195.友情の糸
「真城くん!」
飛び込んできたのは瀬木だった。
俺のリュックサックまで持ってきてくれている。
「瀬木、敵はアンデッドだ」
「あっ、わかったよ!」
司教であり職業は最高ランクの『教皇』である瀬木が手を合わせて、即座に大聖者の祈りを行った。
神聖な祈りの光が、霊体の霊王デシートを取り囲む。
「なんだこれは、ええいよるな……」
僧侶ランクを極め、さらに転職して上位の司教ランクを極め、『教皇』となった瀬木は最高ランクのアンデッドですら浄化する祈りが使える。
本来のジェノサイド・リアリティーⅡではこの先にアンデッドの強敵はいないため、無駄になるかと思ったスキルだったが、なんでも成長させてみるものだ。
浄化までは無理だが、霊王デシートの動きを鈍らせることぐらいはできるようだった。
「さて、久々にこいつの力を借りるか」
俺は、荷物からサムライ用のアンデッドキラー、霊刀『怨刹丸』を取り出す。
これを使うのも、本当に久しぶりだ。
「クソ僧侶が、この世界でも私に楯突くか。これでも喰らえ!」
霊王デシートは、瀬木に向かって青白い魔法のような波動を放った。
俺は試し斬りとばかりに、それを霊刀で断ち切る。
「なんだ、これでも攻撃のつもりかよ」
デシートの放った魔法は、見た目の通り霊的な攻撃だったらしい。
霊刀を当てた途端に、シャボン玉のように弾け飛ぶ弱っちいものだった。
やはり霊刀は、霊体に対する切れ味は格段に良い。
「クソッ! クソッ! よるな!」
俺は、相手が放ってくる霊波を斬り飛ばして近づいていく。
「ここまでだな、霊王デシート」
「うああ、よせえ。私の身体に触れるな!」
俺の刀が、自分の身を斬れることに気がついたらしい。
慌てて逃げ出そうとするが、瀬木の聖なる祈りによって囲まれ動きが封じられている。
「さっさと、地獄に落ちろ!」
「ぐぁああああ!」
霊刀を突き刺してやると、霊王デシートは悲鳴を上げた。
それで弱ったおかげなのか大聖者の祈りによって、デシートの身体が薄れて消えていく。
「バカな、私の身体が消える。うぁああ……」
デシートが浄化されて消え失せるまで、ほんの数秒だった。
「瀬木もなかなかやるじゃないか」
「うん、役に立ててよかったよ」
瀬木がいなければ、霊体であるデシートを逃していたかもしれない。
そうなると、面倒なことになってたところだ。
ずっと瀬木が僧侶ランクを鍛えて極めていたのも、無駄にはならなかったな。
「真城くん大丈夫!」
「ワタルくん!」
続けて、和葉や久美子がやってくる。
「ああ、遅かったな。もうボス戦は終わったぞ。アンデッドだったから、司祭の瀬木がいてくれて助かった」
「ボスって、アラクネーを倒したの? ボスの部屋でもないのに?」
細かく説明するのも面倒だな。
「蜘蛛のモンスターを操る奴がアンデッドだったんだよ。そいつを倒したから、地下十四階もこれで終わりだろ」
「うそ、もう終わり? ポイント稼ぐの失敗した!」
「瀬木くんはダークホースだったわ……」
お前ら、一体何の競争してるんだよ。
俺の予想通り、本来のボスの部屋には何もいなくて、地下十五階へ進む扉の鍵だけが残されていた。
拙著「酷幻想をアイテムチートで生き抜く」六巻発売(11/30)を記念して
11月は4週に渡っておまけ更新(とボツラフ画公開)をやってましたので、そちらの方もぜひよろしくお願いします!
次回は12/3(日)、更新予定です。