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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第三部『ジェノサイド・リアリティーⅡ リロード・オブ・ジ・エクスプローラー』
170/223

170.殺戮迷宮の逆襲

 地下二階には、すでにリチャード中尉の指示通りにバリケードが敷かれていた。

 例の新素材カーボンナノベルトの大盾を並べてガードされている。


 俺達とともに同行したリチャード中尉は、最寄りの兵長に尋ねる。


「リリィナ大尉はどうした?」

「地下三階の残った部下を救援に向かわれました」


「やはり先走られたか……」

「構うことはないだろう。どうせ俺達も地下三階に行くつもりだ」


 俺達は、続々とバリケードを越えて、正体不明のバケモノが出たという地下三階へと下っていく。

 それを特殊部隊ブラックジャケットの幼年兵達は、化物をみるような眼で見送る。


 まあ、ここから先はお前らには荷が重いだろうからな。

 ライフルを構えて、俺に付き従うリチャード中尉は今一度俺に頭を下げた。


「真城殿、かたじけない」

「礼の必要はないと言ったぞ。こっから先は油断できないから、おっさんもせいぜい気をつけるんだな。俺達は勝手に地下三階の攻略をやるだけだ。行くぞみんな!」


 俺の合図に、ウッサー達が鬨の声を上げる。

 俺は敵の侵攻を討ち果たすだけだから、その過程で誰が助かろうと知ったことではない。


 だがまあ、リリィナ達に先をこされるのは面白くないから。

 この階に侵攻してきた正体不明のモンスターは、俺達が討ち果たす。


 謎の敵の正体も、ジェノサイド・リアリティーの知識がある俺には、おおよそ見当が付いている。


「真城殿。リリィナ大尉は第三分隊が消息を断った地下三階中央部にまっすぐ向かったと思われます」


 あのでかい竜の首が出たところか。

 通路の先方から、竜の叫びと、リリィナの凛とした声が響き渡った。


「今より武装の無制限使用を許可する!」


 チッ、先をこされたか。

 俺は孤絶ソリチュードを抜刀して駆け出す。


 リリィナの「撃て!」の合図で、ダダダダッと乾いた発砲音が響き渡る。

 地下三階の中央の大広間で、竜の首とリリィナ率いる本隊との遭遇戦が口火を切っていた。


 ダンジョンの通路ぎりぎりの大きさの巨大な竜は頭だけしか存在しない。

 もともと、こういう頭だけのモンスターなのだ。


 地下七階のボス、地下九階から一般モンスターとしても登場する大頭竜オロチである。

 なんでも噛み砕くその巨大な顎は、生物に本能的な恐怖を呼び覚ます。


 それでなく、単純なパワーだけで言えばジェノサイド・リアリティーⅡ上階の最大の敵である。


「こいつ銃が利いてねぇ! ぎゃあああ!」


 さすがに陽気な連中も、巨大な竜に身体を噛み砕かれながらジョークは言えなかったらしい。

 あの巨大な顎に丸呑みにされれば、新素材の防護服など何の役にも立たない。


 兵士達は恐怖に震えたのか、やたらめったら銃を乱射した。

 しかしその攻撃は、大頭竜オロチの肉に深くめり込んでも決定的な打撃を与えられない。


「こっちにくるなぁ!」


 銃の乱射で刺激してしまったのか、また一人飲み込まれた。

 不用意な攻撃は、痛みを与えてより暴れさせるだけに終わる。


 銃の小さな弾丸で倒すには、あまりにデカすぎる敵だ。


「怯むな! 火力が足りないならC4爆弾も投下しろ!」

「チキショーめ! でっけえトカゲ野郎、これでも喰らいやがれ!」


 大きな爆発が起きて、ドン! ドン! と大気が震える。

 あいつら、狭いダンジョンのなかで爆弾まで使いやがったのか。


「無茶苦茶やるな」


 激しい地響き。

 一瞬、自爆覚悟の攻撃かと身構えたが、さすがにそこまでバカではないらしい。


 どうやら指向性の爆弾らしくこちらに被害はない。

 だが、激しい爆風と煙と衝撃で状況がわかりにくくなった。


 それだけでも大きなデメリットだ。

 これでは、手が出しにくい。


 まあいいか。

 どうせ本命は、あのこれ見よがしな竜の頭ではない。


「お前ら、よく目をこらして潜んでいる敵を探せ」

「どういうことデス?」


 不思議そうに聞くウッサーに教えてやる。


「本当の敵は、別にいるってことだ。おそらくあのデカイ竜は、おとりだ」


 この戦いは、目の前の敵だけ倒せばいいわけではない。


「うおぉぉ! リリィナ大尉が行くぞ!」


 前衛の兵士が吠えた。

 煙で状況が見えにくいがどうやら、リリィナが直接出たようだ。


 リリィナは、長い鋼のチェーンを振り回して爆発で怯んだ大頭竜オロチの下顎に巻きつける。

 あんなのでどうするつもりだと思った瞬間――


 ギュイィィンと金属の擦れる音が響き渡る。

 どうやら、あの鋼のチェーンには刃がついていて超振動カッターのような動きをするらしい。


 超振動しながら収縮する鎖の刃は、スパンと竜の顎を真っ二つに割った。

 噛み付き攻撃さえできなければ、後は巨大な肉の塊だ。


 特殊部隊ブラックジャケットの精鋭たちは、大頭竜オロチを囲んで集中攻撃を浴びせ。

 巨大な竜の頭を醜い肉片へと変えた。


「ヒャッホー! リリィナ大尉がやったぞ!」


 リーダーであるリリィナが自ら大頭竜オロチを討ち果たしたことで、兵士達が湧き上がる。

 バカどもが、気を抜きやがって。


 俺はこのパターンをよく知ってる。

 慌てて駆け寄る俺に、リリィナ大尉はフンと形の良い顎を上げて胸を張った。


「どう、私のジェイソンは! この超振動チェーンはね……」

「――邪魔だ!」


 俺はリリィナをそのまま肩でドカッと吹き飛ばした。


「な、何するのよ」


 リリィナの長口上にかまってる暇などない。

 やはり、予想通りか――


 隙だらけのリリィナを殺そうと『竜の影』から飛び出てきたの漆黒のつるぎ

 俺はからくも、孤絶ソリチュードの刃で受け止める。


「お前ら、敵は竜の影から出てくるぞ!」


 俺は敵の刃をそのまま撥ね退けて、渾身の一刀を振るいながら味方に警告する。

 強い手応え、一体は斬り殺した。


 だが竜の影からは次々と新手が出てくる。

 音もなく姿を現れたのは、隠密ハイディングしていた無数の冥闇の騎士(シャドーナイト)だった。

次回6/11(日)、更新予定です。

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