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アルザール城、入城

「ここは元々先代のテンペスト団長のヨウラク・アルザールの持ち物だよ。そして、元々は一つの国の城だったんだぁ~。」

「まぁ、そのぐらいの歴史が無いとここまでの大きさは無いよな…………。」


一国の城だったならば、この豪華で大きい………正直に言ってジーブルフリーデ公国の城よりも大きかった。なんと言っても、ぱっと見で戦艦レベルの大きさだ。余程栄えていた国の城だったんだろう。


「そーいえば歴史があるんだよなぁ…………先代に聞いた話なんだけどさ。ジーブルフリーデ王国ができたのにも関係するんだよ。」

「それは気になるね………。」


クロがそう言うと、ガンさんはニコリと笑った。

「じゃあ簡単に説明しておこうかな。ジーブルフリーデ公国は元々は王国だった。でも今のように広い領土は無くって周りに同盟を結んでいた国がいくつかあったわけ。」

「その同盟国と合併して新しくジーブルフリーデが出来たのか?」

「そうなるね。で、なんで合併したかと言うと………その同盟国が魔王を名乗る者に襲われたんだよ。それも三人ぐらいね。」


同盟国運が悪いなぁ………………。

「これが、代表さんが産まれる三百年ほど前の話かな。その頃はまだ嫌々という感じでシェイヌケーテの副団長として一緒の騎士団にエペルシュバートとアルクレーガンの初代団長がいたわけ。尤も、ジーブルフリーデ王国が今の領土になった瞬間、二人でそれぞれ別の騎士団を起こしたんだよ。」

「そこまで詳しい史実が残ってるほど仲悪いんですかあの二人の家計は。」


ここまで仲が悪いとかってあり得ないだろ……と思ってしまう。いや、血は争えないし…………。

「テンペストは先代が騎士団に入ろうとしたときの事かなぁ。一応同盟国の王族の末裔だしなぁと思ってたけど、性格がだいぶ大雑把で、シェイヌケーテでもエペルシュバートでも受け入れたくないからって言われて、じゃあ自分で騎士団作るって言ってテンペストを作ったわけ。」

「そこまで自由奔放だったんですか…………。」


後輩が恐る恐る聞いていたが、ガンさんはそれを当たり前のように笑い飛ばしていた。

「まぁ、自由奔放とうのも当たり前かな。なんてったって、幽閉されてた魔王を騎士団に迎え入れたりとかだからね………ここは有数の多国籍騎士団だよ。出身がジーブルフリーデでは無いのが当たり前、で普通の人間でないのも当たり前。まぁ、普通のも何人かだけど色々と性格に問題があってこっちに送られたりとかもあったしね。」


…………まぁ、正直そのくらいどんと来いと思うために気にしていない。……正確には、気にしたら負けになるのだろう。正直普通を選んだとしてもこの職業(光のアイドルスター)だったら間違いなくテンペストに送られているだろう。

「それにしても、広いねぇ。私達もここに住むことになるのかな?」

「い、出雲様と一つ屋根の下に………………」

「ずいぶんとでかい屋根だなぁ、おい。」


後輩がクロと同じ屋根の下で暮らせるという事で顔を紅潮させていた。いや、後輩がクロのことを男だと思っていた事は知っているから気持ちは分からなくも無いが、ここに住むとなるとやはり個室なのだろうか?

「まぁ、そうなるね。部屋割りはまた変えようかな~。」

「あ、やっぱりここに住むの?」

「まぁ、任務があれば別の所に泊まったりするし、一応雑魚寝しかできない所だけど王都の方にも宿泊用の場所はあるしね。」

「男女は別だよな………?」

「うん。そうだよ。まぁテンペストの男は基本的に女にはがっついてこないからね。」


硬派な男や男好きが多いのだろうか?…………それとも、テンペストの女性が余程付き合いたくないというか恋人関係になりたくないような人種なのか………?

「た、楽しみですね………………」

「女の子でガールズトークとかもできるしねぇ~。あ、その前に人形師としての説明用にちょっと実演してみようかな。」

「別に今じゃなくても良い気がするんだが…………」


別に城の門の前でやらなくても良いのではないか?と思ってしまう。しかし、バベルや後輩は目を輝かせていた。とてもキラキラとしていて、とても中断して城の中に入ろうとは言い辛い状況になっており、俺とクロはそこで、見ている事にした。


「まず、人形師は人形を自分で作る必要がある。私のように、後でイメージするにしても、最初のイメージとしての作った物は必要なんだよ。二人には私の作った人形を渡しているけど、人形と名の付くものならゴーレムでも彫刻のように作っても変わらないよ。」

そう言いながら、ガンさんは手の中に魔法陣を作り、人形を召喚していた。


「偵察拳・ウィムル!!」

そう言うと、出てきたのは手のひらサイズで双眼鏡を肩に掛けた人形だった。どこかの妖精を思わせるような。フワフワとした仕上がりだった。


「じゃあ、演習場までお願いね。さぁ行け!!」

トテトテとその人形は俺達が来た方向に向かって歩いていった。しかし、偵察と名の付くのならば、なにかしらの要素はあるのだろう。


「人形には色々と効果を付けられるけど、これは魔法陣から出した人形限定だからね。オリジナルの場合は威力が強いけど。それに、想いも籠もるから、とんでもない物も出来ちゃう可能性もあるしね。」

「………オリジナルは完全に自分だけで操作するんでしょうか?」

「その通り。そのために私達人形師には指先から魔力で作られた細い糸がでるようになってる。まぁ、それが枷となって行動範囲は狭いんだけどね。」

そう聞いていると、ガンさんはまた魔法陣をだした。今度は無詠唱で、なにが出たかと思えばSWみたいなスクリーンだった。


「じゃあ、そろそろ中に入ろうか。この事をユンクが聞きつけたら大変なことになるし。」

そう言ってガンさんが城の扉を開けた。



そこには、荒縄で亀甲縛りになって吊された、眼鏡をかけている美人がいた。息をはぁはぁさせているので興奮しているのだろう。俺はそっとクロと後輩の目を塞いだ。バベルの方は間に合わずに卒倒している所が見えたが仕方ない。儚い犠牲となったのだ、バベルは。

ちなみにガンさんは慣れているのか冷静に行動していた。しかし、彼女を冷たい目で見ているには変わりなかった。


 

「もぉぉぉぉぉ~、いつまで私を縛ったままそこでずっと話しているの?と思ってたらもう終わっちゃいました?なんでもうちょっと放置してくれなかったんですか?もう少し孤独で荒縄の痛みに快感を覚えながらドン引きの目を待っていたかったんですが。」


テンペストで出会った最初の団員は………なんか、その………変態でした。かなりのドMでした。


「じゃ、じゃあ自己紹介したいので団長、縄をさらに縛り付けてくださささささささ!!!なんで荒縄を切り落とすんですか?もうちょっとチクチクを楽しみたかったですよぉ!!」


…………男女別に別れていてよかったぁ…………。と、心から感謝した。


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