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聖者達part 嵐のようなメンバー達 元盗賊団の長編-10

『今にも泣き出しそうな青年を見て、イルオニア王国の将軍は青年の肩にそっと手を添えました。驚きと、微笑みとが合わさったような顔を、イルオニア王国の将軍はしていました。』


そのページに書かれている挿し絵には驚いた顔を見せるテイネルが描かれていた。テイネルの驚いた顔はかなり意外な物だったので、少しだけ笑ってしまった。


『「もう、良いんです。もうあなたは隠す必要も無いんです。たとえ誰もがあなたの敵になるとしても、私があなたを守りますから…………ですから、泣きやんでください、姫様。」』



『イルオニア王国の将軍がそう言うと、青年の姿が変わり始めました。短かった黒い髪が隠れていたように真紅の色の長い髪として出てきて、顔立ちもまるで少女のような幼さと可愛らしさを持った顔になり、服は青年らしい服から淡い桜色のドレスになりました。』


……………………僕が青年にヒロイン臭を感じたのは間違いなかったらしい。それにしても、このパターンなら普通蛙だったり大蛇だったりしないんだろうか?キスしたり剃刀で腹を切ったりして取り出すとか……………。



『どうやら青年は変化の魔法を使った狩りの姿だったのです。「私は、イルオニア王国の前国王の娘だったのですが、今の国王である私の叔父が私と私の父を支持していた貴族の子達を私と一緒にイルオニア王国から追い出したのです。」』


というか挿し絵での青年……いや、お姫様か。お姫様すごく可愛く描かれている。青年の面影は完全に無くなっていた。


『「私は子供達を守るために変化の術を使い、男のフリをしていたのです。」お姫様はそう言いながらジルファーンを見つめていました。』


『それを見てイルオニア王国の将軍はこう続けました。「私は姫様が暗殺者に襲われて死んでしまったと聞いておりました。なんでも不浄の毒を使われたために葬式もしないし死体も見させられぬ言われていました。ですが、生きていてくださり、私は喜びで涙が出ています」』



不浄の毒ってなんなのだろうか?と思っているとガンさんとジルフェさんが変化の術もまとめて解説してくれた。


「あ~、不浄の毒は闇の魔力が籠められた毒のことをまとめてそう言うんだ。で、共通点は死体を残しておいたりその死体を見ると籠められている闇の魔力の影響で呪いにかかったりするから不浄の毒で死んだ人間の死体は即座に抹消しないといけないんだよ。死後数十分程は闇の魔力の影響も吐き気ぐらいですむからね。王族が支持されている者を追放したり

使用人が雇い主を匿ったりする時の口実にもなる事も歴史を見てみると多いんだよ。」

「今回その口実で追放されたお姫様は子供達を養うために変化の術を使いましたけど、昔の変化の術は私の幻英雄とは違って自由な時に自由なタイミングで自由な物に変化する事ができないので障呪とも呼べましたね。」


なんだか昔って亡命の口実も暗殺の口実もかなり楽な言い訳が存在していたのかと思うと、亡命に失敗した領主達がかなり不憫になってしまうと思いつつ、僕はページをめくった。



『そのやりとりを見ていたジルファーンは大変困っていました。そんな中、お姫様はジルファーンに歩み寄ってからジルファーンに抱きつきました。』


『「ごめんなさい、ジルファーン。あなたを騙すつもりは無かった。私が女であるという事を言い出すことすら怖くなった。もしかしたらあなたは私を捨ててしまうかもしれないと思ってしまったから。」』


『その言葉を聞いて、ジルファーンはお姫様の頭を撫でながらこう言いました。「俺も、貴女に黙っていたことがあった。貴女が女であることを隠していたように、俺も貴女に隠していた事があったのだ。」』


『そして、ジルファーンはお姫様を抱き締めてこう言いました。「俺も、愚かな王である兄に追放された王族だったのだ。」』


『ジルファーンの言葉から二人は驚きましたが、すぐに納得した様子を見せました。王族ならば、あの強さも確かな物ですし、人を傷付けぬ優しさも王族の物だと思えたのです。』



「……………王族でも弱い人は弱いですけどね。ジルファーンはかなり強い部類に入りますけどね。でも勇者を王族から出すこともありますからね…………。勇者バルデラがその例です」


バルデラってあの滅茶苦茶ムキムキで強面の商人の太さんの出身の国を魔法一つで焦土としたっていうほどの力を持つ勇者だって聞いたような………………。あの人って王族出身なんだなぁ…………。バルデラの国の名前がバルデオンって響きが似ているからそうじゃないかとは思ってたけど。そう思いながら僕は次のページをめくった。



『それを聞いたイルオニア王国の将軍はこう言いました。「ジルファーンが元王族で、このような性格ならばきっと良い王になってくれるに違いない。皆もそう思うだろう?」』


『その言葉をイルオニア王国の軍の人々は否定しませんでした。元々ジルファーンは民に愛されることが多かったのでこの答えは当たり前だったのかもしれません。』


『そうイルオニア王国の軍が話し合っている間に、お姫様はジルファーンを見ては赤面しておりそれを見たジルファーンは胸がトキメクのを感じていました。だから、ジルファーンは抱きついてきているお姫様に少しだけ離してくれと言い、それから片膝をついてからお姫様を見上げてプロポーズをしました。』



挿し絵にはとてもロマンチックな感じでジルファーンとお姫様が描かれていた。というか、プロポーズの基本的な形も同じなんだなぁと思っているとガンさんはこう言うのだ。


「これは現在のイルオニア王国でも一般的になっているプロポーズの仕方だけどジーブルフリーデでの一般的なプロポーズはその人の誕生月の花か宝石でできた冠を捧げることだね。受けるなら冠をかぶる。断るなら冠をしないでその場から三歩下がるってのが普通だね。」

「指輪とかじゃ無いんですね……………………。」

「?ジーブルフリーデでは指輪は結婚式でお互いが着け合うことが普通だからね。」


そう言うものかと思いつつ僕はページをめくる。というか段々ジルファーンの英雄記というよりも恋愛話になっている気がするのは気のせいなんだろうか?



『お姫様はジルファーンからのプロポーズに嬉し涙を抑えながらその手を取りプロポーズを受け入れました。「嬉しいです。ジルファーン……………ならば、私のことは本当の名前、ミーナ・イルオニアとお呼びください。」』



『それを聞いたジルファーンが「ミーナ」とお姫様の本当の名前を言うと、ミーナは嬉し涙が止まりませんでした。イルオニア王国の将軍も感激し涙を流しながら拍手をしていました。』



『それからジルファーン達はミーナの愚なる政治をする叔父から王権を取り戻し、その後周りの国と揉め事が多少ありましたが、ジルファーンが王になってから民から苦痛の表情が消えて笑う顔が絶え間なく続くようになりました。』


『ジルファーンとミーナはそんな民に支えられながら幸せに過ごしました。それから何千年もの間、今の平和なイルオニア王国は守られているのです。』


確かに挿し絵からは民がとても笑顔で暮らしているのがよく分かる絵が描かれていた。


『盗賊王ジルファーンが最後に盗んだもの………それは民の苦痛でした。ジルファーンはその力と性格で、民の顔を幸せに塗り替えていきましたとさ。』


『盗賊王ジルファーン   完』



読み終わってみると、ジルフェさんがジルファーンに憧れてた事がよく分かった。しかし、この童話集はまだ読めそうだなぁと、次のお話を見ようとページをめくった。



『筋肉の戦士バダオの物語』


このタイトルと、横に描かれていた元の世界なら著作権に引っかかりそうな筋肉男が描かれており、僕達は音速に近い早さで童話集を閉じたのだった。

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