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ジェノサイド・リアリティー  作者: 風来山
第二部 『コンティニュー・ムンドゥス』
138/223

138.本拠地の移動

 目を覚ますと、身体がずっしりと重たいことに気づく。

 俺の頭の下にあるのは、ウッサーのバカでかい胸だ。


 俺の胸から腹にかけて体重を思いっきり乗せて抱きついてるのが久美子で、足元にまとわりついているのはアリアドネである。

 本来なら、寝苦しいことこの上ないのだろうが、こんな状態にも慣れてしまった。


「ふん」


 肉布団というのかな。

 いまでは、適度に身体に重みがかかっているほうがよく眠れるぐらいだ。


 まあ、目が覚めたら邪魔なので、即座に払いのけ……起き上がってもガッチリと抱きしめた手で締め付けているので、久美子が離れない。


「おい久美子」

「なんだ、起きたの」


「起きられないんだよ。アリアドネも、寝たふりしてんな。いい加減にしないと蹴るぞ」


 なんでさらに力を込めて抱きつく。

 足にまとわりついているアリアドネも、これがガッチリと外れない。


 バルドの都での戦いで、三人を危険に曝した負い目があるので、好き勝手やらせたらこれだ。

 もういい、力ずくでも外してやる。


「アリアドネ、外しちゃダメよ」

「ご主人様は休憩が足りておりません」


「お前らなあ」


 何で朝っぱらから、二人相手にレスリングやらないといけないんだよ。

 一番マシなのが、俺の枕に徹しているウッサーだったりする。


「旦那様、その二人をどかすのを手伝いマスか?」

「いや、これぐらい俺一人でなんとかしないと。ウッサーは大人しくていい子だな」


「えへへデス」


 さすがに、このハイマスターランクの三人に一気に寝技に持ち込まれると俺も身動きが取れなくなるから、ウッサーが手出ししないのはありがたい。

 考えてみれば、これもいい演習か。


 この二人ぐらい一気にねじ伏せられなければ、虎人と竜人の祭祀王二人を同時に相手にして戦うなんて真似はできないだろう。

 俺はすでに最終ランクまで強くなっているが、戦闘経験は別だ。


「おらぁ!」

「ワタルくん、甘いわね。体術でマスター忍者に勝てると思ってるの。力ずくじゃ、ダメよ」


「やるじゃねえか。うあぁ、それはやめろアリアドネ」

「すみません。つい」


 ついで、足の裏を舐めるな。

 何を考えてるんだよ。


 思わず力が抜けて、久美子にガッチリとホールドを決められてしまった。


「それは、反則だろ」

「ワタルくん、甘いわね。敵がどんな手を使ってくるかわからないのよ」


「さすがに、足の裏は舐めねえだろ!」

「敵の竜人の祭祀王だって女じゃない。女の武器を使ってくる可能性もあるわ」


「む、まあそうか」


 忍者らしい意見であるとはいえる。

 おもわず説得されてしまう。


「ご主人様、ではお舐めしても?」

「しょうがない。その代わり、こっちも顔を蹴るぞ」


「構いません。むしろ足蹴にされるのは本意です、では!」

「ではじゃねえよ。うあぁ、やっぱダメだ。やめろ、うははは!」


 アリアドネは、ガッチリと足首を固めながら、足の指を舐めまわすという器用な真似をしてくる。

 くすぐったくてたまらん。


「あら、ワタルくん意外とこういう攻撃に弱かったのね。私もやってみようかしら」

「ちょっと待て、よく考えたら最初からホールドされた状態でスタートって、おかしいだろ!」


 こっちが不利すぎる。

 抗議も虚しく、久美子が俺のシャツに顔を突っ込んで、腹に舌を這わせた。


 クソッ、なんでがっちりハマってて腕が抜けないんだ。


「うあぁやめろ、アハハハハッ」

「おへそが弱いの?」


 マジでやめろ。

 くすぐったい、笑い死ぬ。


「久美子達だけずるいデス。やっぱり、ワタシもやるデス」

「ウッサー顔舐めんな。なんでこんな、ぶぁ!」


 結局、ウッサーまで絡んできて、俺は解放されるまで嫌というほど女どもの唾液でベトベトにされてしまった。

 もう二度と、こいつらの勝手にさせねえ。


「はぁはぁ……」


 なんか、やたら喉が渇いた。

 這々の体で、やたらバカデカイサイズの熊人族の祭祀王用のふかふかベッドから抜け出す。


「はい、真城くん。お水」

「ああ、ありがとう……和葉。なんでここにいる!」


 水を差し出したのは、ジェノサイド・リアリティーの迷宮にこもっているはずの竜胆和葉りんどうかずはだった。


     ※※※


 リュックサックの中を確認すると、ちょうど『遠見の水晶』で呼びかけてきたのは、ジェノリアの町を監視してる黛京華まゆずみきょうかだ。


「あっ、真城くんやっと出た。ジープの第二陣がそっちに行ったんだけど」

「ああ、引きこもってた和葉がこっちに来たっていうんだろ」


 俺に水を差し出した和葉は、にっこりと微笑んでいる。


「なんだ、もうついてたのね」

「こっちもいろいろ忙しくて連絡しても出られなかったのは悪かったが、もう少し早く教えてくれ」


「そう言われても、こっちも和葉さんが出てくるなんて思ってなかったから気づくのに時間がかかったのよ」


 それはそうかと思った。

 俺ですら、引きこもっていた和葉がこっちに来るとは思ってなかった。


「油断は禁物ってことだな。何が起こるかわからないから、そっちの監視も怠るなよ」


「はーい」

「引き続きよろしく頼む。礼は弾むから裏切るなよ」


 通信を切る。

 まあ、あっちはさほど心配ではないのだけどな。


 神宮寺達は、どうせ戦争をやる気になってるだろうから。

 こっちに攻めこむ部隊の編成に忙しくて、裏側にあるジェノリアにちょっかいかける余裕はない。


 かなり数に劣るこちらの唯一のアドバンテージは、技術力だけだ。

 軍事用のジープやミニミ軽機関銃や106ミリ無反動砲などを、本拠地にしたカーンの都に運ぶ輸送ルートの確保は必須である。


「それで、なんで和葉はこっちに来たんだ?」

「だって真城くんの家は、こっちに移ったんでしょう。こっちが家なら、私がいなきゃダメだよね」


 和葉は鋭い。

 神宮寺達が、あれほどの大軍を構えてこっちに攻めてくる以上、作戦根拠地とするにはジェノリアは遠い。


 アリアドネの勧めもあるが、カーンの都を本拠地にしようと思っていたところだ。

 何の情報もないのに、どうしてわかったのか。


「しかし、和葉はこっちにきて大丈夫なのか?」


 他の女子とか、七海とも折り合いが悪いから引きこもってたんじゃないのかと思う。


「私は、真城くんが居てくれれば大丈夫だから」

「んっ、そうか……」


 和葉がそういうのは、俺が居なきゃダメってことなんだろうな。

 まあ、来てくれたのはありがたい。総力戦になるから、和葉の力も欲しいと思ってたところだ。


 俺から水を飲み干したコップを受け取ると、和葉が擦り寄ってくる。

 それと同時に、ギギギッとやたら立派な大扉が開いて、七海とリスが入ってきた。


「これは済まない。お取り込み中だったかな」


 入ってきたが、七海は目を伏せる。

 何が取り込み中なんだと思って振り向くと、ウッサー達が裸みたいな格好をしているからか。


 そういえば、俺も寝乱れて酷いことになってる。

 レスリングしたから余計だな。


 俺もそこらへんのデリカシーがないのは良くないと思うが、七海もいい加減慣れればいいのになと思いつつ、俺達は和葉が渡してくれる上着に袖を通した。

 ちゃんと全員分の服を用意しているあたり、和葉の主婦スキルは高すぎる。


「よし、話を聞こうか」


 七海がまず説明するには、たてつづけて四枚の『再生のコイン』が出たという話だった。

 リスが得意げに差し出してくるコインを見て、バルドの都を攻めたのも無駄ではなかったかと思った。

次回10/30(日)、更新予定です。

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