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聖者達part 王都の商店街にて-1

流視点


「宿に行くまでに商店街があるんですが、見ていきますか?」

「俺は金貨一枚貰ってるから見ていくつもりだねど、お前等はどうするんだ?スキルと武器の確認とかはやっていただろうけど、それでもまだ足りないだろ?」

「いや、私は実戦で経験を積むことにする。」

「…………私はパス。」

「私も、暗の写真集の入った鞄がSWに残っていたからそれを見るつもりだが…………」

「鈴、それは山分けにするぞ。探索用にな!あくまで訪ねるための、だ。」

「流、必死に言っているけど持ってなかったっけ?」

「…………………っち。」

「そこで舌打ちはしない方がいいと思うけどなぁ~。」


暗捜索隊としてどの騎士団にも入らなかった六人である私達は演習場からさらに歩いて王都に来ていた。そのまま宿に案内されるか、それとも商店街を見ていくかを選択させられていた。まぁ、響と鈴が宿に向かうということで終わったのだけど。


そんな事を考えてから十分程で、商店街の入り口に着いた。商店街というよりはバザールというような屋台が並んでいて、日が暮れそうになっているにも関わらずかなり賑わっていた。と、ここでシータさんと響、鈴と別れて三人で行こうとした時に見知った顔がいて、私達に気づいて話しかけてきた。


「よぉ、確か………代表さんとこにいた奴らだな。」

「って、アーサーさんはなんでここに?騎士団の案内とかは………?」

「あぁ、それなら副団長のランスに任せている。俺は酒とツマミの補充と魔石を探しにな。お前等は……宿の近くにあるから覗いてみたのか。まぁ、暇だから案内してやるよ。人探しで旅に出るんなら必要な物とかも紹介しておかねぇといけないしな。」


エペルシュバートの団長のアーサーさんはどうやら私達のウィンドウショッピングに付き合ってくれるらしい。まぁ、美味しいものも紹介してもらえるだろう。そう思っていると、最初に来たのは馬小屋みたい建物で、店の名前は『トラベルホース』だった。商店街の入り口から五分程度で着いた。まぁ、他にも気になる所はあったが、ここに行っておいた方が良いと判断されたからだ。


「ここは別の国や村にもあるチェーン店の馬車と馬だ。ここでどの馬を買うか決めて置いてから買い物した方がいい。でも、転生者は所持金が全部銀貨五枚しか与えられていないからなぁ………。」

「五万円分も貰えているならあまり文句は言えませんよ……。無一文じゃないしいいじゃないですか。」


事実、無一文で転生するのと五万円分のお金を持って転生する場合ではかなり違う。深い森や山の中にいたとしたれ別だけれど、今回は街が転生の着地点だ。金が十分あるという事だけでも幸運だと思おう。


「基本セットのいらない物を売ってしまえばなんとかなると思いますけどね………。」

「まぁ、そうなるわな。じゃあ行こうぜ。」


そして、店内に入ってみると、馬の匂いが充満していた。何頭の馬がいるのかは分からないが、かなりの量はいるのだろう。鳴き声もかなりの音がする事から並大抵の馬の数では無さそうだ。


「じゃあまず馬からだな。色は色々いるが、一番安いロバート、普通のポッピー、少々安いが餌代が凄いケッカージス、燃費が良いダンビルの四種類ある。まぁ、銀穴貨一枚で買える奴が多いポッピーがオススメだが無理してケッカージスを買うのはオススメしない。餌代は月で金貨一枚分になるからな。」


どうやらケッカージスは身分の高い貴族の馬らしい。とりあえずじっくりと見て見るも、中々納得のできる馬はいなかった。しかし、奥に行くと目を惹かれる馬?がいたのだった。そして、私はその馬に近づきながらアーサーさんに質問する。


「アーサーさん、あの馬は何でしょうか?」


私が指さした先には毛の色は黒、一見普通の馬に見えるがユニコーンのような鋭い角が頭に二本、足をかけるはずの場所には羽のようなでっぱりができているような、黒いペガサスのような馬だった。


「あぁ、そいつはクロウペガサスだな。この店の店長が偶然卵を見つけて孵したんだが誰にもこの馬を買えていないから困られているらしい奴だ。馬車として使うなら騎馬スキルでも十分コントロールできるんだが乗るとなれば天空騎馬のスキル補正でどうにかするしかない。」

「…………というか、なんで誰にも買えなかったんですか?」

「簡単な話、そいつに認められてないんだよ。お試しレベルで銅貨三枚で試させているが蹴飛ばされたりする客が多いんだよ。ちなみにコイツの食事は必要ない。周りに浮かぶ魔力を吸うからな。」


そんな説明を聞きながら、私はクロウペガサスに近付いていた。当のクロウペガサスはと言うと、嫌がる様子もなければ逆に好感的にこちらに鳴き声を聞かせている。ちなみに鳴き声は『ヒヒーン』では無くて『カー』である。名前の通りカラスか!!と突っ込みたくなってしまう。


「馬屋のおじさん、この子をお試しで。」

「格好いい馬を選んだね……流。ってか流って馬に乗れたっけ?」

「いや、馬車としてこの子は使うから。はい、銅貨三枚。…………そういえば、どうしたらこの子に認められたという事が証明されるんですか?」

「それはまぁ、ここにあるバンダナをコイツの首に巻く事だな。首に何かを巻かせるという馬達の行動は、『あなたにこの後の事を任せます』という意思表示だからな。」


そう言ってアーサーさんは高級そうなバンダナを店長から受け取り、私に渡していた。そして私はそのバンダナをクロウペガサスの首に巻こうとする。すると、クロウペガサスは私を頭で突き飛ばすことも、後ろ足で蹴りつける事も、ましてや逃げ出す事も無くバンダナを首に巻き付けさせてくれた。


「………で、これで後どれくらいお金を払えば良いんですか?」

「……………売れるとは思っていなかった馬だからな。馬車と馬の手入れ品を最高級の物で買って貰うだけで良い。まぁ、この店には高くても銀穴貨二枚の物しか置いていないがな。」


まぁ、こうして私と奈津の班にクロウペガサスが加入した。因みに隼人と早瀬はアーサーさんの薦めたポッピーを購入するらしい。毛の色は青でバンダナの色は紺色。名前はブルーにしたらしい。しかし、私はこのクロウペガサスにどんな名前を付けるべきなのだろうか…………。そして、私なりに考え抜いた結果として、こうなった。


「よし、今日からお前の名前はラーベだ。ドイツ語で烏だからそのまんまだが、別にいいだろう?」


クロウペガサス………いや、ラーベは嬉しそうに「カー」と鳴いた。…………見た目と鳴き声のギャップに未だに慣れないというか、慣れる日はいつ来るんだろうなぉと別の意味で憂鬱になる私であった。

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