聖者達part 嵐のようなメンバー達、大人になりたい大人編-2
「そういえば僕達はまだスキルを試してなかったんだよなぁ…………」
神子がスキルを使ったのを見てそう思った。この世界に来てからスキルを使うことは無かった。一応シロがSWから馬車を出しているけど、スキルの方は誰もやっていなかったと思う。そう思っていると横から顔を青くした塔子ちゃんが話しかけてきた。
「普通の………人なら………アイドルとか……微妙な…職業なんて選ばないだろうから想像も……できないし………ね…。」
「あら、ようやくお目覚めかしら?バベル?」
「いや……なんか……耐性がついてきたからなんとか吐き気だけで収まってるんだよ…………もっとも、今の方が気持ち悪いけどね…………。」
「吐くならせめてあの雌豚の顔にしておきなさい。あの雌豚も喜びそうだから。」
「いや、吐きそうで吐けないっていう一番タチの悪い所だから。とりあえず落ち着きたいのに、なんか無いの?出雲っちも神子っちも職業アイドルでしょ?癒しのなんたらとかは無いの?」
塔子ちゃんが懇願してきたので僕はSWを見て探したのだけど見つからなかった。というか僕は闇のアイドルスターなのでそういうのは余りないんじゃないか?と思ってしまう。実質攻撃系のダンスのような項目ばっかりだし…………。その攻撃もまるで影の中に入るような、歌のイメージビデオのCGでやるような演出のあるものが書いてあった。僕の闇のアイドルスターの特徴は影に関係しているらしいと感じた。
「でも人形師ならそのぐらいのオプションとかもありそうだと思うんだけど……」
「調べたけど無かったよ。私は主に攻撃系の人形使いらしいし。うぇぇぇぇ……………というか出雲っちはあれを見て平気なの………?」
「………………いや、これまで散々衝撃的な事がある人生だったからこのぐらいで驚けないし気絶もしないよ。」
「確かに波乱万丈だよね……………………。」
そう思いながら僕は自分のスキルの一部を確認した。
・影のオーラ………基本的な力の源として出すことができる。これを使って様々な攻撃、防御に使用する事が出来る。念じるだけで出せる。
・影-硬質防御………影のオーラを硬質化することで防御する基本的な技。自動的には使えないので気を引き締める事をおすすめする。
・シャドーダンス………両手両足に闇のオーラを纏い攻撃する。身体能力が上がる他、影のオーラで作った影や普通の影の中に入り移動できる。
この三つを見て、僕には回復や癒しの能力が無いのだろうと感じた。それに、アンシュルテちゃんを説得するのも無理そうだし実力的にアンシュルテちゃんのギアソーサーツヴァイも壊せそうにない。とりあえず、ギアソーサーツヴァイの発動がどう終わるのかも分からないまま僕と塔子ちゃんはその場に立ち尽くしていることしかできなかった。
「そういえば、今神子の使ってるスキルってなんなのかな?」
「あれって絶対に癒し効果では無いよね…………ヒルージュさんにとっては癒しかもしれないけどさ。」
そんな会話をしていると、神子が僕にSWを見せてくれた。
・光楽譜………自らの光の魔力で作られた楽器を演奏し、その音楽から出る楽譜で相手を拘束する。楽器を段々と大規模にしていくことで必要魔力は多くなるが、その分拘束の力は増す。楽器としてはヴァイオリン→ヴィオラ→ヴィオラ・ポンポーサ→ヴィオラ・ダ・ガンバ→アルペジオーネ→チェロ→コントラバス→ハープ→オルガン→チェンバロ→グランドピアノ→クラベンズピアノ→パイプオルガン→オーケストラ
ただし、オーケストラは徐々に増えていく。最初は8人が何回も楽器を交換しながらだが段々と人数が増えていく。現在の魔力量ではコントラバスまでが限界。
・永眠演奏………対象に最大の恨みを持つときに発動できる。相手を光楽譜で拘束した後、その相手を殺すまで縛る。その時に意識は千切れて止めることは出来ない。この時には魔力を無理矢理作り出していき威力が無限に上がっていく。しかし、副作用として不足分の魔力分何年か眠る。その間は歳も取らずに体はそのままだがかなりの年月眠り続けるために体力がかなり落ちる。また、相手が拘束を完全に解いてしまうと効果が終了し、副作用で眠ってしまう。
「……………シロの時だったらかなり面倒な時に使いそうだよね…………。」
「………できれば、神子っちや神兎っち、まだ見ぬ兎子っちにも使って欲しくない能力だね……永眠演奏ってのは。」
塔子ちゃんの言葉に僕は頷いた。シロには極力使わないで欲しい。僕にとってシロはこの世界で唯一僕の家族………兄妹なんだから。
それから、アンシュルテちゃんに過去の話をしてもらうことになった。話を聞く限り、ヒルージュさん以外は全員別の国からここに来て入団したと聞いている。アンシュルテちゃんに聞くのも悪くないのだろうと僕は思った。
「…………とりあえずアンシュルテも話しといてよ。一応過去話を全員に聞かせているんだからさ。まぁ私のは重いから話したいときにこっそり話すけどね。」
「すみません団長。後十分、後十分でギアソーサーツヴァイが終わりますから、それまで待っててください!!」
「はぁ…………じゃあとりあえず、顔の青い君にこれを渡しておこう。吐かれても困るしね。じゃあ、受け取ってね。『ドールナース見習い』。」
そう言ってガンさんはナースのような服を着た縫いぐるみを塔子ちゃんに差し出していた。それを抱いた塔子ちゃんの顔色が段々治ってきて、塔子ちゃんは完全に治ったのではないか?と思うほどだった。とりあえず、そのドールについての情報をSWで確認すると………。
・ドールナース見習い………☆2 ドールナースに込めるはずの魔力を半分以下にして長期的に持つようにした。その代わりに酔い止めぐらいの能力しか出せなくなった。
「こんなのがあるんだったらちゃんと言ってよぉぉぉぉぉぉ!!!」
「いや、適性とかがあるからね……私には塔子……だったっけ?塔子には主に攻撃面での才能がある。まぁ、今アンシェルテと一緒にギアソーサーツヴァイの様子を見ている彼女には防御の適性だね。」
……………そんなこんなで時間を潰していると、ようやくギアソーサーツヴァイの効果が終わったのかアンシュルテちゃんと花多美ちゃんが戻ってきた。
そして、開口一番、アンシュルテちゃんは過去について最初の言葉を言うのだった。
「私は昔、処刑されかけました。ここからずっと遠く離れた場所に私は魔女裁判にかけられて………その時に両親が自殺してしまい、私の目は死んでいたと思います。それで、あの時に処刑されていたら………私はもうこの世にはいませんでしたしね。」
………当たり前かもしれないけど、テンペストのメンバーって暗い過去持っている人が多い気がするのは気のせいなんだろうか?と思う僕だった。