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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第三部『ジェノサイド・リアリティーⅡ リロード・オブ・ジ・エクスプローラー』
185/223

185.ここからが本当の戦いになる

 残ったモジャ頭ゾンビスライムの残骸をファイアーボールで焼き尽くすと、とりあえず一息付いた。


「まだヘドロが残ってるな」

「街の外壁の側面にこびりついて、取りきれませんね」


 アリアドネ達が手分けして焼いてくれているが、全て灰にしてしまわないことには安心できない。

 街の中の被害はほとんどないが、外壁の損傷は酷いもので前と後ろについていた大きな門は完全に歪んでしまって、一度開けたらもう二度と閉じなくなった。


 補給基地としては使えるが、防衛拠点としてはもう使い物にならないだろう。


「まあ、攻め続けるだけのつもりだからいいけどな」


 それより、問題は士気のほうだ。

 俺たちはともかくリリィナ達の部隊は、頼みの機械化歩兵を幹部ごと殺られて意気消沈している。


「おい、リリィナ。お前達は、いつまでふてくされてるんだよ」

「ふてくされてなんか……」


「じゃあなんだ。お前ら、この前までの威勢はどうした」


 煽ってやっても返事も返ってこない。

 完全に、意気消沈してしまっている。


「お前ら、俺のステータス見てみろよ」


『真城ワタル(しんじょうわたる) 年齢:十七歳 職業:剣神けんしん 戦士ランク:超越者オーバーロード

 軽業師ランク:超越者オーバーロード 僧侶ランク:最終到達者アークマスター 魔術師ランク:突破者オーバーマン


 フロア全体を覆うほどの巨体と化した御鏡竜二。

 あの異次元レベルの敵を倒したことで、俺はさらに限界を超えて一段階上のランクに到達したのだ。


「こんなランク、見たことがないわ」

最終到達者アークマスターを超える突破者オーバーマン。そして、突破者オーバーマンを超える超越者オーバーロードか。だいたい予想通りだな」


「予想って?」

「この世界では、すでにステータスの限界は撤廃されている。もはや成長の制限はない、確かに次元の超えた力を持った御鏡は強かったが、俺達だってそれを更に超える力を手に入れられるということだ」


 サムライの最終ランクである剣神けんしんが、神の名を冠していることは偶然ではないだろう。

 限界が撤廃されたこの世界では、人の限界を超越し、いずれは神に匹敵するだけの力が得られる。


「そりゃ私達だって、ここで限界までランクを上げるつもりではあったけど……」

「お前らのランクだって、この短時間に成長してるじゃないか。リリィナも、本当はわかってるんだろう。敵が予想より強くなるなら、俺達も強くなればいいだけなんだ」


「そんな、簡単に……」

「簡単なんだよ。俺は今、ワクワクしているところだ。そこのメガネみたいに、わかりきった戦いをわかりきったようになぞるだけで何が楽しいんだよ」


 メガネこと、特殊部隊ブラックジャケットの参謀、スコット少尉は俺に挑発されて何か言いかけたが、結局何も言わなかった。こりゃ重症だ。

 幹部と主力の機械化歩兵分隊を失い、傷つき、恐れ、うろたえる。


 全ては、俺達が前の戦いで経験してきたこと。

 ただの高校生でしかなかった俺達が立ち向かえたことを考えれば、精鋭スペシャルと言われた連中が、雁首揃えて黙りこくっているのは情けない。


「命が懸った戦いなのよ!」


 まだ俺に悪態をつく元気があるのは、リリィナぐらいだ。

 俺は、わざと挑発するように笑って言った。


「そうだ、それがわかってなかったのはお前らだけだ。この戦いは、最初から命懸けなんだよ。迎え撃ってくる敵もそうだ。自らの生存の全てを懸けた戦いだから、ジェノサイド・リアリティーなんだろうが」


 この戦いに俺達が敗れれば、このムンドゥスの世界は滅ぼされる。

 アンデッドのモンスターが言っていた、次元転移装置「ゾロアリング」を操る洞主と呼ばれる謎の存在だって、それは変わらない。


 ジェノサイド・リアリティーのシステムのなかで、俺達と敵とは対等なのだ。

 ただ漫然と生きているとその事実を忘れてしまうが、人間という種が今も滅びずに生きているのは、生存競争に勝ち抜いたからに他ならない。


 このダンジョンは、その生存の本質をわかりやすく示しているだけだ。

 街に引きこもり、強大な敵に立ち向かい戦う意思を持たなければ、敵に滅ぼされるのを待つだけとなる。


 戦って勝たなければ生き残れない。


「そんな……」


 リリィナが何か言いかけたようだが、戦いの準備が済んだようだ。

 ここで無駄にしている暇はない。


「リリィナ、おしゃべりは終わりだ。俺はもう行く。おい、おっさんはどうする?」


 落ち込んでいるリリィナ達幼年兵を気遣って面倒を見ていたリチャード中尉だが、俺が声をかけると得物の狂獣の剣(ガロード・ソード)を掴んで立ち上がった。


「もちろん。真城殿にどこまでもお供する覚悟!」

「いい根性してるな、おっさん。これからも、せいぜい役にたってもらうぞ」


 そして、若い兵士達に共に戦えなどと命じないリチャード中尉は、いい指揮官でもあるのだろう。

 俺だって、元からリリィナ達を説得する気などこれっぽちもなかった。


 大人は、立ち向かう背中を見せるだけでいい。

 叱咤激励しなければ、戦うことのできない戦士など土壇場ではクソの役にも立たない。


「ちょっと待ってよ!」

「待たない、リリィナ。お前らは、このまま街でこのまま震えるなりなんなり、好きにするといい」


「みんな、立ちなさい! ワタルを追うわよ!」


 結局のところ、生き方は自分で決めるしかないのだ。

 どんな恐ろしい敵が相手だろうと、俺達は最後まで戦い抜く。


 リリィナ達がどうするかは、本人達が決めればいいことだった。

次回9/24(日)、更新予定です。

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