聖者達part 嵐のようなメンバー達 茶葉の研究者編-1
サーティさんは白衣の下に灰色のポロシャツ、下はジーパンらしき深い茶色のズボンという服装だ。髪は茶色で無造作に切ったのか下側がかなりバサバサになっているショートヘアの男の人だった。見た目から2~30代だと思われる。
「サーティは主に茶の研究をしている研究員でジーブルフリーデに多くの茶葉を流通してるんだよ。まぁ、研究スペースが目的でテンペストに入団した珍しい人間だよ。」
ガンさんがそう言うのを聞いてからサーティさんも頷いた。
「確かにな。殆どが先代のスカウトや保護、シェイヌケーテやエペルシュバート、アルクレーガンから送られてきた優秀な人間ぐらいだしな。俺は元々研究所に入りたかったがジーブルフリーデで進められている研究はあくまで医学だったから辞退して正解だったな。太という輸入のルートも手に入ったし。茶が飲みたくなったら俺に言ってくれ。いつでもいれてやるから。」
「まぁ、アルクレーガンからヒルージュさんが来ていたことは分かってますけど…………。」
「テンペストに転属させられるのはそれなりの功績が無いといけないんだよ。団長の私から見ても、ただ弱いくせに問題行動ばかり起こす人間は必要ないからね………。そんな奴はすぐにジーブルフリーデ公国の騎士団から除名されるってわけ。例としては建国時からで50人ほどだけど。」
「そういえば、軽々しくテンペストに入れるとは思われなくなりました。これについては雌豚の功績です。軍隊一つを一人で殲滅できる技量でなければまず転属ですむぐらいにならない、と。」
話を聞いてみるとこりゃ飲み会やお茶会での自分勝手な暴飲暴食、賄賂などでの騎士団内での優遇、自分より下の者への苛めや差別に演習などへの無断欠席などらしい。簡単に言えばテンペストはそんな性格でも優秀ならばという最後の砦らしい。
「ま、俺は騎士団に所属はしているが職業は『煙術師』だ。先代が研究職の俺を受け入れてくれたから俺はここにいるんだか、テンペストの中では戦闘能力はかなり低い部類だな。他の奴らが強すぎるだけなのもあるが。」
「そうなのですよ~。エッヘン!!」
「いや、アンシュルテ………お前に言ったんじゃあ無いんだが…………。」
アンシュルテちゃんとサーティさんが話していると、考え込んだ顔をした花多美ちゃんが口を開いた。それと同時にサーティさんも口を開く。
「……………そういえば、ヒルージュさんを呼んでいたときに聞こえた七麦茶ってなんなんですか?」
「つーかこの犬っころみたいな人間はまたクトゥールが拾ってきたのか?」
花多美ちゃんとサーティさんの言葉がほぼ同時に出ていた。とりあえず犬っころと呼ばれた所を見てみると、白い髪に赤い瞳、愛らしいもののどこか誰かの面影…………って、シロじゃないか。そういえばヒルージュさんがアンシュルテちゃんのアイアンメイデンに閉じ込められた頃から一言も言葉を発していなかった。
「お~い、シロ~ってあぁ、今はもしかして兎子の人格になってる?」
「…………………うん、そう。これが………元々の白河神兎。」
「先輩って元々このぐらい片言で無口だったんですね…。」
この事は僕も知らなかった。まぁ、オフの日には僕はシロとはあまり会っていなかったから、もしかしたらシロがこの状態で御堂シュマロになっていたのだろうと思う。
「…………………紅茶………私にも……。」
「おう、分かった分かった。ほらよ。」
「…………………ありがと………。」
兎子はサーティさんにお礼を言ってからコクコクと紅茶を飲んでいた。その様子を見てサーティさんが微笑ましい子供を見る目で兎子のことを見つめていた。
「サーティさん?どうしたんですか?」
「あぁ、すまん。俺も女房も子供はこんな風に無垢な子がいいかなぁ………って思ってしまったんだよ。」
「そういえばサーティは結婚してたよね。」
「まぁ、もう33だからな。女房はいない方がおかしいだろ。」
サーティさん我結婚していたことに驚いたけど、よくよく考えたらテンペストでは20ぐらいの女性にしか会ってなかったからまぁ、結婚している人もいるよなぁ………と思った。そう考えているとヒルージュさんの入っていたアイアンメイデンが開いて、中からヒルージュさんが嬉々とした表情でアイアンメイデンの中から血塗れで出てきた。
「七麦茶の六杯目はいつ飲んでも私の心に安息を与えてくれますよぉ~。だから早く出してください!!あの味が良いんですよぉ~。」
「いや、そう思っているのはお前だけだ。とりあえず飲め。あの味をさらに表現できているはずだ。」
そう言いながらサーティさんがヒルージュさんに七麦茶の六杯目を圧縮したという物を一気に飲み干した。そして、恍惚な表情を浮かべているが、ガンさんやジルフェさんにアンシュルテちゃんも苦笑いでそれを見ていた。
「あぁ、説明していなかったが七麦茶ってのは俺の研究している茶葉の一つだ。簡単に言えば飲む度に味が変化するんだよ。一杯目は甘く、二杯目は渋く、三杯目は辛く、四杯目は苦く、五杯目は酸っぱくて六杯目がこの世の物とは思えないほど不味く、七杯目はまさに神が創り出したかのような、天にも昇るような美味と言われている。」
「サーティはその七杯目を圧縮して七杯目まで行けなくとも七杯目の神の創り出したような味をいつでも飲めるようにと研究してるわけ。もしかしたらこれで貿易が有利に進んだりするからね。」
それを聞いて見るとサーティさんが大学の研究員みたいに見えてくる。しかし、今は色々な問題が出てきている。ヒルージュさんの血が僕達がいる部屋にかなり散っていた。
「とりあえず七麦茶の六杯目を渡す前に床を綺麗にしておくか…………。」
「そういえば血で汚れまくってたしね~。今回何回分死んだんだっけなぁ……………?」
………………ヒルージュさんの言った一言にはえまり突っ込まないようにしてもこの床はちゃんと綺麗になるんだろうな?と思っているとサーティさんはSWを操作して、何かを取り出した。鑑定スキルみたいなので確認すると、それは七杯目の失敗からゴミとし出てきた出し殻なのだろうか?それには『七麦茶葉の出し殻』という名前があった。
「七麦茶の出し殻には洗浄石と似たような効果があるからな。当然保管しているんだよ。」
「これもサーティの研究で分かった結果なんですよ。」
「色々と発見してますからね………サーティさんは…。」
七麦茶葉の出し殻をサーティさんが使うとアイアンメイデンから出ていた血で汚れていた床があっという間に綺麗になったので、ゴミではなくちゃんと使い道があるのかと元の世界と同じようにもったいない精神があるという事が分かったのだった。いや、無かったら無かったでとんでもないほどのアイテムの消費になるんだろうなぁ……と思った僕だった。