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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第二部 『コンティニュー・ムンドゥス』
139/223

139.カーンの都の内政事情

 七海と内政面について相談する。


「ふむ。『再生のコイン』が四枚か……俺達が神宮寺と戦ったせいか、七海が進めてる内政の効果か」

「もしかすると、その両方かもしれないね」


 俺達が世界を変えるごとに報奨としてリスが出す『再生のコイン』。

 敵を倒すと出てきたのだが、畑仕事で出てきてもおかしくはない。


 俺がバルドの都を攻める間にも、どんどん集まってくる人族達を使って七海は内政を進めている。

 なにせいま寄り集まってきているのは、ほとんど難民である。


 敵が攻めてくることがほぼ確定なので軍事も大事なのだが、それよりも農作業を急がなければならない。

 それほどに、カーンの都の食糧問題は切迫している。


「畑のほうはどうだ?」

「機関銃の弾薬が豊富に手に入るようになったから、モンスター退治は容易になったし広大な農地を管理できるようになってるよ。なにせ人手だけはいくらでもあるからね」


 もともと、人族は農奴になっているものが大多数だった。

 戦闘には不向きでも、畑を耕すのならばこれほど向いている人材はいない。


「生産が間に合うかだな」


 寄り集まってきた人口を食わせなきゃならないだけではない。

 軍を動かすにも食糧はいるし、籠城戦なんかの展開になれば食糧不足は致命傷になる。


 七海の視線は、俺の後ろに隠れている和葉に向く。


「できればその、和葉が生産している食糧も供給して欲しいんだけど」

「……」


 押し黙っている和葉に俺が声をかける。


「そう言ってるが?」

「もちろん。私のものは真城くんのものだからあるだけ全部使って」


 七海は、それに「そ、そうか。そうだね……」と返す。

 なんだこの空気。


 俺をいちいち緩衝材にして会話するの止めて欲しいんだが。

 和葉は、俺にごにょごにょと耳打ちしてくる。


「食糧が足りないなら、『庭園ガーデン』の土ごと持って行ってここで農業すればいいんじゃない。私それぐらいやるよ」

「そうか、その手は使えるかもしれない」


 いいアイデアだ。『庭園ガーデン』にある三日で作物がなる土自体を運んでこちらで農業する。

 上手くできれば、ほぼ無尽蔵に湧きだす食料工場みたいなる。食糧問題は、それで解決するかもしれない。


「車で来たから、運べる量に限りがあったの。無限収納リュックサックを使って、真城くん達の転移の魔法で運んでもらえれば大量に運べるんじゃないかな」

「よし、じゃあそうしよう。ウッサー、久美子、アリアドネ。話は聞いてたな、『庭園ガーデン』からの輸送を手伝ってくれ」


 というわけで『庭園ガーデン』から土を移入して高速栽培が可能か、試験農場で実験が始まった。

 それはそうと、七海は和葉に何度も話しかけようとしたのがやっぱり上手くいかない。


 和葉はずっと俺についてくるし。

 七海が近づいてくると、俺の影に隠れしまう。


「お前ら、いちいち話をするのに俺を巻き込むなよ」

「私は真城くんのために来ただけだから、七海くんは関係ないし」


 あー、七海が落ち込んじゃったよ。

 リーダーであるこいつに落ち込まれても困るので、フォローしておくか。


「七海もよく働いてくれてるんだ。和葉の気持ちもあるだろうが、仕事の話ではちゃんと対応してやってくれ」

「わかった……」


 和葉が、俺の腕を掴む力が強くなった。不本意なのはわかるがな。

 和葉にだけ譲歩させたような形になるので、七海にも言っておく。


「七海、お前の取り巻きの女どもがまた和葉をいじめる可能性もあるから、ちゃんと場所を考えて話せよ。お前は、周りの悪意に鈍感なところがあるから気をつけろ」

「もちろんだよ。もう二度と和葉を傷つけないように、僕は気をつける」


 そうは言っても、根が善良な七海には人の悪意を調整するのは難しいのかもな。

 なんでもできるやつだと思っていたが、そうでもないのだ。


 なんでもできるやつなんて、どこにもいない。七海は、好きな女一人守ることもできなかった。

 かつて、瀬木を守りきることができなかった俺に言えた義理でもないが。


 大事なものを大事にしなかった後悔だけは、もうしたくないものだ。


「そういや七海。瀬木は、どうしてる?」

「購入した機関銃やジープの調子を見てるよ。瀬木くんは、どうも新しい兵器に興味があるみたいだね」


「あー、あいつ結構ああいうの好きだもんな」


 瀬木は手先が器用で、機械いじりは得意だ。ジープや兵器に興味を持っても不思議はない。

 いい運用法を考えてくれるかもしれないな。


 それにジープに乗って後方で機関銃を撃っているだけなら、万一のときもすぐ逃げられて安心だ。

 瀬木には、そっちを担当してもらっていたほうがいいな。


 俺が新しい役割分担に頭を悩ませていると、久美子が笑ってるのが癪に障った。


「なんだよ久美子。何がおかしい」

「いや、ワタルくんがすっかりリーダーらしくなってきたなと思って。すでにここはワタルくんの王国だから、王様らしくというべきなのかしら」


「ふん。久美子も、さっさと食料や土を運ぶためにジェノサイド・リアリティーのほうに飛べ」

「はーい」


 そりゃ俺だって集団戦なんて向いてないと思うさ。

 本音を言えば、一人でやってるほうが気楽だが。


 それでも、敵軍が迫ってきている今は、ちゃんと考えて動く。

 もう二度と敵に友達の命を奪わせないために、やれることはやっておく。


「なんだ、リス?」

「ご主人様、コインがもう一枚でてきた」


 これで五枚。

 まだ、何もやってないのに何が反応したのやらだな。


「七海、そっちも忙しいだろうが。蘇生はしておいたほうがいいだろうな」

「そうだね。新しい戦力になってくれるかもしれない。こっちの段取りが終わったら、すぐに向かうよ」


 十人を生き返らせることができるのは大きい。

 味方が増えなくても、持っている黄泉ハデスのアイテムぐらいは徴収できるしな。


 次に誰を生き返らせればいいか、俺は考え始めていた。

次回11/6(日)、更新予定です。

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