聖者達part アルザール城での居住生活-4
次にサーティさんの作業机に言ってみると、ティーポットなどが何個か置かれている他、写真立てに入れられたセシナさんであろう人の絵が収まっていた。………どうやらこの世界ではあまり写真という物は流通していないらしい。殆どが絵で書かれていた。もっとも、写真のように精密な絵なのだけど。
しかし、セシナさんの絵はたいそう可愛い女の子で、正直に言って五手で60万の軍を全滅させたとは思えないような可憐さがあった。まぁ、それを言うならガンさんやジルフェさんも一見強そうに見えない見た目であるために、この世界では見た目に騙されてはいけないのだろう。
「サーティの所も結構なおしどり夫婦なんだけど、ルカナと比べるとそこまでなぁってなると思うよ。あ、これ渡すの忘れていたなぁ………。ここに置いておくか。」
「いや、渡すのは忘れないであげてくださいよ……。」
ガンさんはそう言いながら何かの紙を机に置いてからサーテさんの部屋を出た。なんの紙なのかを見てみると、アルクレーガンとシェイヌケーテからの注文票らしい。シェイヌケーテの一部の女性もティータイムを楽しむ者もいるらしく、それなりに多くの茶葉が注文されている。
「……………とゆうか、この部屋の植物の中に緑の茶が育てられているとかって話は無いですか?僕達の世界では茶の色が薄い緑色だったんですけど。」
「今の所は無いね。よくて漢方茶が茶色になるくらいかな?でもサーティに言えば研究はしてくれるかもしれないしね。」
つまり、僕達が元の世界で常飲していたような緑茶などは研究すらされていないらしい。加工の方法で変わるのが元の世界での常識だけど、茶の研究をしているサーティさんは色自体は変わらないという記録を残していたのでやはり緑茶や抹茶を飲むことはしばらくは無理なのだろう。花多美ちゃんがとても残念そうな顔をしていた。
「じゃあ次はジルフェの部屋にしようか。まぁ、アンシュルテは部屋を見せたくないだろうし、ヒルージュの部屋はレイアウトの参考にはできないし。」
「は、はい!少しでも参考にしていただければと思います。私の部屋もあまり参考にできそうに無いですが……。」
とゆうことで、今度はジルフェさんの部屋になった。まぁ、道中ヒルージュさんの部屋を覗き見て悲鳴をあげながら塔子ちゃんが気絶したり、アンシュルテちゃんの部屋をわざとらしく間違えて開けたガンさんがファンシーな部屋にしているアンシュルテちゃんをからかったりしていた。
ちなみにアンシュルテちゃんのお気に入りのベッドはかなり白く、雲みたくふわふわしていた。その系統で他の家具も統一されていたのだった。そのシリーズはクラウンハルトというブランドらしい。星のクッションが使いやすそうで可愛いデザインなのでどこで買えるのかを聞くと、アンシュルテちゃんは嬉しそうに話してくれた。しかし、アンシュルテちゃんはあまり本を読まないのか自分で買わないのか、本棚は殆ど空だったのである。
しかし、その話を子供らしいと思って恥ずかしくなったのか、すぐにクッションなどをSWに仕舞い込んでいっていました。その作業は五分ほど続き、その後アンシュルテちゃんは皆を部屋から追い出してから数分で部屋から出てきました。
「よ、ようやくジルフェの部屋………。ジルフェの部屋もかなり考えられていますよ………。シリーズじゃないですけど…………。」
「とゆーかもう隠さなくても良かったのでは………?」
アンシュルテちゃんが部屋を隠すために奮闘した結果、息切れをしており、そのまま休めば良いものを意地でもあるのか着いてきていた。
「私の部屋は、大体こんな感じですね…………。少し散らかっていますけど……。」
「…………十分綺麗だと思う。」
ジルフェさんの部屋を一目見た感想は、本が多い。それだった。四方が本で埋め尽くされている中、中心にベッドと机、日用品の入っているのであろうタンスが置かれていた。タンスの上にも数冊本が置かれていることは置いておくとして………。ジルフェさんの机の上には書きかけの絵本が数冊あった。多分ガンさんの物語のだろうと思う。
「こちらのスペースには沢山の本があるんですけど、読みたかったら貸し出します。でも、汚さないでくれると助かりますね………。」
「その申し出はありがたい事にしても、何冊あるんですか………もう書庫と言っていいほどの数なんですが…………。」
「歴史書の他に英雄の使っていた魔導書のレプリカや図鑑なんかもあるからね………。普通の物語も置いてあるけど、歴史書はかさばるからねぇ………。でもここよりもこの城の地下にある書庫の方がよっぽど大きいけどね。あそこにはまだ未読の本かたくさんあるし、解読できていないのも多いしね。魔術やらがあったり昔の細かい歴史もあるから解読も頑張っているんだけどね……。」
その言葉に僕はとても驚いた。目測だけでもジルフェさんの書庫の広さはバスケコート二面分の体育館の倍ぐらいはあるように見える。それを遙かに凌ぐ?そう思うと頭が痛くなってきた。このアルザール城は爆破のあの人の力で広さがおかしくなっているのに元々その広さらしいからだ。
「しかも、あの書庫の本の中には魔法が使われた暗号になっているから余計にか解読が難しいんだよ……。先代はかなり簡単にやっていたけど私達だと一日でなんとか一ページできるくらいだし……。」
「確かになぁ………。ここには俺もかなりの年月暮らしていたが先代団長のヨウラクは一日一冊のペースで解読していた。力加減を間違えれば修復しないといけなくなるから大変なんだよ………。」
「俺もやってみたが、力を入れすぎたからか本が弾けてしまった。修復まで二ヶ月もかかったんだ。ヨウラクは俺を閉じこめていた結界は軽く外したがあれは範囲が広かったから力が分散していただけで、本の文字みたいな小さいものなら先代も解くのは難しいだろうな。」
その書庫にはニグルさんやナトさんも行ったことがあるらしい。そして、その解読した本の中には、魔導書として使えるものや、この時代に語られる前に朽ちていった英雄の話などの他にも色々あったらしい。少し興味は沸いたのだけど、とりあえず次の目的地としてクトゥールさんとココちゃんの相部屋を見に行く事になったのであった。