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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第三部『ジェノサイド・リアリティーⅡ リロード・オブ・ジ・エクスプローラー』
180/223

180.敵襲

 敵襲の声を聞いて、俺はむしろ「ようやく来たか」とホッとする思いがした。

 とりあえず、俺達も物見櫓に上がって敵の姿を確認する。


「およそ百騎程度、あれは紅の騎士カーマイン・デスナイト黄金の騎士ゴールデン・デスナイトとですね」


 先に上がっていたスコット少尉というメガネの参謀がそう言う。

 かつては強敵であり、アリアドネが憑依されていた紅の騎士カーマイン・デスナイトが地下十一階では雑魚敵として登場する。


「思ったより数が少ないな」


 上階の伏兵のように大量のモンスターが攻めてくるかと思えば、地下十一階層の敵しかいない。

 馬のような生物これもおそらくモンスターだに騎乗した黄金の騎士ゴールデン・デスナイトが先頭に立ち、それに率いられた紅の騎士カーマイン・デスナイトの集団が百騎程度こちらの街に向かってきているだけだ。


「ワタルくん、私達はどうしたらいい?」


 久美子がそういうので、俺は少し考える。

 寡兵の敵が、わざわざ攻めてくる理由。


「そうだな……リリィナ、あいつらの相手は任せるか」


 俺がそう言うと、リリィナは嬉しそうに言う。


「あの程度の敵なら、私の部下だけで十分よ」


 だろうな。

 先程の戦いを見れば、任せて大丈夫だとは思った。


「久美子、俺達は、その間に街をもっと調べておこう。隠密ハイディングじゃない手法で伏兵を潜ませている隠し部屋なんかがあるかもしれない」


 この敵の動きから、その意図はいくつか考えられるが、その一つは陽動だ。

 外側にこちらの注意を引きつけておいて、内部の隠し部屋から一気に不意打ちする。


 隠密ハイディングで敵が隠れてない事はチェックしたが、隠し部屋など物理的な手法で隠れられてはさすがにわからない。

 千人ほどの住人が住めるほどの大きさの街だ。


 二百人にも満たない俺達が全員で探索しても、全ての建物や街の床を調べられるわけもなかった。

 俺もとりあえず、壁の辺りを調べてみようと思った時、突然スコット少尉が素っ頓狂な叫びを上げた。


「ああ!」

「どうした」


 さすがに、尋常でない反応に俺も驚く。


「どうしたのよ」

「あの、騎士が乗っている馬型のモンスター!」


 なぜスコット少尉がそれに驚いたのか、俺にはよくわからなかった。

 物見櫓から見ると、敵は更に不可解な動きをしている。


 街の外壁からは、弾丸の狙撃やC4爆弾が飛び。

 ドミニク一等曹長が率いる機械化歩兵の一団が、紅の騎士カーマイン・デスナイトの集団を見事に打ち破ったのだが。


 敵は百騎程度の少ない数なのに、さらに部隊を半分にわけて一部を退却させて、一部を街の反対側へと駆けさせた。

 狙撃や爆撃でジワジワと戦力を削られているのに、更に的になるような動きである。


 しかし、そばかすメガネの言う通り。

 あの馬のようなモンスターには見覚えがない。


「……あっ、そうか」


 近くで見ると、あれはまったく馬ではないことがわかる。

 半透明のブヨブヨとした肉の塊のようなものが、馬のような形を取っているだけだ。


 俺は気持ち悪さに背筋が寒くなった。

 あんな奇っ怪なモンスターが、どこからでてきたのだ。


「えっ、なに! 私にもわかるように説明しなさいよ」


 リリィナが不満気に唸る。

 すぐさまそばかすメガネが説明した。


「あの馬型のモンスターは、ジェノサイド・リアリティーⅡに出てこないモンスターなのです。いや、あんな奇っ怪な形状のモンスターは、ジェノサイド・リアリティーのどのシリーズにも出てきません」

「そんなの馬型モンスターなんて一杯いるんじゃないの?」


「いや違うぞ、リリィナ。ここでみたことないモンスターが出てきた意味をよく考えろ!」


 陽動以外に、寡兵の敵が前に出てくる意味はいくつかあったが。

 もっと単純に考えれば、それは『偵察』だ。


 俺達が、ちゃんと中層街に入ったかどうかを敵は調べに来ただけではないか。


「だって、馬型のモンスターなんていっぱいいるじゃない。骨馬とか」


 スコット少尉が叫ぶ。


「ジェノサイド・リアリティーⅡには馬型モンスターはいくつかでてきますが、あれは馬でも骨馬でも竜馬でもありません。参謀として進言したします。直ちに兵を退却させるべきです」

「なんですって、こっちは勝ってるのよ?」


「そのメガネに同調するのも癪だが、戦闘力の低い兵士だけでも退却させるべきだ。リリィナ決断しろ」


 ジェノサイド・リアリティーに存在しなかったおかしなモンスターが出てくる。

 嫌な予感がビンビンとしている。


 俺達に、言われてリリィナは釈然としないまでも命じる。


「それじゃあしょうがないわね。では念のため、一般兵士だけでも一旦後方に……」


 そのリリィナの命令は、ほんの少し遅かった。

 街の後ろの門は、黄金の騎士ゴールデン・デスナイトに率いられた五十騎の紅の騎士カーマイン・デスナイトに固められている。


 攻撃で数を減らしているが、あいつらが邪魔で退却はスムーズにはいかない。

 そうしている間に、地下十一階に続く出口から、『何か』が溢れ出てくるのが見えた。


 その何かの姿は次第に俺達の目の前に現れてきたが、それでも意味ある形をしていなかった。

 ただただ不気味な、巨大な半透明の青白いブヨブヨ肉の塊が、次から次へと地下十階に溢れでてくる。


 それは見る間に膨れ上がり、汚らしい海となって中層街の壁の周りを覆い尽くしていく。

次回8/20(日)、更新予定です。

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