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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第三部『ジェノサイド・リアリティーⅡ リロード・オブ・ジ・エクスプローラー』
190/223

190.異世界の武神

 残る敵は異世界の武神、李九龍リー・カオルーン率いる武闘家集団のみ。

 だが、最後に残ったこいつらこそが最大の敵であった。


 なにせ、戦士ランク、軽業師ランクともに超越者オーバーロードの強者だ。

 戦士としては俺と互角、体術であれば俺を超えている。


「ダメデス!」

「なんてやつなのよ!」


 ウッサーと久美子が二人がかりの攻撃を、まるで赤子の手をひねるように弾き飛ばす。

 どんな激戦でも、ふざけている二人のこんなこわばった表情は見たことがない。


 この二人でダメなのだから、他の連中など九龍カオルーンに近寄ることすらできなかった。

 こちらに歩いてくる九龍カオルーンは、だらりと手を下げて構えもしない。


 油断しているわけではない。

 これは武術の極み、無行の位なのだ。


 完全に身体を弛緩させて、あらゆる攻撃に対処できる奥義である。

 九龍カオルーンは、長い辮髪べんぱつをだらりと垂らした意外に小柄な男なのだが、その筋肉の盛り上がりと密度は凄まじい。


「行くぞ!」


 俺とアリアドネが同時で斬りかかって行くが、なんと剣を素手で受け止めてみせた。

 無刀取り、だと!?


 剣を握る手に力を込めても、筋肉にまったく刃が通らない。

 ドンッと弾かれる。


「きゃぁあああ!」


 俺は何とか踏みとどまったが、アリアドネは九龍カオルーンの拳に撃ち負けて吹き飛ばされてしまった。

 こちらが使っているのは、ただの剣ではないのだ。


孤絶ソリチュードとエクスカリバーなんだぞ!」


 俺がそう叫ぶと、もはや目で見えるほどの色濃い闘気をまとった九龍カオルーンが手を振り上げて言う。


劈拳ピーチュアンという」

「知らねえが、お前の拳が剣と同じなのはわかった!」


 敵に不足なし。

 俺は、連続で双剣を撃ち込んでいく。


「甘いなサムライ」

「クソッ、化物かよ!」


 俺の全力の斬撃が、素手で軽くいなされていく。

 肌が粟立つほどのヤバさを感じているのに、俺は楽しくて仕方がない。


 攻撃力、防御力、スピード、技のキレ。どれをとっても俺以上か。

 すでに武の極みに達したと思った俺だったが、まだまだだったことを思い知らされる。


 同じ人間で、これほどの敵がいたとは驚かされる。

 いいものだな、自分よりも強大な敵の背中を追うとは。


崩拳ポンチュアン


 攻勢に転じた九龍カオルーンは、何のモーションもなく撃ち込んで来た。

 凄まじい一撃。


 思わず剣の腹で受けてしまい、叢雲むらくもの剣が真っ二つに折れる。

 孤絶ソリチュードの絶対の硬度には及ばぬが、神剣クラスの刀をいとも簡単にへし折って見せるのか。


「ハハッ!」


 俺は、堪えきれず笑ってしまった。


「ぬう?」


 サムライが刀を折られて笑ったのが不可解なのだろう。

 九龍カオルーンは一瞬、目を細めて不思議そうな顔をした。


「わからんか!」


 俺は、思い切りよく折れた剣を投げる。

 と、同時に渾身の斬撃。


 これほどの男だ、不意打ちなどで隙などできない。


「ぬぁ!」


 撃ち込んだ一撃は軽々と受けられる、まるでアダマンタイトの壁を斬っているようだ。

 だがな。


 頭、胸、腹、俺は孤絶ソリチュードを次々と急所に撃ち込んでいく。

 全て受けられる。


 技で競っても勝てない。

 だが俺は、ここまで共に戦ってきた孤絶ソリチュードの力を信じる。


 絶対に折れない野太刀は、この鉄壁ですら打ち破る力を持っている。

 あと足りないのは、俺の実力だけだ。


崩拳ポンチュアン!」


 九龍カオルーンが放った一撃に、俺はしたたかに肩を骨ごと打ち砕かれて、吹き飛ばされる。


「ハハハハッ!」


 俺は回復ポーションを飲み干すと、弾けるように立ち上がり、また斬りかかる。

 脆くも弾き飛ばされる。


「何のつもりだ、ぬう!?」


 まだわからないか異界の武神。

 お前は、決め手に欠けてるんだよ。


 俺は何度でも立ち上がり、弾き飛ばされる。

 それでも、死ななきゃ何度でも立ち向かえるのがジェノサイド・リアリティーだ。


 高速を超えた超高速の世界で、俺は段々と九龍カオルーンの拳が見えてきた。

 この戦いの中で、俺は成長しているのだ。


 たった一つ、俺に有利がある。

 入る経験値は、格上の相手をしている俺のほうが上だ。


 もはや、お互いの刀と拳は音速を超えて、激しく燃え盛っている。

 俺の攻撃が、相手の腕を超えて頭に当たった。


 その瞬間、俺は激しい横からの蹴撃を受けて弾き飛ばされる。

 拳だけで戦っていた九龍カオルーンが、ついに足を使いだした。


 俺は再び立ち上がり、さらに深く速く斬り込んでいく。


「どうした、動きが悪くなったな武闘家!」

「なぜ、急に動きが!?」


 殺し切ることができなければ、俺は何度でもヘルスとスタミナを回復して立ち上がる。

 俺がやっていることがわかったのか、ウッサー達はタイミングを合わせて九龍カオルーンに攻撃し、回復の一瞬の隙を補ってくれる。


 さあ、喰らってやるぞ九龍カオルーン

 お前を踏み台にして、俺はさらに成長してやる。


 何度でも立ち上がり、斬撃を繰り返す。

 より強く、より速く。


 ついに大上段から放った俺の一撃が、九龍カオルーンの頭に直撃した。


「ぐあぁぁっ!」


 それと同時に俺は殴り飛ばされたれてしまったので、斬撃が浅くなってしまったが確かに当たった。

 流れ出す血で、目が見えにくくなる九龍カオルーン


 だが、敵もさるもの。

 この隙に襲いかかろうとするウッサー達を、目をつぶったままで撥ね退けた


 立ち上がった俺は呼吸を整えると、渾身の力で上段斬り下ろす。

 ついに、九龍カオルーンの片腕を断ち切った。


「私の、劈拳ピーチュアンが!?」


 片腕を失えば、もはや勝敗は決した。

 俺は敵の防御ごとズバッと真正面に斬り下ろして、九龍カオルーンの身体を真っ二つに斬り裂いた。


「喰って、やったぞ……」


 ブシュッと吹き上がる温かい血しぶきを浴びながら、俺はいい訓練相手になってくれた九龍カオルーンに感謝する。

 おかげで、俺は新しい力を得ることができた。


 しばらくして、周りから「勝ったぞ!」と歓声が上がった。

 残敵の掃討も済んだようだ。


「ふう……」


 ようやく気が抜けた俺は、静かにその場に座り込んだ。

 ポーションでは、精神の疲れまでは取れない。


 もはや限界で、一歩も動けそうにない。


「真城くん。お疲れ様さま……」

「ああ、すまん」


 和葉が、どこから持ってきたのか濡れタオルで血で汚れた俺の顔を拭いてくれた。

 心地よくはあるし、少しだけ休もう。


 しばらくは、和葉のされるがままでもいいだろう。

次回10/29(日)、更新予定です。

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