聖者達part 嵐のようなメンバー達、大人になりたい大人編-4
「王国の歴史の中では魔女狩りだけが王の唯一成功する確率の高い政策だった。その事は、王にとって誇りだった。隣国の内、魂濁りし民を従わせし国は生きて戻ると誓う心持つ者なりて、操られし民はその思い持つ民に勝てるはずなく敗れ去っていた。」
これについてはガンさんか説明してくれた。
「あ、この魂濁りし民ってのは多分奴隷の事だと思うよ。アンシュルテの出身の国の隣はジーブルフリーデと私の出身国だからね。」
「うっぐ………えっぐ………団長もジルフェも私の出番を盗らないでくださいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「あ、あの人ジルフェって言うんだ………………。」
「はい………ついでに言うと私よりも年下の16歳ですよ!!」
…………………え?年下なの?ジルフェさん!!てっきりガンさんやアンシュルテちゃんと同い年だと思ってたのに、まさかの現在確認できるテンペスト最年少だ…………というか、女性メンバー若い人多くない?と思ってしまう。これまでに二十五歳以上の人に会っていない気がする。
「愚なる王に従いし奪われつつも奪おうとする民には、大切な物を守ろうとする心持ちし戦士達にかなうはずもなかった。何回も、何回もやる内に、心が壊れていく民を見ても、愚なる王は諦めようとはしなかった。」
「ただ魔女を狩り、弄び、愚なる王は怒り狂う事しかしなかった。別に土地を増やして何かをしようとも思っていない。ただ、同盟を結んでいなかったジーブルフリーデへの苛立ちや、強き勇者や騎士をも作り出さなかった先代への怒りなのだろう。」
「そんな愚なる王の統べる国に、一人の女の子が産まれた。名はアンシュルテ。彼女は、国で唯一魔女狩りから逃れた少女だ。もっとも、二人の救世主がいなければ何も出来なかったのだけど。」
それを聞いて、アンシュルテちゃんは少しだけ顔を赤くして怒っていた。何が不満だったのかと思っていると、このようなことだった。
「いや、本気を出せば私だって逃げ切っていたんですよ!!別に先代や団長が来なくても………」
「………いや、処刑の前の日に成長抑圧剤を飲まされてそれで痛いって泣き叫んでいたような………、それにあの時はまだ力を使いこなせなくて『薔薇の鞭』のスキルしか使いこなせていなかったよね?今みたくギアソーサーでもつけえればどうにかなってたと思うけど。」
「むっかーー!!団長はまたそうやって意地悪する!!団長は私とジルフェとどっちの味方なんですか!!」
「……………もちろん……ジルフェ?」
「なんて疑問系なんですかーーーー!!!」
アンシュルテちゃんが抗議すると、それをガンさんが軽くいなしているという風景は日常的なのだろうか?ジルフェさんは全く気にせずに朗読を続けていた。
「救世主の一人は、およそ七世紀の時を生きし賢者。もう一人は、魂濁りし国を滅ぼしし傀儡師。賢者は傀儡師を道中で拾い、自国へ帰る途中だった。」
それを聞く前に前の会話で気になったことを聞いておこうと思って僕はガンさんに質問することにした。
「そう言えば、成長抑圧剤ってどんな物なんですか?」
「成長抑圧剤は文字通り体の成長を完全に止めるための薬だよ。この薬には骨や筋肉などを無理矢理固めるんだ。そしてギュウギュウ詰め込むようにしていくからかなりの激痛が襲ってくる。そのかわり老けることはないメリットが着いてくるから多分バグラマント王国では兵士の長期使用のために使ってるんじゃないかな?」
「ちなみに私に使われたのは多分私に抵抗させない為だと思います。痛みを例えるとしたら体は固定されたままギュウギュウと押しつぶされる感覚ですね。潰れてないのに潰れた感覚がある。正直あれ以上の恐怖は…………あまりありません。」
それほどの激痛ならありませんだけでも十分だと思うのだけど、なぜあまりがあるのだろうか?と思ってしまう僕がいた。
「賢者は傀儡師を自らの騎士団に入れようとしていたが、同い年の子供もいない。どうしたものかと迷っていたとき、処刑されかけていたアンシュルテを見つけたのだ。」
「あの子供なら、大体同じほどの歳だろう。才能もありそうだ。そしてアンシュルテを助けたのだ。死の刃降ろす処刑具から、間一髪でアンシュルテを助けた。」
……………………同い年って、当時はそう見えていたのだろうか?と思っていると、アンシュルテちゃんがガンさんを睨みつけていた。しかし、上手く睨みつけられないのか周りからは可愛いと思われそうな睨み顔だった。
「あーあー、確ーかーに同い年でしたよね。同い年ですもんね!!だけどなんで私はテンペストに入ってから団長と比べると子供っぽいって言われるんでしょうね!!」
「そりゃあぬくぬくとした家庭で暮らしていた子と奴隷としての苦行ばっかりである意味人生経験の豊富だった私とくらべれば私の方が大人っぽいって言われると思うけど。」
「むっかーー!!でも団長だってパジャマはモコモコしてるじゃないですか!!」
「それでも、十代に見えるか一桁に見えるかですでにアンシュルテは一桁にみられてたよね?」
「うるさいですよ!!私だって後一年すればお酒飲めるのに!!そして大人な女性に………」
「甘酒で甘え上戸のはずなのに何言ってるんだか。」
……………というか本当にこのやりとり聞いているのだろうか?ジルフェさんは無視していると言うよりは聞こえていないという方が正しいほどのスルーっぷりだった。
「そして、賢者がアンシュルテをそのまま連れ去ろうかとした時、愚なる王は、賢者にこんな話を持ち掛けました。我等の仲間になるのなら、酒も、女も、名誉もやろう、と。」
するとそこでガンさんが補足していた。
「いや、正確には王家に伝わりし酒、国の最高の女、この国で自由に振る舞える名誉だったと思うけど、まぁ分かりやすい方がいいよね。」
…………なんか、先代が言った答えが容易に予想できてしまう。一応、元王族だったって聞いてるし。まぁ、何百年も生きている人だけどなぁ…………。テンペスト前団長、ヨウラク・アルザールさんは。