「ほんとに死ぬかと思ったニャア。お前最低ニャ!」

「悪かった、冗談だよ。ほら、ニャル。後ろからまたさっきの化物が来てるぞ」


「はん、もう騙されニャギャーーーーーーーー!」


 これが、ほんとに来てたりする。

 しかも今度はキマイラに寄生せず、二匹が速攻をしかけてきた。


 なるほど宇宙忍者とはよく言ったもんだ。

 こっちが倒したと、ホッと息をついた瞬間を狙ってくるわけだ。


 気が付かないように接近してくる手際も見事なもの。

 ニャルにまた襲いかかって寄生しようとした一匹を俺が殺し、もう一匹は真っ先に接敵に気がついた久美子がやっつけた。


「もう嫌にゃ、こんなとこいたくないニャァ!」

「おっと逃げるなよ。後ろに逃げて、群れから離れてしまったやつが最初に殺られるのもパターンだろ」


 そう言ってやったら、ニャルの目が色を失った。


「にゃぁ……」


 うむどうやらイジメすぎたみたいだ。

 進むことも逃げることもできず、耳を伏せてどうしようもなくなっているニャルに、俺は優しく肩をたたいてやった。


「どうやら弱い敵から殺そうとするみたいだから、お前囮役な」


 見るからに弱いニャルには、攻撃せずに寄生しようとしているようだ。

 おそらく味方が寄生されたら、俺達が攻撃を躊躇すると考えているのだろう。


「鬼畜ニャ。お前は、本物の鬼畜ニャ。絶対許さないニャ!」


 よしよし、それぐらいの怒りのパワーがあったほうが、生き残れるってもんだ。


「ほら、また奥からゾロゾロとお出ましだぞ」

「あああ、これ絶対中にいるやつニャー!」


 キマイラの群れがまたダンジョンの奥からやってくる。

 当然ながら、その体内や付近に、宇宙忍者が隠れて接近してきているに違いない。

次回1/28(日)、更新予定です。

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