聖者達part アルザール城での居住生活-2
先にルカナさんの部屋に行くと、そこはかなり殺風景な部屋に見えた。いや、家は別にあるので仮眠用の部屋になるはずだからそうなのかと思えば、そこにはローネさんらしき人物の絵やステンドグラスなどがあった。それに、ローネさんらしき人の形をした抱き枕もあった。そこには長い髪を後ろで括っている目つきが鋭く、綺麗な女性と言うよりはかっこいい男性な絵が書かれていた。
「……………とゆーか、ローネさんは男前な顔だなあ………。女性だけど。」
「…………クロ、人の事言えない。」
「きゅっ!(クトゥールは言ってないから大丈夫)」
「でも、双子だったとしても男前すぎるような……。」
「元々サーティと一卵性の双子だしね。むしろサーティよりも男前かもね。まぁ、性格は別としてだけど。」
ついでに言うとこれは描かれている人の体温や香りも再現されているというアイテムらしい。とんでもない抱き枕だなぁ………そこまでローネさんの事を愛しているんだなぁと思っていたら、おそらくルーネとロッカというルカナさんとローネさんの間にできた双子を模したのであろうぬいぐるみもベッドの上に転がっていた。ちなみにベッドはデフォルトのままの状態だった。ガンさんはハンモックで寝ているらしいけど、寝心地はどちらがいいのだろうか………と思っているとガンさんはこう言うのだった。
「私は寝間着の分だけで十分ぐっすりと寝られるからハンモックで良いんだよね~。まぁ、ベッドとかにしていたら作業場所から移るのが大変だし広くなった時に一々移動させるのも面倒だしね。」
「広くなるって、どういう事ですか?」
花多美ちゃんがそれを聞くと、ガンさんは少しだけ顔を明後日の方向に向けながら話し始めた。それは、私達こ知る由も無い元テンペストのメンバーで亡くなった人の話だった。あの、元王妃の部屋の持ち主の人の話だけど。
「あぁ、爆破のあの人がねぇ…………この城にある仕掛けをしたんだよ。あの人の能力は破壊する事。常識も記憶もだけど。でも、いくらなんでもアルザール城内で名前を呼ばれると冥界から意識だけ戻って誰かの体で遊ぶって事をしているんだって事はやめて欲しいかな………って思うんだ。あの人と先代にはあまり勝てる気がしないから。」
「サーティさんが取り憑かれた時には城の中が煙だらけになっていましたし、からかいでユンクさんに取り憑いた時にはたまたま来ていたシータさんの心を弄んだりもしてましたし………。それでも二人の仲はなぜか進行しませんでしたけど。」
ユンクさんとシータさんっていつまでその調子なのだろうか?いや、早くくっついて欲しいというのは変わらないんだけど反動で周りに甘々なムードを振りまくバカップルになれれるよりはマシなんだけどね……。
「わ、私に取り憑いた時には私一人で洞窟の奥深くまで行かされて、それで怖い物が出るときだけ意識が戻りました…。怖かったです……。あぁ、やめてください!!目が覚めたらいきなり熊の死体なんてやめてください!!しかも小熊が襲いかかってくるのもぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「きゅー。(あの時は苦悩の梨が洞窟からてくさん飛んできて大変だったよね…………)」
「正直パニックになったアンシュルテが一番手に負えないからな………。」
アンシュルテちゃんやココちゃんは分かるとしても、ガンさんやナトさんまでもが明後日の方向を向いていた。死んだ後でこれなら死ぬ前にはさらにとんでも無い程の自由人でありトラブルメーカーだったのか………と思ってしまう。
「あの人は先代より100歳程年下だけど強さは互角だったような………。団長が奥の手の奥の手でようやくまともに戦えるんですよ?正直ナトさんと団長よりも強い人は大体化け物です。絶対にそうです。」
「それが適応される人間を俺はその二人しか知らねぇよ………。」
アンシュルテちゃんはそう言いながらオドオドしている。どうやら洞窟関連の事が頭の中を駆けめぐっていったらしい。余程怖い思いをしたのではないだろうかと思ってしまう。逆にクトゥールさんは斜め下を見ながら呟いていた。
「まぁ、あの人は能力が滅茶苦茶だったんだよ。対象にした物を破壊する能力、相手の攻撃の方法を破壊する能力………で最後に常識を破壊する能力。この三つがあれば大抵の人間には勝てるよ。最も先代は勝ったけどね。」
「いや、完全にチートですよそれ。その人どれだけ強いんですか。」
やっぱりテンペストの団員達は規格外の人が多いらしい。元奴隷の団長、元魔王の副団長に死なないドM、見た目ロリ、ドラゴンイーター、サボり魔、研究者、英雄変化者、女インキュバスに妖狐………………かなりの規格外だなぁと考えてしまうのだった。まぁ、後にこの中ではナトさんやニグルさんしか知らないようなテンペストのメンバーの話もあったために、僕達はこの騎士団はやはり途轍もない人間が集まるなぁと思ったのだった。
「それで部屋の方にした細工が、コレクションする物が多くなると徐々に部屋が大きくなるという、『部屋は都合のいい空間でできた物ではない』という常識を破壊して作られたんだよ。だからルカナの部屋は私と比べてみると狭いように見えるでしょ?」
「…………確かに、三分の二ぐらいの広さにしか見えすね…………。」
「まぁ、その細工をした本人の部屋に私は一回も入った事は無いんだけどね。入ったことのある人は先代ぐらいかな。あの貼り紙も先代の貼った物だしね。」
まぁ、そんな話をしながら僕達は甘々な雰囲気を醸し出しているルカナさんの部屋を出ていくのであった。………もしサーティさんがルカナさんの賃貸の保証人をやめたらこの部屋に住みそうだなぁと思いながら僕達はサーティさんの部屋に向かうのだった。