聖者達part アルザール城での居住生活-8
タイトルが重複してたので修正しました。7が二個あって混乱した方すみません。
塔子ちゃんの部屋になるはずの部屋には、沢山の酒瓶が並べられていた。とても広い部屋になっており、何千本………いや、何万本もの酒瓶が棚に並んでいるような状態だった。酒の棚はまだまだ奥に続いており終わりが見えなかった。棚の反対側ほシンプルな作りだった。
一目見た感想は、個人でこんな大きなワインセラー持っている人なんていないだろ………と思う程でかい部屋でした。…………でもなんでこんな部屋を塔子ちゃんの部屋として渡そうとしているのだろうか?と思っていると、ガンさんが部屋の方から筋肉質な人形に何か大きな箱を何個か運ばせてきていた。
「蝋人形師と聞いていたから一応それなりに良い環境にしてある部屋にしたんだ。この部屋は室温を自由に変えることができるし、作業のための道具も揃っているしね。自分の道具が持って来れていなかったら使っても良いよ。お酒は成人するまでは止めた方が良いけどね。」
「……………まぁ、お酒は飲まなければ気にすることもありませんし、室温の調整が簡単なことは良いですけどね…………。」
そう言いながら塔子ちゃんは自分のSWを操作していた。何度か難しい顔をした後、途端に青い顔になって落ち込んでしまっていた。多分、自分の使っていた工具が持ち込めていなかったんだろう。まぁ、塔子ちゃんは一回学校の中に持ち込んでいた時に壊された経験もあるから学校には持ってきていなかっただろうし………。
「まぁ、学校には持って来れていなかったから仕方ないけどさ……商売道具持って来れてないのは私だけじゃ無いだろうし。」
「………確かに、シロは漫画の道具とかは持って来れてないだろうけどさぁ…………。塔子ちゃん程のダメージは無かったんじゃあ無いかなぁ……?」
「………放って置いてくれないかな………。道具だけに頼るわけにもいかないから、どんな道具でも使いこなすのに努力するんだけどさ。」
そう言って塔子ちゃんは道具を手に取っていた。それは多少不格好だけれども、塔子ちゃんの手にしっかりと馴染んでいた。しかし、蝋が無ければ何も出来ないんじゃあ………と思っていると、ガンさんの動かしている人形が塔子ちゃんの部屋にいくつかの樽を置いていた。
「蝋はそこに置いておくよ。私の流通ルートは後で教えるけど、今回は餞別だね。次からは自分で買い付けに行ってよ~。」
「はい、選別ありがとうございます、ガンさん。」
樽の中には大量の蝋が入っていた。多分蝋人形の制作のために使えという事なのだろう。僕はそう思いながら少しドロドロしている蝋を見て、塔子ちゃんがどのような蝋人形を作り、戦うのかが気になったのだった。
「じゃあ私はここで明日のために制作するから、ここに籠もるよ。夕食になったら呼びに来てね、出雲っち。」
「分かったよ、塔子ちゃん。」
「す、すいません………出雲様、私も部屋の方に行かせてもらいます。塔子様に依頼して私も人形を作ってもらっておきたいですから。」
「まぁ一つも二つも変わらないけどね………。」
「私も蝋人形ができる所見てみたいです!!」
そして、そのまま塔子ちゃんの部屋に花多美ちゃんやアンシュルテちゃんまでもが残ったので僕の部屋の見学に来る人数は少なくなっていた。………アンシュルテちゃんは明日のネタバレを間近で見るというか一応明日は敵チームじょ無かったっけ………?
僕はそう思いながら塔子ちゃんの部屋を離れ、自分の部屋になるであろう部屋に向けて歩き出した。そこで、ふと思った事をナトさんに聞いてみた。
「そういえば塔子ちゃんの部屋の持ち主はどんな人だったんですか?聞いてなかったですけど……。」
「あぁ………あの部屋の持ち主はなぁ………カシュートという、大酒飲みの魔法使いだったよ。先代によく酒飲みで勝負しては負けて酔いつぶれていたよ。言っておくがバベルの部屋にあるのは全部アイツがコレクションしていた酒だ。」
「どれだけ飲んでいたんですかね…………その人。」
「一日で軽く80本は飲んでいたな。少しでも飲む量を減らしていれば後400年は生きていたような奴だったな。なかなか楽しい奴だったから亡くなった時は本当に俺は一週間泣き潰れていたな……。」
「どれだけ涙脆いんですかって………なんで皆さんそれがナトさんにとって普通って顔しているんですか……。後酒については僕らの世界の人間はその半分行く前に酔いつぶれますよ。異常な程強ければ別ですけど…………。」
一応知人の叔父が酒屋を経営しているけれど、酒瓶65本まで一日で飲んでその後平均台の上を逆立ちで渡りきったという逸話を持ってはいるけど、その後日談に肝臓関連をやっちゃって入院したという事もある。ちなみにその知人はこの世界には来ているものの別の国にいるので、もしこの話をしたら食いついてくるだろうなぁ……と思いながら相槌をうつ。
「アイツは酒なら何本でも買っていたな。そのせいでサーティの部屋の数倍の広さになっていたはずだ。地下20階ほどはあるぞ。」
「また爆破のあの人関連の常識破壊ですか………?」
「そうなるな。ここの酒瓶の数は兆を超えるだろう。」
「ワインとか腐らずに平然と800年前の物も残っているしね………。」
「アイツがよく飲んでいたのはブラフワゾールっていう来電葡萄を使ったワインだったよ。来電葡萄というのは雷がよく落ちる山の木になっているという黄色い葡萄の事で………」
ここで、ジルフェさんが割り込んできていた。多分英雄関連で何かあったのだろうと思う。解説がナトさんから一時的にジルフェさんにバトンタッチしていた。
「来電葡萄の由来にはこんな昔話があります。昔、鳥人の王国では弱虫な騎士の見習いだった後の英雄アマツバメが勇気ある鳥人へと変わった瞬間のエピソードとして使われているのです。」
「…………色々あるんですね、食べ物の名前の由来にも。」
きんぴらゴボウなどにもそんな感じで名前がついていた覚えがある。その金平という男の様に強くなって欲しいとかどうとかだったと思う。…………これは果物じゃなくて料理の名前だった………。
「この葡萄は現在は意図的に雷を落として葡萄の木に雷属性の魔力を流し込み、実の色を黄色に変えていますけど、アマツバメの時代では自然に起こる雷のみでできる物だったためか、かなり貴重な果物だったと言います。」
そして、昔話が始まるのだった…………これ、本当に英雄談なのかを疑うほどの童話な感じがあったのだけど。まぁ、僕は自分の部屋を見る前の楽しみとして、昔話に耳を傾けるのだった。