聖者達part 嵐のようなメンバー達、大人になりたい大人編-5
「賢者は、愚なる王の言葉を聞いて、笑った。それは愚なる王の機嫌を妨げたようだが、賢者にとって見れば、その提案は賢者にとっては嘲笑するほどの事だったのだろう。」
「賢者は愚なる王の女をやろうという発言に対してこう言った。儂に女はいらん。儂は何百年の間に一人の女しか抱いたことは無い。これからも、その女以外を抱くことはしない。侍らすつもりもさらさら無い。それに、この老人を誰も接待したがらんだろう、と。」
そう言っていると、ガンさんはうんうんと頷いていた。というよりも、先代のヨウラク・アルザールさんは結婚していたのだろうか?と思ってしまう。
「団長の奥さんは見たこと無いけど私達とか他のメンバーにも手を出してないしね。でも結婚指輪はしていないから多分結婚してないか奥さんのお墓に供えだと思う。この世界ではというかアルザール公国の風習では先に亡くなってしまった夫か妻の墓に結婚指輪を備える事は『あなたを生涯愛し続けます』ということらしいから。まぁ、逆に存命中に片方の前で指輪を外すのは『裏切り』の意味があるからね…。」
「こちらの世界にも結婚指輪の概念ってあったんですね。」
「まぁ私は結婚はしないと思うけど、テンペストのメンバーでは将来的に結婚したいと思っているのとか、結婚してたりするから指輪している人を見る機会は多いと思うよ。」
やっぱりプロポーズとかも指輪なのかと思っているとアンシュルテちゃんが少しキラキラとした目でこの世界で言う結婚についての説明をしてくれる。どうやらジルフェさんに自分の出番を取られているので気晴らしというかなんというかをしたいらしい。
「この世界では指輪をしている人はファッションではなく妻、夫がいますという証明をするための物なんです。でも、基本的には指輪は一つしかしないことが多いです。たくさんしているとその人はジゴロに見えますから。」
「詳しいんですね、アンシュルテちゃん。」
花多美ちゃんがアンシュルテちゃんの頭を撫でると、アンシュルテちゃんは少し顔を赤く染めてから微笑んだ。
「そうですよ~。私だって結婚できる年齢まで後一年になりますから!!相手はまだ見つかってないですけどね。」
「私達の世界では男は18で女は16でできるようになっていたけどこの世界では違うんだね。」
「この世界では男も女も20からなんだけど純粋な魔族だとそれに二百年ほどプラスされるかな。200すぎなきゃあ一般人には理解できない声で話してるから。」
「…………色々あるんですね。」
「まぁ、意思疎通なら簡単にできるから問題ないけどね。」
……………信用できそうに無い言葉だなぁと思っていると、ジルフェさんが朗読を続けていた。まぁ、僕には結婚したいような仲の人間もいないしどちらにしろ結婚式には後二年ほどかかるために聞かないでおいた。
「賢者は愚なる王の王家にしか飲めない酒をやろうという発言に対してこう言った。高い酒は宴会の雰囲気を、楽しい気持ちを白けさせるような物だ。少なくとも儂の舌に合う酒は無いだろう、と。」
それを聞いて、ガンさんはまた懐かしがっていた。
「先代は酒が好きと言うよりは宴会の方が好きだったわけ。高い酒なんか貰ってもエペルシュパードの団長に渡すとかで消費してたからね………。安物のビールを一気に何杯も飲むのが好きな人だったからね。」
「というか段々と私の話からズレてませんか!!」
アンシュルテちゃんが意見するのも無理は無かったのだろう。アンシュルテちゃんはジルフェさんに向かって叫ぶものの、全く聞こえていないようなジルフェさんだった。
「愚なる王が提示した名誉すらも断った賢者に、愚なる王は賢者を殺せと叫んだ。しかし、賢者と傀儡師は怯むことは無く、アンシュルテを救い出した後、瞬く間に殺しにかかった民を一掃した。」
「そして、アンシュルテは救われた。しかし、愚なる王治めし国は変わることはなかった。今もまだ、他国に戦争を仕掛けるのだった。」
「アンシュルテは泣きました。なせ、もう少し速く来てくれなかったのか。もしかしたら両親が自殺させられる前に助けられたかもしれないと思ったからだ。しかし、至大にアンシュルテは泣きやんで賢者と傀儡師と供に賢者の自国へと戻ったのだった。」
そこまで言い終わると、ジルフェさんはホッと溜息をついた。どうやらここまでで終わりらしい。
ガンさんがジルフェさんの肩を叩くとジルフェさんはハッとしてから自分の耳に手を伸ばし、耳栓らしき物を取り外した。
「だ、団長!!帰ってきてたんですか?」
「うん。それにしても、耳栓までして集中してたんだね。」
「えぇ…………まぁ、続きを書いてたんですけどヒルージュさんの声がうっとおしくて高級耳栓をしてました……。」
そう言ってジルフェさんは高級耳栓のデータを見せてくれた。
・高級耳栓………☆3 これを耳につめているとかなりの音を遮断する。集中したいときに便利だがその分日常生活には支障をきたすほど。
「…………って、自己紹介の方を先にしておかないと……耳栓のステータスとかはまだ良いんだから!!落ち着いて………落ち着いて………。」
何回かスーハースーハーと深呼吸を始め、手のひらに何回も人の字を描いていた。そして、人の字が六回ほどジルフェさんが口に入れたところで、自己紹介が始まった。
「私はジーブルフリーデ公国第四騎士団テンペスト団員、ジルフェです!!職業は幻英雄で…………………恥ずかしい話なんですけど、テンペストに入る前………団長と出会うまでは生きるために盗賊団の長をしていました。」
………………………………………………………へ?