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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第二部 『コンティニュー・ムンドゥス』
144/223

144.次の戦いに向けて

 十名の蘇生が完了した。

 特にこっちのほうに問題は起こらない。


 使えそうな黄泉ハデスのアイテムは預けてもらうが、こちらに残るなり日本に残るなりみんな自由に決めてもらうことにしている。

 俺にとって意外だったのは、久美子の友達だった佐敷絵菜が突然俺に告白してきたことだ。


 それだけでなく、俺を手伝いたいと言ってきている。

 告白に応えるかどうかはともかく、残りたいというものを無下にすることはない。


 危険な任務に就けるのも忍びないので日本から工作機械を輸入して兵器工廠へいきこうしょうを作り、火薬や火器を作ってみるという瀬木の手伝いをしてもらうことにした。

 行き先が鉱物資源と金属加工技術のある後方のバローニュの街なので、比較的安全な任務になるだろう。


「……と、言うわけだ佐敷」

「私は、久美子さん達みたいに一緒に連れってはもらえないんですか」


 俺に付いていきたいと言う佐敷は、お願いするように胸の前に手を組んで俺を上目づかいに見つめてくる。

 うーんそう言われてもなあ。


「こう言ったら悪いが、久美子ほど佐敷は強くないだろ。瀬木のチームは安全な任務だから、俺を手伝ってくれるつもりがあるならそっちをお願いしたい。俺は、もうお前達を死なせたくないんだよ。わかってくれないか」


 俺が佐敷の肩に手を置いて説得すると、そのまま抱きついてきた。

 告白に応えてもいないのにいいのかなと思ったが、そういう雰囲気だったので強く抱きとめてやる。


「……わかりました。瀬木くんのほうで真城さんの手伝いをします」

「わかってくれるか」


 しばらく黙って抱いてたら、佐敷絵菜は納得してくれたようだ。

 こういう時は、くどくど言うより、抱きしめて何も言わないぐらいのほうがいいと俺は経験上知っている。


 なんか孤高とか言ってたのが嘘の様で、女の扱いに慣れだしているのは苦笑してしまう。

 俺も相当焼きが回った。


「でもまた会えますよね」

「ああ、時間ができたらすぐに会いにいく」


 瀬木もそっちに行くんだから。

 俺が行かないわけがない。


 俺達をニヤニヤと笑って見ていた立花澪と真藤愛彩も、佐敷絵菜と一緒に残ると言い始めた。


「そういう事情なら、私達も瀬木くんを手伝ってもいいわよ」

「……絵菜が心配だから」


 どこでも三人で行動している娘たちである。

 もともと瀬木とチームを組んでいたのだから、ちょうどいいだろう。


「瀬木も、こいつらを頼むよ」

「うん。今は人手不足だから、みんなが手伝ってくれるのはありがたいね。こっちは任せておいてよ」


 ジェノサイド・リアリティーで工作機械を手に入れた瀬木の後方支援班は、バローニュの街へと向かう。


 そういえば、佐敷の告白に答えてないんだけど、どうすりゃいいんだろ。

 もう俺はウッサーと結婚してるわけで、今さら好きとか言われてもちょっと困ってしまう。


「なんか、俺は問題の先送りばかりしてる気がするな……」

「いつものことじゃない」


 ぼやいてたら、久美子に笑われてしまった。


「なんでお前まで抱きついてくるんだよ」

「ワタルくん意外とああいうのに弱いのかなと思って、好きよ……」


 そりゃ佐敷みたいなのに言われるから困るわけで。

 処女ビッチのお前に抱かれて今さらそんなこと言われてもなんとも思わん。


 さて、ジェノサイド・リアリティーでの仕事も終わったし、これからどうすべきか。


「ご主人様、ご意見よろしいですか」

「なんだアリアドネ」


「まだ敵の動きは見えませんが、遅かれ早かれ神宮寺らが先導した竜人族と虎人族ならびに熊人族の残党を含んだ大軍と渡り合うことになります」

「そうだな、だからいまそのための準備をしている」


 猫人忍者ってのもいたと思ったが、あいつらはアリアドネですら物の数に入れてないらしい。

 まあ、あれはいるだけ邪魔な存在だから。


「いかにこちらには銃や大砲があるとはいえ、味方が人族だけでは三大種族の圧倒的な兵数を相手にするには心もとないでしょう。まずこちらも、味方を増やすべきかと思います」

「味方と言っても、心当たりがあるのか?」


「何をおっしゃいますか。ご主人様には天人族の祭祀王の娘である私がいるではありませんか。ウッサー殿の伝手を使えば、兎人族の手も借りられるかもしれません。天人族の天空城。兎人族の住む中央平原。どちらも転移魔法があるので行くのは一瞬ですよ」

「そうか、手間がないのはいいな」


「竜人族と虎人族は強大な種族です。それらが世界制覇を目指して西に動き出せば、この大陸全土の脅威ともなります。その脅威を真城国の国主であるご主人様自らが説けば、天人族も兎人族の心も動きましょう。必ずや力強い援軍を獲得できるに違いありません」


 俺が行けばか……そんなに俺を買いかぶられても困るんだが、国主として外交しろというアリアドネの意見は間違ってないんだろう。

 アリアドネにばかり、そういう役割を任せっぱなしにするのもよろしくないだろうしな。


 アリアドネに続いて、ウッサーも言う。


「旦那様。ラビッタラビット族には使者も送ってるから、こちらの情報は伝わってるはずデス」

「なるほど、じゃあ転移魔法でちょちょっといくか。どっちを先にすべきかだが……」


 俺は、アリアドネとウッサーを左右に見る。


「ハイハイ、ハイデス!」


 やけに機嫌の良くなったウッサーが、ぶんぶん手を振り上げた。


「なんだウッサー」

「ワタシは、旦那様にお父様を紹介したいデス!」


「いや、いま援軍要請をどうするかって話をしてるんだが、話を聞いてたか?」


 なんで今そんな話をと思ったら、はにかみながらウッサーが続ける。


「だってほら……よく考えたら実家に結婚の挨拶がまだでしたデス」


 どうやら、ラビッタラビット族のほうから片付けないといけないらしい。

 ウッサーの家族に挨拶とか、いよいよ内堀を埋められているような気がするんだがこっちは先送りにするわけにはいかないらしい。


 どうなることやらだな。

次回12/11(日)、更新予定です。

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