聖者達part 嵐のようなメンバー達 元盗賊団の長編-11
僕達はジルファーンとミーナの幸せそうな物語を続きを想像しながら次の人も見ようかと思ったら、いきなりの筋肉男の絵で全部持って行かれた。絶対に謀ってるよなぁと思いながら、その衝撃をガンさんに向かって叫んでいた。
「いやおかしいでしょ!!なんでこんな良い作品の後にこの男なんですか!!狙ってるんですかね!?この本の作者!!なんでいきなり筋肉の戦士バダオの絵があるんですか!!子供泣きますよ!!絶対に泣きますよ!!」
久しぶりにここまで長いツッコミをした気がした僕に、ガンさんはまるで作者の気持ちを代弁しているかのように狼狽えていた。
「いやいや、その文句はそれを編集して基本セットに組み込んだシャナ・A・スカイフィートさんに言ってくれないかな?それに、バダオも英雄と言われるほどの功績残しているから!!フィルアーマ王国で語り継がれる伝説だから!」
「SW作ってしかも紀元のルーツになった人がこれ編集してたんですか!遊び心満載でこれ編集したんですか!フィルアーマ王国って私達と同じ高校の転生者達が集まってる場所の一つですよね?なんか不安になるんですけど。」
塔子ちゃんがもっともらしい意見を言う。他の二つについてはまだ分からないが少なくともフィルアーマ王国にいる人達が安全だとは思えない。なんせ筋肉の戦士バダオが崇拝されるような国だ。スポーツ科の生徒達ならともかく、ビジネスや普通科のがそこに行っていたら何か恐ろしいことになる気がしたのだった。
「いや、君達の考えているようにフィルアーマ王国が全て筋肉で出来ている訳じゃないからね。筋肉の戦士バダオって英雄の話は残っているけど昔も今もフィルアーマ王国は魔法と剛力の二つの勢力で対立しているから、少なくとも全員筋肉になるなんて事は無いよ。」
「でもなんで対立しているんですか?」
「簡単な話、どちらがより有効的な力なのかを競っているって感じですね。」
……………僕達の前にいた世界でいえば手作業派か機械に丸投げ派かなんだと思う。おそらく魔法なら鍛錬とかいらないという意見と自分の体を鍛えておいて臨機応変に戦闘スタイルを変更できる方に変更するかどうかなんだろうなぁ~と思った。
「話を要約すると筋肉の戦士バダオはフィルアーマ王国を襲った大波を鍛え上げた筋肉による一撃で大波を止めたって人だよ。」
「まぁ、私は幻英雄での力ではバダオは使いませんよ。私は装備品が無いときの徒手空拳が苦手なので…………。苦手なことだとイメージしづらいですから力も弱るんですよ………。」
ジルフェさんがそう言うけど、それなら苦手じゃなかったらバダオを使っていたって事ですよね!?どうしよう、僕はジルフェさんがジルファーンになる姿は想像できてもバダオになる姿は想像できない。………というか、想像したくなかった。
「まぁ、こんな話の中のジルファーンの力に近かったジルフェを私が奥の手その一を使って倒した後、か弱い女の子だったし、元々生存本能のような感じで悪意無くしたら可愛い娘だったから連れて帰ったわけ。元々ジルファーンの姿で盗賊していたから言うまでバレなかったけど。」
「ま、まぁ確かに盗賊退治のクエスタとしては完遂してますからね…………。その盗賊を連れて帰ってきてますけど。」
ガンさんがジルフェさんがテンペストに入団したときの話に話を戻していた。まぁ、盗賊として憧れとかの感情のあったジルファーンの事はよく分かったので、このまま話を進めてもらおうと思った。
「まぁ、実力は普通にあるからそのままテンペストに入れてんだよ。その時からジルフェは私を慕ってくれていたよね。」
「は、はい!私は団長に救われたんですから当然です!それに、私も完全に敗北したのですから……………。」
ジルフェさんはそう言いながらガンさんの方をチラッ、チラッと見ていた。その視線に気付いたのか、ガンさんがジルフェさんの頭を撫でてからこう言った。
「テンペストに入った後はひたすらに幻英雄のレパートリーを増やすことから始まったんだよ。最初ジルフェは私の事を英雄だからとイメージでやろうと思ったけど、どうやら自分が会ったことのない亡くなっている人間じゃないと幻英雄が発動出来ないことが分かったりとかね~。」
「そ、そうですね……。あの時は団長に付き合ってもらいながら実験しましたしね……。団長や先代団長のヨウラク・アルザールさん、それに爆破のあの人も立派な英雄ですけど三人とも出来ませんでしたから……」
……………爆破のあの人って誰の事なんだろうか?それに、テンペストにはまだ赤ん坊の頃にドラゴンに喰われてからドラゴンの体を食い破っていた人や、村の宝を壊して追放された人とかいたような………。そう思っていると塔子ちゃんがこう言うのだ。
「爆破のあの人って誰なんですか?話を聞く限り亡くなっているような気もするんですけど……………」
「あぁ、あの人の事は………城の外で話すから。少なくともこの城の中でこの人の名前を言うとめんどくさい事になるから。あ、ちなみに村の宝を壊してしまったのは彼女で、ジルフェがテンペスト入ってから二年目で亡くなっちゃったんだ。」
少しだけ空気が暗くなったのを見て、ガンさんがジルフェさんの使う幻英雄の英雄達について話をしていた。それに花多美ちゃんが織田信長やらジャンヌダルクやナポレオンなどの英雄達の話をジルフェさんに話していた。それを深く聞いているジルフェさんの様子を見ながら煎れられていた紅茶を飲んだ。丁度空になったために僕はお代わりを頼んだ。
すると今度は煎れた人が誰なのか分かった。とはいえ、ただテンペストのメンバーがいつの間にかテンペストの集まりであるこの部屋に、一人いたのだ。その男は僕が紅茶を飲み終わっていたのが分かっていたかのようにこちらに駆け寄っていた。
「おーい!ヒルージュ!!七麦茶の六杯目の圧縮に成功したぞ!!さっさとそのアイアンメイデンから出てこ~い!!」
その人は白衣を着ていて、見るからに博士っぽい。そんな彼を見て、僕は襲われそうとか倒されそうな事を危惧していわけじゃなかったのだ。しかしヒルージュさんをアイアンメイデンの中から出そうとしているということで十分怪しく見える。
「あぁ、そういえば自己紹介しないとな。俺の名前はサーティ。よろしく頼む。あ、おかわりする奴いたのか?ちょっと待ってくれよ……………。」
そう言いながらサーティさんは僕に紅茶を煎れてくれたのだった。