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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第二部 『コンティニュー・ムンドゥス』
141/223

141.久しぶりの風呂

 俺の城に瀬木が風呂に入りに来ている。

 これはもう、誘っていると思っていいだろう。


 みんなには、しばらく男湯だから入ってくるなと言っておいたし、完璧だ。

 俺も脱衣所で服を脱ぎ、ここは何気なく平然と入っていく。


「よお……」

「うあ!」


 じゃばと音を立てて、瀬木が湯船に沈んだ。

 タオルを掴んで湯船に隠れたが、その肢体を隠すタオルはあまりにも小さい。


「せっかくだから、俺も風呂に入ろうかと思ってな」

「そ、そうなんだ……」


 すぐに湯船に行きたいところだが、せっついているように見えるのも良くない。

 俺はまだ、瀬木が女になったと気がついてないという設定である。


 男同士風呂に入るのは、なにもおかしくはないよな。

 なので、ここはあえて洗い場からだ。


 できるだけ一緒に入っていられるよう、さっさと先に身体を洗ってしまう。

 シャカシャカと高速洗いだ。


「それでさあ、さっきの話だけど」

「えっ、なに!」


 俺は身体を洗いながら聞く。

 瀬木は、俺が身体を洗っているタイミングを見計らって、湯船から出てしまうかもしれないので逃げ道を封じる。


 言ってる間に、身体を洗い終えた。

 湯船へと入っていく。


「さっきの話だよ。なんだお前、湯船にタオルつけちゃダメだろ?」

「あっ、えっ。でも……」


 そんな小さなタオルで隠しても、丸見えなんだけどな。

 じっと見てたら、タオルを取らないので俺はさり気なく目を背けて話を続ける。


「まあいいや。話の続きなんだが、現地調達で火縄銃とか作れないかな。ほら、耳の長いエルフみたいなやつも居たんだから、ドワーフみたいなやつもいるだろ、どうせ」

「アハッ、それはさすがに漫画の読みすぎじゃないかな。シルフィード族は、僕達の知ってるエルフとはちょっと違うみたいだよ。それに、僕らの傘下にいる人種には、ドワーフみたいな鍛冶特性を持った人種はいなかった。でも北の街のバローニュには、銅鉱や鉄鉱があって銅や鉄の加工技術はあるみたいだね」


 さすが、瀬木はよく調べている。


「バローニュに鉱山があるのは俺も見た。だったら作れないことはないだろう」

「うん。材料的にはなんとかなる。日本からアサルトライフルを持ち込めるから、現地で急ごしらえの武器を作ることまでは考えてもなかったよ。そうだね、マザーマシンまではいわないけど小型の工作機械なら、持ち込めるかもしれない。数を揃えるという意味では、現地での銃の製造も検討してみる価値はある」


 俺は話しながら、ちろっと目の端で確認する。

 はい、タオルを取りました。ちゃんとマナー守るのは偉い。


 今日のお湯は透明だし、邪魔な湯気もないし最高だな。

 何より、湯船がそんなに広くないのがいい。


 さりげなく横に並んでも、そんなに不自然じゃない。


「どうせ、火薬も作れたりするんだろ?」


 瀬木の言う通り、こういうのは漫画の知識だけど未開地に来たら定番だよな。

 七海はその手の技術書も持ち込んでたし、火薬ぐらいなら瀬木は作ると思っている。


「そうだね。間に合うかどうかわからなかったから言わなかったんだけど、実は火薬も作りたいなと検討はしていた。せっかく環境が整ってるからね」


 瀬木は、恥ずかしそうに頷く。

 綺麗な肩のライン。柔らかそうな肢体を隠さなくなったので、俺はドキドキしてしまう。


「やっぱりそうか。爆薬が欲しいって言ってたけど、実は爆薬も自家製を考えてたりするか?」


「うん、よくわかったね。この都の近くにも、珪藻土があるのを見つけたんだ。ニトログリセリンを作る材料を集めるのはそれほど難しくないから、ダイナマイトだって作れるはず。ただ……理論はわかってても、実際に作ったことないから爆薬の製造実験には危険が伴う。そこが怖いところだね」

「爆発程度なら、魔法の鎧で防げるだろう。俺が持ってるのを貸してやるぞ」


 ドラゴンの炎を弾くような鎧なら、間違って誤爆しても致命傷を負わずに済むのではないか。

 致命傷でなければヘルスポーションで回復できるし、こっちのほうがよっぽど実験しやすいはずだと提案してみる。


「そうかそれなら安全かも、さすが真城くん!」


 瀬木は、もう抱きつかんばかりに身を乗り出してきた。

 ほのかに膨らんだ胸は、もう隠さなくていいのかな。


「あれ、瀬木。前より胸が大きくなってないか?」

「うわっ、どこ見てるんだよ!」


 しまった、声に出てしまった。

 なんとか誤魔化す。


「いや、すまん。気のせいかな」

「もう。あんまりからかうと怒るよ」


 あれ、意外と怒ってない。

 恥ずかしそうに頬を赤らめているから、あんまりジロジロ見るとさすがに悪いから見ないけども。


 うーん、お湯に使って火照ってるせいか。

 瀬木の色気は何倍にも増してる。


 湯気から香り立つ女の香りがもうムンムンだ。

 より女性らしくなっていく、瀬木の身体の変化は気になるよなあと思いながら、俺は背を向けた。


 そして、今度は俺が叫び声を上げそうになった。

 振り向くと、バスタオルに身体を包んだ久美子が俺の目の前にいたのだ。


「く、久美子。なんでここに……」


 なんで、俺達の憩いの場に乱入してるんだよ。

 男湯だから入るなって言っておいただろ。


「ねえ、ワタルくん。瀬木くんもそうだけど、その茶番いつまでやるつもりなの?」


 俺をジト目で見つめる久美子は、そうつぶやく。

 あっ、これ瀬木が女だってバラされるパターンだなと、俺は気がついた。


「な、何の話だ!」


 俺は慌てて誤魔化そうとしたが、久美子は「みんなも早く来なさいよ」と脱衣所のほうに呼びかける。


「お前ら……」


 ウッサー、和葉、アリアドネ……ついでにリスが続く。

 全員バスタオルを身体に巻いて、風呂に入る気まんまんであった。


「お前ら、いまは男湯って言っただろ。瀬木がいるんだぞ!」


 振り返ると、瀬木はお風呂場の端っこで縮こまっている。

 久美子は間髪入れずに言った。


「もう隠さなくてもいいわよ。瀬木くんが女の子になったことは、みんなもう知ってるんだから」

「ああー!」


 こいつ、ついにバラしやがった。


「ワタルくんも、『ああー!』じゃないわよ。本当にバカウサギ達はだらしないんだから。私が来たからには、瀬木くんは男だからとか、そういう誤魔化しみたいなのはなしにして。この際だから、ちゃんとハッキリとしてもらいますからね」


 久美子は、何を言っているのか。

 ウッサー達の含みのある表情を見ると、なにやら申し合わせてきた様子だった。


 ハッキリさせるってなにをだよ……。

次回11/20(日)、更新予定です。

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