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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第三部『ジェノサイド・リアリティーⅡ リロード・オブ・ジ・エクスプローラー』
166/223

166.一体何が起きたのか

「ワタルくーん!」

「真城くーん!」

「ご主人様!」


 外に出るのは諦めて階段を降りると、和葉に久美子にアリアドネも集まってきていた。

 和葉は、城に居た所を転移してきたそうだ。


 郊外にモンスター退治に出ていた久美子とアリアドネも、やはりジェノサイド・リアリティーの街に転移させられてきたという。


「ご主人様、外には出られないのですか?」

「結界が張ってて無理だった」


「アリアドネの毛糸を使ってみたら?」


 久美子がそういうので、「やってみます」とアリアドネが毛糸を取り出した。


転移ルーアン……」


「ダメみたいだな」

「元居た場所に戻ろうとしたのですが、転移できません。やはり閉じ込められてしまったようです」


 そう言えば、久美子とアリアドネはやけに深刻そうな顔をしている。


「どうしたんだ。何かあったのか?」

「妾達は発生したモンスターを退治に行っていたのですが、量と数がものすごかったのです。妾達がいなければ、少数の守備隊では持ちこたえられないでしょう」


「モンスターの大量発生か?」

「はい。これはまさに、前に創聖破綻ジェノサイド・リアリティーが起きた時と同じ、世界の滅びの兆候ではないでしょうか」


「そう考えるべきだろうな……」


 何らかのキッカケでジェノサイド・リアリティーの続編が始まったというのが一番ありえる線だ。

 この殺戮ゲームが始まるのは、いつも唐突だからな。


 階段の上からよく街並みを観察してみれば、中世風の建物に無秩序に現代風の施設が混じっている。

 この取って付けたような奇妙な感じは見覚えがある。


 ジェノサイド・リアリティーⅡ 再帰の冒険者リロード・オブ・ジ・エクスプローラ


 一作目の大ヒットに沸いた親会社が、強引に作った粗製濫造の続編。

 ジェノサイド・リアリティーの創設者である天才的ゲームクリエイター高貴なる夜(ロードナイト)が制作会社から命じられた続編の制作を拒否したため、前作のスタッフのみで無理やり創られた正統とは言いがたい続編。


 前作の勇士を移植するという無茶な発想で創られたため、ゲームバランスが崩壊して新規のプレイヤーでは完全にプレイ不可能な難度になった失敗作だ。

 その上に新規性をだそうとしたのか、現代要素やSF要素まで無秩序に盛りこむに至っては世界観をぶち壊している。


 大不評だったため会社自体が傾き、経営側に勝手なことをされて激怒した高貴なる夜(ロードナイト)が自ら会社を買収。

 無能な経営陣を放逐して、自らムンドゥスを舞台とした新作を出すキッカケとなったいわくつきの作品だ。


 このダンジョンはいわば、ジェノサイド・リアリティーの黒歴史。

 設定資料を漁ったら、三部作にする予定が三作目の計画が中止された経緯もあったそうだ。


 やたら敵が硬くて強かったので、コアゲーマーの俺は嫌いではなかったのだが。

 こうも世界観を無茶苦茶にされたら、創設者が怒るのは無理もない。


 だが、こうしてゲームが現実感リアリティーを持つと、話はそれだけでは済まない。

 高貴なる夜(ロードナイト)の正体は地球アースのアメリカへと転移して逃げた人族達の祭祀王だ。


 かなりきな臭いものを感じる。

 この世界ムンドゥスにいる前回の参加者が転移で飛ばされてきているこの状況は、まさに再帰の冒険者という条件に合致している。


 しかし、この世界ムンドゥスのゲームマスターとも言える創聖神ジ・オールはすでに前回の結果に満足していたはず。

 今さらニューゲームを始める意図もわからない。


創聖神ジ・オール様、ご本人に聞いてみてはいかがでしょうか?」

「そんなことができるのか?」


「はい。正式な祭祀王として認められている者ならばお伺いをたてることができます。リス殿に頼めば良いでしょう」


 そうか。

 ともかく今は状況確認だと、俺はリスをカーンの城に設置してある『遠見の水晶』で呼び出した。


 外への転移は不可能であったが、通信は可能だったのは助かった。


「リス、創聖神ジ・オールに何でこんなことをしたのか聞いてくれ?」

「ご主人様、それが私も何度もお呼びかけしているのですが、急に応答されなくなってしまったのです」


 創聖神ジ・オールが呼びかけに答えなくなった。

 いよいよ、怪しくなってきた。


「これはご主人と繋がっているのか?」


 『遠見の水晶』から、竜人族の祭祀王ヴイーヴルの声が聞こえる。

 そう言えば彼女もカーンの都にいたか。


 久美子達が目配せしてくるのに、俺は頷く。

 ヴイーヴルに片付けさせればいいな。


「ヴイーヴルいいところに来てくれた。今俺達はジェノサイド・リアリティーに閉じ込められて出られない状態だ」

「うむ、我がご主人を助けに行けばいいのだな!」


 違う違う。


「そうじゃない。久美子達によると、創聖破綻ジェノサイド・リアリティー現象がまた起こっているらしい。各地で凶悪なモンスターが発生しているそうだ」

「そうか。では我は先にそっちを片付ければよいのだな?」


「済まないが頼む。ヴイーヴルだって自分の民が心配だろうけど、うちの国の安全が確保できたら自分の領地に戻ってもらってかまわない」

「いや、竜人族は強いから前の創聖破綻ジェノサイド・リアリティーの時も、屁でもなかったぞ」


「そうなのか? じゃあなんでヴイーヴル達竜人族は、前の創聖破綻ジェノサイド・リアリティーの時に討伐に来なかったんだ」


 ほぼランクマックスに近いヴイーヴル達が乗り出していたら、前回の戦いなど楽勝に終わっていたのではないかとふと疑問に思った。

 かなり遠方地だから来るのが遅れるのはわかるんだが……。


「うむ、もちろん討伐に向かったのだが、虎人族の領地を通る時にそのまま戦争になってしまってな。それで、虎人族と夢中になって戦ってるうちに気がついたら創聖破綻ジェノサイド・リアリティーは終わっていた。アハハ、面目ない」


 アハハじゃねえよ……。

 世界の危機を目の前にしても全く協力せず、ただ目の前の敵と戦い続けることを求めるのが虎人族や竜人族の価値観なんだろうか。


 ちょっと付いていけんな。

 こいつらに比べたら、まだ熊人族のほうが理知的だった。


「ご主人の国のモンスターは、我が全部回って殺し尽くしておこう。それから助けに向かうが、まあご主人なら心配はいらんだろう」

「まあ、期待せずに待ってる。前と一緒のように、お前が来る前にジェノサイド・リアリティーをクリアしてしまうかもしれないな。どっちにしろ俺達はここから出られないんだから、ヴイーヴルもリスも後を頼んだぞ」


 リス達の応答を聞いて、俺は通信を切る。

 ヴイーヴルは、モンスターを殺しまくってるうちにこっちに来るのを忘れそうな気もするな。


 増援は、期待しないでおこう。

 今の手持ちの戦力だけで攻略には十分だと思える。


「さっさと俺達が片付ければいいということだ。とりあえず攻略の準備を始めるか」

「さっそくパーティーを組みましょう」


 久美子がそう提案する。

 そこに、佐敷絵菜さしきえなや、真藤愛彩まとうあや立花澪たちばなみおの三人もやってきた。


「真城くん……」

「佐敷達も来たのか、状況は理解してるか?」


「突然飛ばされて、何が何だかわからなくて」


 不安だったらしく、絵菜は俺に抱きついてくる。

 その後ろで、愛彩と澪が苦笑いしている。コイツらは結構余裕あるな。


「佐敷、また新しいジェノサイド・リアリティーが始まったんだよ」

「真城くん、私怖い……」


「お前らは瀬木と一緒に街にこもっていればいい。攻略は俺達がやる」


 やってきたのは、絵菜達だけではなかった。


「ワタシの部族の戦士もデスか」

「妾の騎士達もやってきましたね」


 かつてウッサーやアリアドネと共に戦った旧ジェノサイド・リアリティーの討伐者達。

 やはり、みんな街に飛ばされたらしい。


 かつての勇士達が寄り集まる街の広場が賑やかになってきた。

 これは、攻略パーティーを組むのも一苦労だな。


 俺は仕切りとかは苦手だから、ウッサー達に任せるか。

 なんなら旧メンバーで戦ってくれてもいい。


 それにしても、何か忘れてるような……。


「あっ、そうだ。街の見張り役を頼んであった黛京華まゆずみきょうかと、仁村流砂にむらりゅうさはどこいったんだよ。こういう時のために雇ってあったのに」

「そういえば、見ないわね」


 久美子とそう話していると、「真城くーん!」と京華の声が聞こえた。

 しかめっ面した仁村も一緒だ。


「お前らどこ行ってたんだよ?」


 職務怠慢なら、給金減らすぞ。


「ダンジョンの様子が急に変わったから見に行ってたのよ。そ、それどころじゃないわ。あれ見てよ!」


 ダンジョンの入り口を指差す京華。

 入り口から、続々と黒ずくめの一団が出てきているところだった。


 なんだあれは?

 装備はいろいろだが黒いヘルメットに黒いジャケット、黒いオーバーコートを羽織っている。


 行列を作ってダンジョンから続々と出てくるその姿は、まるで軍隊のようだった。

次回5/14(日)、更新予定です。

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