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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第三部『ジェノサイド・リアリティーⅡ リロード・オブ・ジ・エクスプローラー』
191/223

191.つかの間の休憩

 精も根も尽き果てて、気絶するように眠ってしまっていた。

 なんか身体がポカポカと温かい。


 湯気が上がっている。

 俺は、バシャバシャと和葉に身体を洗われている。


「なんだ、これ……」

「ふふ、お風呂」


「ふう」

「まだ動かないほうがいいよ」


 起き上がろうと思ったが、よろけてしまって和葉に抱き止められる。

 慈母のような顔で、俺を見下ろす和葉。


 とてもけだるい感じで、もっと眠っていたい気分だった。

 認めるのも癪だが、俺は和葉に抱かれていて安心している。


 なんとか四肢を動かそうとするが、筋肉がギシギシと音を立てて、肌がピリピリとしていた。

 この張り詰めた感じは、前に何度も経験がある。


 おそらくまた身体が急激な成長をしているのだろう。

 しばらく、和葉に身体を任せて休みたかったが、迷宮に風呂が出現しているのを放っておくわけにもいかない。


「和葉が作ったのか?」

「うん。真城くんを癒やしてあげようと思って」


「やっぱり、そうか」


 罠を出現させられる和葉である。

 いまさら、風呂を一つ作って見せたところで驚くほどではない。


 和葉が作ったのなら、安心だ。

 お互いに、裸の付き合いもいまさら騒ぐようなことでもない。


「前の戦闘からどのくらい時間が経った?」

「半日ぐらいかなあ」


 スマホを荷物から取り出して確認する和葉。

 現代社会と通じた時に、電源は復旧させたが、今やスマホも時計代わりぐらいにしかならない。


 こっちには、電波がないからな。

 ダンジョンで前後不覚で眠り込んでしまったのは良くないが、半日なら許容範囲だ。


「そうか、いろいろ助かった」

「うん、もうちょっと休んでてね」


 そう言われると素直に従いたくない俺だが、今は正直、身じろぎするのもしんどい。

 しばし、されるがままになって、風呂の心地よさを堪能する。


「……和葉、だけか?」


 そういえば、他の人間がいないのが気になった。


「一番活躍した子が、次に真城くんを独占するってことに決まってたの」

「仲がいいな、お前らは」


 裏でそんな話をしてたとは、和葉が張り切って活躍するわけだ。

 確かに、一番の活躍といえば和葉だろう。


「和葉、神託板を取ってくれないか」

「これでいい?」


 俺は渡された携帯用の神託板で、自分のステータスを確認した。


『真城ワタル(しんじょうわたる) 年齢:十七歳 職業:剣神けんしん 戦士ランク:半神デミゴット 軽業師ランク:超越者オーバーロード 僧侶ランク:突破者オーバーマン 魔術師ランク:突破者オーバーマン


 やはり、成長している。

 半神デミゴットという、見覚えのない新しいランクが出現している。


「そうか、超人をさらに上回ると神に近づいていくのか」

「真城くん。なんだか、身体が内側から輝いて見える。後光がさしてるみたい」


 かつて、地上には半神半人の英雄が存在したと言われる。

 俺はそういうものになりつつあるのかもしれない。


「だが、まだ全然足りない」


 まだ力が足りない。

 俺は、最強になりたいのだ。


 この世に創聖神がいるのならば、神を超えて更に上を目指す。

 俺は誰にも負けない、最強の力を手に入れたい。


 たった一人でジェノサイド・リアリティーを始めたあの日に、そうすると誓った。


「うん、一緒に手に入れましょう。私も、欲しい」

「和葉……」


 何かを口にしたわけでもないのに、俺を優しく抱きしめる和葉は、俺の心を見透かしたようなことを言う。

 戯れに、和葉のステータスも調べると、笑ってしまうほど高ランクだった。


竜胆和葉りんどうかずは 年齢:十七歳 職業:ダンジョンマスター 戦士ランク:突破者オーバーマン 軽業師ランク:超越者オーバーロード 僧侶ランク:突破者オーバーマン 魔術師ランク:最終到達者アークマスター


「真城くん、私も強くなったよ」

「お前、職業がダンジョンマスターになってるぞ。何だよこれ」


 限界突破しているのはいいとして、料理人であった和葉は、『庭園ガーデン』でゲームマスターの力を取り込んで、職業が進化してしまったのか。

 自由に破壊不能オブジェクトの罠を発生させられる和葉は、確かにダンジョンマスターにふさわしい。


 ゲームのルールを捻じ曲げるほどの力か。

 これはかなわないな。


 ダンジョンマスターなんて、カッコイイ職業名で、俺は少し和葉が羨ましい。

 こんな稀有な職業ならば、俺の心ぐらい読めてもおかしくはないのかもしれない。


「真城くん、ご褒美ちょうだい」


 いきなり何を言い出すかと思えばと、俺は苦笑した。


「疲れ切ってるんだけどな」

「大丈夫よ、真城くんは、そのままいてくれたら十分だから」


「……じゃあ、好きにしろ」

「好きにしろじゃなくて、好きって言ってよ。真城くんも、欲しいって言って……」


 ご褒美をくれって話じゃなかったのかと、思ったがまあいい。


「和葉、俺はお前を必要としてる。それでいいか?」

「もう、もっと雰囲気を出して、愛を囁いてくれても良くない? でも、真城くんらしいね」


 そう言って、和葉は俺の耳元でクスクスと笑う。

 愛を囁やけとか、恥ずかしくてそんなことできるかよ。


 じれったそうに和葉が身動きするのを感じる。

 チャポンと水音が響く。


 ともかくも、まあ……今は休むべき時だ。

 俺は和葉と風呂にゆっくりと浸かって小休止して、十分に体力を回復させた。

次回11/5(日)、更新予定です。

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