183.竜胆和葉の攻撃!
飛び出した和葉は、なんとパワードスーツですら飲み込んでしまったモジャ頭スライムの上に立っている。
「そうか!」
破壊不能オブジェクトの罠を、足の下に引いているのか。
それだけは、全てを飲み込むモジャ頭も飲み込むことができない。
「竜胆さーん!」
ふらふらと、和葉に吸い寄せられていく御鏡竜二だった物体。
いまだ、アイツは和葉に執着している。
「そうよ、御鏡くんこっちにいらっしゃい!」
これならば、と思った瞬間。
「君も僕の中に飲み込んであげるよぉぉ」
ガバッと、ゾンビスライムと化した御鏡の和葉を飲み込まんばかりに口が大きく開く。
くそ、やっぱりこうなったか。
和葉が対処できるかわからないから、万が一の際助けようと俺もそちらに飛ぶ。
だが、和葉は瞬時に対応した。
いや、むしろこれを狙っていたのだろう。
化物となった御鏡の大口に、無限リュックサックをひっくり返すようにして大量のガソリン缶をぶち込んで、最後に爆弾を投げ込む。
途端に爆炎が上がり大爆発が起きた。
「和葉! ……は、大丈夫か」
起こった爆炎は、和葉にも降りかかったが破壊不能壁の罠を発生させて防いだ。
もうなんでもありだな。
ある意味で和葉は、異界の力まで取り入れたモジャ頭以上の最強になってんじゃねえか。
ガソリン缶を大量に飲み込んでしまった、モジャ頭は口の中で次々にガソリン缶が誘爆して巨大な頭をグルングルン振って苦しんでいる。
「ぎゃあああ!」
悲鳴だけは、人間だった時のままだ。
このまま死ぬかと思って見ていたが、ズルッと自らの肉の海に巨大なモジャ頭を沈めた。
「御鏡くん、このまま死んで!」
「よぐもやっだな!」
肉の海から、モジャ頭のくぐもった怨嗟の声。
やはり、この程度では死なないか。
先程の鋭い槍のようなものが肉の塊から飛び上がって和葉を襲う。
「熱量 炎 電光」
本来ジェノサイド・リアリティーにはありえない呪文により、足でマナをオーバーロードさせて、空中で方向を転換する。
魔闘術、規格外スキルならこちらにもあるのだ。
俺はそのまま、肉の槍に襲われる和葉に向かって飛んだ。
俺は下から突き上がってくる肉の槍を斬り払って、和葉を救い出す。
「真城くん、ごめん!」
「いや、化け物相手によくやった」
次々と硬質化した肉の槍が突き上がってくるが、孤絶の刃なら斬り払える。
「ぼぐは、ばげものじゃないぞ!」
声は聞こえるが、モジャ頭は見えない。
御鏡の本体を肉の海に逃がしてしまった。
さすがに俺でも、この莫大な量のゾンビ肉全てを斬り崩すことはできない。
さてどうするかと思考したとき――
「ワタルくーん!」
「旦那様、ワタシも加勢するデス!」
久美子と、ウッサーまで飛んできてしまった。
前の特訓のときに、こいつらにも魔闘術を教えたからな。
二人に向かっても、肉の槍が襲い来る。
「ご主人様!」
「真城!」
アリアドネに、木崎も。
「うぁぁああ!」
仁村流砂まで!
むちゃしやがる、お前は訓練不足だから下手すると殺られるぞ。
肉の槍は、次々と飛び込んできた者達を狙って突き出されたが。
さすがに数が多いのか、その動きに迷いが見えた。
「ん?」
ダンジョンの一フロア全面に広がって蠢く肉の海。
その質量は、中層街を飲み込もうとするほどだが、なぜ肉の槍の動きに迷いが出たんだ。
さっき機械歩兵部隊を全員串刺しにしたときみたいに、どんどん上に突き出せばいいだけだと思うが、なぜこっちの動きに翻弄されてる?
「そうか!」
あいつ、人間のときの癖で、眼で直接みて狙ってやがる。
ならこの肉の槍を動かしている中心に、御鏡の本体はいる!
俺は、再び魔闘術で飛び、肉の海へと斬りかかった。
狙うのは、この下にいる御鏡本体だ。
次回9/10(日)、更新予定です。