聖者達part 王都の商店街にて-4
「あ、アーサーさんじゃないですか。どうしたんですか?こんな所に………私は姉さんと露店巡りをしていた所です。」
「…………ソネット、こんな奴に話しかける事などありません。馬鹿なアーサーに染まってしまえばかなり残念な女性になってしまいますよ?」
「…………姉さん、同じ国の騎士団長同士仲良くした方が良いと思うよ?少なくとも私はそう思っているけど……。」
「ソネット………あなたはこの男が良い人間に見えていそうですが私は違います。この男には着いていかず私の側にいなさい、ソネット。」
「…………なんで姉さんってアーサーさんを敵視するんだろうね………。良い人なのに。」
ソネットと呼ばれたベルさんを姉さんと呼ぶ女性は童顔なのか本当に若いのか子供らしい顔立ちで、髪はベルさんと同じ緑色の髪だった。多分ベルさんの身内なのだろうと思った。因みに髪型はベルさんのポニーテールとは違いソネットさんはおさげたった。
「あぁ、なんだコイツ等の案内をしていたのか。」
「あ、その方達がどの騎士団に入らなかった人達なんですね。姉さん。」
「……………あぁ、そうだな。って、もうこんな時間じゃねぇーか!!すまん、大変不本意だがベルに案内任せる。ソネットはコイツ等がヘマしないように見張っといてくれ!じゃあな!!」
アーサーさんはそのまま露店から出てしまった。後ろを見るとベルさんは清々したという顔なのだが、ソネットさんは少し残念そうな顔をしていた。その顔はアーサーさんがここから去った事が原因なのだろう。………多分、恋しているんだろうな、ソネットさんは。そう思っていると、ベルさんが私を手招きし、近付いた私の耳に向かってこう言った。
「あなた方にはもう話してあるように、私から母からの愛情を注がせなかったアーサーが嫌いだと言いましたが、もう一つ、私の可愛い可愛い妹のソネットの心を盗み、私から離れさせようとしているアーサーという馬の骨も嫌いです。あれが盗賊であったならすぐに殺していますね。」
「…………ベルさんってシスコンなんですか?」
「悪いか?私は妹のソネットが大好きなんだ。父からもあまり愛情を感じなかった私に唯一、家族の無垢な愛をむけてくれるのがソネットなんだ。大切にしたくもなる。団長という立場を乱用して常に護衛を付けておきたい程にな。」
「すみません、最後の部分だけは共感しにくいです。」
「まぁ流石にそこまではできていない。とりあえず『鷹の目』のスキルを持つ団員に監視させているわけだが………やはり、アーサーといる時に笑顔になるらしい。」
…………ソネットさんは今、早瀬とアクセサリーの方を見ていて全く聞こえていないと思うので気付かれてはいないだろうと思う。もし聞かれていたらどんな言葉がソネットさんの口から聞けるのかと思ってしまう好奇心がないわけでもないがここでは抑えておこう。そして私は話題を変えるために露店の奥の方には何があるのかを聞いてみた。
「あぁ、あそこには短剣などの武器が置いてある。基本的に鞘付きだから扱いには困らないが、◎5ぐらいの物までしか置いていないぞ。」
「……でも、私としてはこんな武器と鞘となるホルダーがある武器は良いものですから。え~っと、すみません。このナイフとこのナイフを買いたいんですが………後、この下にある処分願いの物は貰って良いのでしょうか?」
ベルさんは私の様子を見てから私が取らなかった際立って高いナイフを手に取った。そしてそれを購入してから私に渡してきた。
「アーサーが餞別を渡しているのに私が渡していないとなるのは癪にさわりますからね………。渡しておきます。他の人にはまた後ほど……。」
「あ、ありがとうございます…………。」
私が渡されたナイフのステータスはこんな感じだった。一番高いナイフだったのと掘り出し物であるのが重なったのか高い性能だった。………………高い物からの掘り出し物ってお得とは言えないような気もするけどね………。ちなみに私が買おうとしていたナイフは二つ合わせて銀穴貨一枚でお釣りが来る値段なのに対し、ベルさんに買って貰ったのは銀角貨三枚分だった。
・聖牙鉄のナイフ………◎7 聖獣と呼ばれる獣の牙と鉄鉱石を混ぜて出来た聖牙鉄のインゴットを利用して作られたナイフ。低品質な鉄を混ぜて作られたためか聖獣の牙だった時ほど聖の力は無いが聖属性のオーラが宿っており刃こぼれしにくく、闇属性の魔物に刃が通りやすい。
一方、こちらが私が買ったナイフのステータスだ。柄の部分が多少違っていたが、結局は同じ物らしい。量産品のような名前であったが、転生ボーナスでもらった武器と併用するには充分だと思う。
・量産されたナイフ………◎3 木で作った柄に鉄を使い作られたナイフ。形が一般的なため鞘になる物を選ばない。ただ量産品のためかデザインが片寄っており、仲間内での取り違えが起こりやすい。
「………………あぁ、後私が『鷹の目』スキル持ちの奴に監視させている事はソネットには言わないでくれ。口封じの金の代わりに私にとっては必要ないというか無用の長物なのだがかなりのレア素材をやるから、な?」
そう言ってベルさんは私に無理矢理赤く輝く宝石のような物を大量にくれたのだった。それは触ってみるとこなりの熱を持っていたが火傷した痕は無かったので何か特殊な物なのだろう。これのステータスを見てみると以下の通りだった。
・輝熱鉱石………☆7 非常に高温な熱を持った赤い宝石。高炉に入れても溶けず、叩いても砕けてしまうだけで扱いがとても難しい。
……………有り難く受け取っておこう。多分これはエンチャント専用のアイテムだと確信できるほど、シンプルな素材だった。……………もしかしたら永久に使えるカイロのような物も出来そうだと思った私だった。ちなみに、私もエンチャントを伝授して貰おうかなと思っているのだ。練習に使えそうな素材が手には入ったのでベルさんには感謝しきれないと感じたのだった。
あ、ソネットさんは今早瀬を服屋に連れて行き、着せ替え人形にして遊んでいるようだと隼人が言っていた。そして、その手には早瀬に殴られてノビている奈津の姿があった。多分ソネットさんに手を出そうとして早瀬が止めていたんだろう。早瀬はお手柄だ。あのベルさんがここで暴走するような事を阻止したのだから。そう思いながら私も今いる露店を出てから服屋に向かった。