聖者達part 嵐のようなメンバー達 元盗賊団の長編
「……………以外………なんでしょうか?」
ジルフェさんが意外そうな顔をしているけれど、僕達には意外という言葉しかでない。確かにアーサーさんが盗賊団の長だった人がいたとは言っていたけれど、ジルフェさんだとは思わなかった。とうか、思うはずもなかったのだ。
「い、いやだって、こんなにお淑やかに見える人の事を初見で元盗賊団の長とは考えないと思いますよ?」
「………確かに、驚かれてばかりの記憶もありますね。」
ジルフェさんがそう言ってから首を傾げていたが、どう考えても盗賊団の元長だとは思えなかった。だって盗賊団っぽい黒くよどんだ目をしてないし、心も腹の中に黒も隠していなさそうな純粋で天然な人がなぜ!!と困惑してしまうほど、ジルフェさんからは何の邪気も感じられないのだ。
「そういえば、ジルフェはさっきから朗読してたけどあれは何だったのかなぁ~?私、自分の過去をあんまり話せなかったんだけど?」
アンシュルテちゃんがジルフェさんにそう言うと、ジルフェさんは申し訳無さそうに言うのだった。
「す、すみません………書いているときは大丈夫なんですけど思いつくときには朗読してしまうので………意図せずにアンシュルテの自己紹介を邪魔してしまいまして………申し訳ありません。」
「………お、思い付いたときの朗読で……私の……で、出番が………。」
「そういえば、ジルフェさんは何を描いてるんですか?」
僕がジルフェさんに聞くと、ジルフェさんは顔を染めながら答えるのだった。
「だ、団長の………伝記を書いてこうかなぁって思ってて………それで小説には収めたんですけど、私が初めて見た伝記は何冊からもなる絵本だったので、老若男女に対応出来るように絵本も描いていたんです。私は団長の歴史を後世に残したいんです。」
「そ、それって私のを書く予定は………?」
「アンシュルテさんのは…………団長と比べると気持ちが入らないというか、長くかけないというか……。ごめんなさい。」
「私は団長と歳は変わらないのに~~!!!!うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
アンシュルテちゃんの目に涙が段々と溜まっていく……と同時にヒルージュさんの入っているアイアンメイデンからも血が滴っていた。多分ヒルージュさんの血が段々溢れているのだろう。というか、何回分死んでしまっているのだろうか?血の量が半端じゃない。
「ぐすっ………ぐすっ……………。」
「よしよし、アンシュルテちゃん。泣かないでね~。」
「…………花多美ちゃん……ちゃん付けは余計です……」
百合百合した雰囲気を醸し出し始めたアンシュルテちゃんと花多美ちゃんは放っておく事にして僕達はジルフェさんの話を聞くことにした。
「元々ジルフェはジーブルフリーデからかなり離れた国の貴族だったんだけど、戦とかの関係で五歳の頃に家から捨てられるように逃がされたんだよ。従者も誰もいない状態でね。」
「それで私は生きるために働こうと思ったのですけど、貴族嫌いの人間ばかりで追い出されるばかりでした。数枚持っていた銅貨もすぐに無くなってしまいましたしね。」
「それは結構大変ですね…………。」
お金もすぐ無くなってしまってしかも稼ぐ方法も無ければ途方に暮れるだろう。僕だって同じ状況なら発狂しそうだし。
「それで私は考えに考え抜いた結果、盗むという方法を思いついてしまいました。」
「それで盗賊団になったといっても他に団員がいたのかとかも気になるんですけど………。」
「いや、ジルフェの職業の幻英雄はかなりレアな職業で、それを使えば一人で盗賊団を作ることも可能なんだよ。」
「………そもそも、幻英雄ってなんですか?」
塔子ちゃんがそう聞くと、ジルフェさんが話し始めた。
「幻英雄は基本的に言えば想像力を糧にした身体強化を主軸とする職業です。この職業で私は主に語り継がれているような英雄になるというイメージの元戦闘します。」
「その想像力で武器や服に容姿が変わるから初めて闘ったときには年下だとは思わなかったよ……………。」
「?初めて闘った………………………?」
「あぁ、そうでしたね。私と団長の出会いは盗賊団を止める事のクエスタでしたから。」
「そうだねぇ、あの時は奥の手の一を使わなきゃあ勝てなかったよ。」
話が逸れかかっていたので軌道修正させてもらうため、僕はジルフェさんに話しかけた。正直に言うとジルフェさんはガンさんかなり心酔しているため聞いてくれるかどうかは分からなかったのだけど。
「あの、出会いよりもジルフェさんの生い立ちの話をしてください。」
「私も続きが気になります。」
「あぁ、ゴメンゴメン。ジルフェ、速く続きを話してあげて。」
「は、はい!団長!!」
何とか話は戻った。けれど、僕もガンさんの奥の手その一などのキーワードが聞こえてしまい、話を元に戻し無くても良かったんじゃないかと後悔してしまうのは何故なんだろうか?
「私がその当時憧れていたのは、盗賊王ジルファーンという英雄の物語で、彼は一人も殺さずに村から食料を奪う………というストーリーでした。」
「それ、英雄じゃないような気もするけど………」
「英雄なんですよ!!彼はですね、後にイルオニア王国とドランシア王国の戦争を血もなく死もなく止めるんです!!私は何度も何度も読んで貰いました!!」
すると、ガンさんがSWを出して僕達に指示していた。そして
boxの基本セットからある本を取り出した。それは『騎士童話集』とタイトルが付けられている本だった。
「確かこれの20話がジルフェの言っている話、盗賊王ジルファーンの話だと思うから読んで見たら?読んだことは無いだろうから暇つぶしにはもってこいだと思うしね。」
とりあえず盗賊王ジルファーンの物語のページを開く。そして、物語をじっくりと目で追い始めるのだった。